高齢者の「自立支援」を促そうと、希望に満ちて介護業界で働き始めたのに、現場の意欲のなさに失望するTさん。介護福祉士、ケアマネジャーとキャリアは積み上げたものの、虚しさは拭いきれません。そんなとき、実家の建物を利用して、別の事業を立ち上げてみようかという思いが頭をもたげます。今回は、まったく違う転職をしようかと迷うTさんのエピソードをお伝えします。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Sさん(36歳)の転職経験
大学卒業後、就職せずに2年間バイト生活
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技術者派遣会社に就職、プログラマーとなり、のちにシステムエンジニアへ
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事業縮小のため本社に戻り、営業職に
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ハローワークでホームヘルパー2級を取得
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特別養護老人ホームに就職。6年間勤務する間に介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得
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2015年春より系列の居宅介護支援事業所に異動し、ケアマネとして勤務
仕事に不満を持ち、趣味に走る理由は
職場への失望感は、介護職そのものへの失望感に重なりました。職場で過ごす時間が増えれば増えるほど、職場への不満がさらに大きくなりそうで…将来への不安も出てきました。
そんな中で、一時期は趣味に走りました。もともと料理が好きで、いわゆる男の料理といった感じで、材料にも料理法にもこだわっていました。パスタやドレッシングを自家製で作り、友人を家に呼んでふるまい、ちょっとしたパーティーをするのが楽しみでした。食後のコーヒーにもこだわり、いい豆をそろえて淹れ方を学び、友人に「すごいね、カフェみたいだ」と言われることを誇りにしていました。
妻も、そんな僕に対して、「まあ、いい息抜きよね。あまり煮詰まらないほうがいいものね」と寛容でした。
実は、料理やコーヒーにこだわるのは、別の意味もありました。実家の1階は叔母が経営する文具店なのですが、叔母も74歳になり、体力が衰え、計算も少しずつ危なくなってきました。最近は少子化のあおりで文具もあまり売れず、そろそろたたんだほうがいいのではないか、という話も出ています。
そのスペースを使って、カフェをやったらどうか、とひそかに思っていたのです。
ただコーヒーを飲むだけではなく、地域の人たちが集い、介護や医療の地域資源を語り合ったり、情報を集めたりするような、そんなコミュニティカフェができたらいいな、と。叔母も、僕がついていれば、ペースを落としながらも店で働き続けることができ、寂しくないのではないかと思いました。それも、高齢者支援の一つの形、だと思うのです。
今の職場でいつまでも不満を持ちながら働くのではなく、自分が納得できる仕事がしたい。いつの間にか、職場の人たちと、どう折り合いを付けたら楽しく仕事ができるのかということばかりに、心を砕く毎日。
虚しさが増すだけのような気がしました。
また、介護職といっても、ひとつの法人で特養に勤めただけの経験です。勤務経験は6年になり、その施設ではベテラン扱いでしたが、その特養のことしか知らない。もっと幅広く介護に関わりたい、その人らしく暮らしていく支援を知るには、在宅や地域からの介護に触れたいという思いもつのりました。
まだまだ施設でやれることはあるのだから、都合の良い言い訳をして逃げたいだけなのではないか。そんな思いもありました。
違う働き方があるのではないか、と思い始めて
でも、結果的には、カフェの経営は今のところ、検討のままストップしています。いろいろ調べてみると、カフェだけの収入で大人2人と将来生まれるかもしれない子どもが食べていくのは、大変のよう。夜の営業をしてお酒を出さないともうからないよ、などと言われると、自分がやりたいカフェとは違ってしまい、ここでもまた「お金のために我慢するのか」と、虚しさが広がりそうです。
ひとりの大人として納得できる収入を得ながら、納得のいく仕事がしたい。その思いが強くなってきたとき、カフェもいったんあきらめるけれど、今の職場にしがみつくのもやめよう、と決心しました。
いつまでも自分を偽るわけにはいかない。とにもかくにも、「高齢者に自立支援を促す」という目的にもっと近い職場環境で働くべきだと強く思ったのです。また、一つのホームでの介護しか経験していない自分に、別の経験をさせてみたいという気持ちもありました。
最終回は、居宅介護支援事業所にケアマネとして転職するTさんをお伝えします。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…
1回目、
2回目、3回目、
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