◆小規模多機能型居宅介護事業所(パート/介護職・介護福祉士) → 介護付き有料老人ホーム(パート→正社員/介護職・介護福祉士)
M・Uさん(女性・27歳)
●小規模多機能型居宅介護事業所(勤務期間:3年/月収手取り約16万円)
●介護付き有料老人ホーム(勤務期間:2年/月収手取り約19万円/介護福祉士手当あり・ボーナス約30万円×年2回)
介護業界でのその他経験:グループホーム(正社員/介護職/3年6カ月)
保有資格:介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)
家族構成:一人暮らし
*M・Uさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目、2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【転職前後の職場の違い】小多機での介護は利用者さんの生活の中に入る
介護職として鍛えられた訪問介護
グループホームでは、利用者さんはホーム内にずっといらっしゃるので、見守りなどは未経験でもなんとかできました。
しかし、小規模多機能型居宅介護の利用者さんは、基本的にご自宅にいらっしゃいます。ご家族がいない時間帯は、転倒などのリスクが大きくなります。
最初のうちはどうやって見守ったらいいのか、ご家族とご本人の考えの違いはどうしたらいいのかなど、これまで遭遇したことのない問題に直面し、どうしていいかわからなくなることが多かったです。
でも、利用者さんの生活そのものを見られたし、私たちヘルパーを待っていてくれる面もあり、鍛えられたし、仕事の手ごたえも感じました。
働きやすく、たくさんの学びがあった介護現場
管理者の方は介護老人保健施設(老健)の出身で、在宅介護についてはあまり詳しくはないようでした。
ただ、「みんなで知恵を出し合っていこう」というざっくばらんな方だったので、現場の意見を聞いてくれて、とても働きやすかったです。
私たち若い職員の意見にも、真摯に耳を傾けてくれました。
地域資源をできる限り活用しよう、という話にもなりましたが、独居のお年寄りだとご近所づきあいもなかなか難しく、まだ経験の浅い私には難しかったですね。
今思えば、福祉用具をもっと活用できていれば、転倒も防げたのに……と思います。
手すりをつけ、家の中を伝い歩きしてもらえれば、見守りがなくてもトイレまで安全に行けたかと思うと、知識不足が悔やまれます。
でも、小規模多機能型居宅介護で働く中で、利用者さんの生活に寄り添うということを深く考える経験がようやくできたので、私にとってはとてもいい学びになりました。
パートとして勤務。自分の体調のために、夜勤は基本的にしない
グループホームを辞めたきっかけが体を壊したことだったので、小規模多機能型居宅介護では基本的に夜勤はしない約束で勤務し始めました。どうしても人がいないときだけ、ごくたまに夜勤に入っていました。
週1日のパート社員として勤務を始めたので、週5日フルタイムで働くようになってからもずっと時給での給与支払いでした。
当時の時給は1030円。ひと月にもらうのは、手取りで16万円くらいでしょうか。
グループホームでは残業代も含めると30万円もらっていた時期もあり、貯金もできていましたが、一人暮らしで手取り16万円は少し生活がきつくなります。
【2つ目の職場の危機】会社の資金不足が原因で、人間関係もぎくしゃく
当時、うちの会社では小規模多機能型居宅介護のほかに事業をやっていなかったので、この事業所だけで収益を上げなくてはいけませんでした。
しかも、小規模多機能型居宅介護はいくら利用者さんのために動いても、月々同じ報酬なので、そうした意味でも経営はきつくなるのは目に見えています。
小規模多機能型居宅介護の定員は29名ですが、18名の登録がないと、経営は厳しいと言われています。
でも、うちの事業所の利用者さんは18名を超えたことがあまりありませんでした。
「これで本当に大丈夫なのかな……」と、だんだん心配になってきました。
最初はよかったのですが、2年目くらいから、なんとなく、事業所の中の雰囲気が変わってきました。
上層部の考えがまとまらなくなり、リーダー格の人が辞める……。
いつの間にか、以前働いていたグループホームが閉鎖されるときと似たような雰囲気になっていました。
すごくたくさんのことを学ばせてもらい、ずっといたい職場だったのですが、生活が成り立たないことの悩みが大きかった。
もう少しがんばろう、とは思っていたのですが、
経理を担当していた先輩にも、「Mさんは若いんだから、もっとちゃんとした大きな会社で働いたほうがいいよ」と言われました。
資金繰りがつかなくなってくると、リーダーも優しさゆえに、「ここではない、ほかの事業所で働いたほうがいいよ。大手の介護施設を受けてみたら」と、アドバイスをしてくれるほどになって……。
最初の職場で感じた苦しさ、辛さはもう感じたくない、大好きな先輩たちが苦しむところや、会社のいやな部分を見たくない、もう辞めよう……。
そう思い始めた頃に、ずっと会っていなかった高校時代の同級生から、介護付き有料老人ホームで働かないか、と連絡がありました。
母体になっていたのは、誰でも知っている大手企業です。
「助かった」という気持ちで、転職することにしました。
【2度目の転職】大手企業が運営する介護付き有料老人ホームへ転職!
このときにはすでに介護職としてのキャリアは6年以上たっていましたが、いち介護職として入職しました。
リーダーになりたいとか、そういう野望もなかったですね。
有料老人ホームははじめてでしたし、何もわからないのだから、と言う気持ちも強かったです。
これまでは、入居施設といってもグループホームで、利用者さんは地域生活を営んでいましたし、小規模多機能型居宅介護は家での生活が主体です。
介護付き有料老人ホームは、ホームでの生活がすべてで、ここが利用者さんにとっての唯一の「家」。
しかも、うちの老人ホームは比較的高級な施設なので、利用者さんの「家」としてある程度の豊かさを感じさせなくてはいけません。
ここの職員にふさわしい人間になることが、仕事の上での第一優先だと思っていました。
身に付けることがたくさんあり、最初のうちはどんどん時間が過ぎていきました
【実際に転職して成功?失敗?】会社の規模が大きく信頼できる
老人ホームを運営する会社が大きいことで安心して働ける
転職してよかったかどうか、と聞かれれば、「よかった」と答えられます。
なにしろその前の職場では時給で働いていましたし、給料は安く支払いも遅れがちだったのに、多いときは1日12時間働くこともありました。
教えていただくことが多かったけれど、また体力的にきつくなってきて……。
それに比べると、今の職場は、大手企業が運営するだけあって、資産も豊富です。
私たちの給料が高いのかというとそうでもないかもしれませんが、以前のところよりはずっときちんとしています。
単一の事業所で満足のいく経営はなかなか難しい
小規模多機能型居宅介護の事業所では、ずっと働き続けていても不安が募るばかりだったと思います。
この業界、単一の事業所でうまくいっているところはなかなか少ないですね。
志は高かったけれど、小規模多機能型居宅介護の単一事業所、ということが、仕組みとして難しいのだと思いました。
ただ、今いる職場がすべてよいかというとそんなことはなくて、組織の問題もいろいろ抱えています。
どこに行っても悩みはあるものだと、しみじみ思います。
次回は、有料老人ホームでの現在の仕事内容について、さらに詳しく語っていただきます。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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