上司を尊敬できず、組織の都合で副主任から平社員になってしまったN・Tさん。自らの介護に対する思いも否定されたように感じ、何のために働いているのかわからなくなり、結局退職しました。そして憧れの地、オーストラリアへ。とはいえ、単に観光をするだけでなく、現地のナーシングホームでボランティアとして働きました。そこで見てきたことが、後の介護職としての生き方にも影響を与えたようです。
会社を退職したあとどう行動し、何を感じるか、その大切さを感じさせるエピソードです。
*N・Tさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
N・Tさん(30歳)の転職経験
介護の専門学校を卒業
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東京の特別養護老人ホームに入社し6年間勤務
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退職して半年間、オーストラリアへ。現地でボランティアの介護スタッフを経験
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帰国後、新たな気持ちで特養のケアマネ兼相談員になる
ナーシングホームで働いて感じたことは
オーストラリアに行くにあたっては、ワーキングホリデーを使って現地で1年間暮らしたことがある彼から、いろいろアドバイスをもらいました。
「せっかく介護職として6年も働いてきたんだし、日本に帰ってきたら、また介護職で復帰するんでしょ? それなら、現地でもホームを見学したり、ボランティアで働いたりしたらどう?」と勧められました。
たしかに、20代も後半になっているのに、わざわざ職場を辞めて観光目的で海外に行く、というのでは得るものが少ない……。そこで、職場体験ができる滞在型の旅行を斡旋してくれる業者を探して、ナーシングホームのボランティアをすることに決めました。
現地のナーシングホームとは、日本で言えば特別養護老人ホームのような位置づけです。でも、私が訪れたところは、歩ける人や、車椅子を使って自分で移動できる人がほとんどで、日本の特養よりも、活発な印象でした。自立棟と介護棟があり、認知症などの症状や、身体的な状況によって、どちらにするかを決定します。私は介護棟で、車椅子を押して利用者さんと一緒にお散歩をしたり、部屋を整えたりするボランティアスタッフとして働きました。
そこで見たのは、辞めた特養とは全く違う光景でした。とにかく、開放感があるんです。広々としたリビングでは、みなさん思い思いに過ごしています。全員がまとまって何かをするのではなくて、ひとりひとりのペースに合わせて活動をサポートしているのです。
また、個室のベッドには柵がありません。車椅子に乗るような下肢の方でも、同様です。就寝中にベッドから落ちたりしないのかしら、と心配になりました。
けれど、ホームではこれまで大きなトラブルはない、とのこと。見回りや目配りのよさもありますし、利用者さんのほうも自立しているのでしょう。「もっとうまく世話をしてほしい」というより、「自分でできるところまではやるから、できないところをサポートして」という感じでした。
また、利用者さんの多くは認知症ですが、とてもサービス精神の旺盛な明るい方ばかりなのも、印象的でした。英語が苦手な私は、カタコトの英語もおぼつかないのに、私の言いたいことを一生懸命に理解してくれようとするのです。こちらも何度もお話しして、十分に理解してもらうことができました。
「どこから来たの?」「名前はなんて言うの?」日常会話でもたくさん話しかけていただいて、いいコミュニケーションが取れました。
3ヶ月延長をしてオーストラリアを満喫
ナーシングホームには、ビザの関係で3ヶ月しかいられませんでしたが、もう少しオーストラリアでさまざまなことを体感したいと思うようになりました。
そのため、その後の3ヶ月間は、観光ビザを使って、バックパッカーとして旅をしました。
東京の特養で、不満を持ちながらずっと働いていたら、自分はもっと被害者意識を強く持っていたかもしれません。しかし、この半年間で、高齢者の方のあり方、接し方について思うところがいろいろあり、新たな気持ちで働けるような気がしてきました。
この半年間の休息は、私にとって、とても意義があったと思います。
最終回は、新たな気持ちで働こうと決心したN・Tさんの様子をお伝えします。
*N・Tさんの「私が転職した理由」…
1回目、
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