毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「大手企業で働く安心感」という話題について紹介します。
「介護スタッフの幸せ」も理念に掲げた大手企業
株価が上昇を続け、見かけ上の景気は良くなっているものの、それをまったく実感できないのがここ数年の日本社会。
働く場所を探す際には、なるべく安定していそうな大手企業であることを条件に考える人もいるだろう。
大手企業であることの安心感と、小規模企業ならではのアットホーム感を天秤にかけるのはなかなか難しいが、千葉県の介護付き有料老人ホームで働くフミコさんは、心の底から「大手企業で働いていて良かった」と実感した“事件”があったそうだ。
フミコさんは三世代世帯で生まれ、祖母、両親とともに暮らしてきた。高校時代に祖母の介護が必要になったことで、介護業界に関心を抱いたという。
介護の専門学校に進み、卒業後は介護施設に就職して介護士として働き始めたフミコさん。
就職先は介護業界でも一二を争う大手企業で、従業員教育は徹底しており、フミコさんもバリバリとスキルを磨いた。
フミコさんが語る。
「私が就職した企業は、『利用者だけでなく、施設で働く従業員の幸せも追求する』という企業理念がはっきりしていて、厳しいながらもやりがいはありました。
研修制度や資格取得のサポートも充実。離職率も同業他社よりかなり低いようです」
しかし、そんなフミコさんに試練が訪れる。
就職後数年目にフミコさんは妊娠。彼女が結婚することなく子供を産むと、主に女性の先輩から「どうして結婚しないの?」「働きながら子育てするの?」「相手はどんな男なの?」といった不躾な質問が浴びせられたのだ。
人間関係が原因で退職を決意するも、意外な結果に
先輩たちからの質問攻撃に気が滅入り、職場に行くのが辛くなったフミコさんは、上司に退職したいと相談することに。
「完全に会社を辞めるつもりだったのですが、もう1度他の会社で色々なことを一から覚えることになると考えると、戸惑いもありました。やはり会社が変われば介護のやり方や方針も変わるでしょうから。
それでも退職することを決めて上司に伝えると、退職理由を聞かれたので正直に答えました」
フミコさんから話を聞いた上司は、「ちょっと待ってね」と言ってどこかに電話をかけ、電話が終わると「じゃあ○○で働く?」とフミコさんに声をかけた。
上司が電話をかけた先は、1駅隣りにある、同じグループの別の施設だったのだ。
「私が、そんなに簡単に次の仕事場が決まったことに驚いていると、その上司はこう言ってくれたのです。
『そんなに簡単に君に辞めてもらっては困る。君を必要としている人は、世の中にたくさんいるんだ』
正直、自分のワガママで辞めるようなものだと思っていたので、『お世話になりました』と言うつもりが、上司からとても親切にしてもらえて感激しました」
こうして、フミコさんは電車で1駅隣りの施設に移り、そこで楽しく働いている。こういった“芸当”は、大手企業だからこそできること。
フミコさんは、「今度こそ、ここに骨を埋めたい」と話しているが、「会社が自分を必要としてくれる」「施設の異動を認めてくれる」という安心感は、心の支えになっているそうだ。
たくさんの人が働いている大手企業は、その分、自分のことを理解してくれる人もたくさんいるということ。
小規模企業の良さとは一概に比較はできないが、こんなところにも大手企業のメリットはありそうだ。