30代後半で建設業界から介護職に転職したTさん。
キャリアを積むこと、勉強を続けること、多くの人と協力し合える環境…。「転職して良かった」「夢を実現する楽しみがある」と語るTさんの転職体験談の最終回です。
◆病院(介護職)・デイサービス(介護職)→訪問介護事業所(サービス提供責任者)
T・Mさん(男性・45歳)
●病院(介護職)(勤務期間:2年/月収約12万円)
●デイサービス(介護職)(勤務期間:6年/月収約15万円)
●訪問介護事業所(サービス提供責任者)(勤務期間:2年/月収約24万円+ボーナス3カ月分程度)
保有資格:介護福祉士、介護支援専門員、認定介護支援専門員
家族構成:本人、妻、長男7歳、長女4歳
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
第2回:
病院での仕事が辛くてデイサービスに異動。その人らしさを活かせる楽しい介護~転職体験Tさん2
第3回:
高齢でも認知症でも「普通に暮らす」を支えたい!訪問介護のやりがい~転職体験Tさん3
【今の仕事の課題】訪問介護のやりがいと難しさ
本人の思いも家族の思いも汲み取って、自立した生活を支援する
現在は、訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)として、また小規模多機能型居宅介護や障害者デイサービスの送迎やヘルパーとして勤務しています。
利用者さんの生活に密接に関わる在宅の訪問の仕事には、やりがいを感じていますし、同時に難しいと思うこともある。
在宅での暮らしは、ご家族との関係性やご家族の考えの影響を受けやすく、「自分らしく」が必ずしも100%生かされないこともあります。
そんなときに、どう折り合いをつけるのか、悩むこともありますが、ご家族のことも、ご本人のことも否定しないで、コミュニケーションをよく取りながら支援をしたいと思っています。
自宅ではひとつひとつ、「ここに置いていいですか?」などと聞き、納得していただくことも大事にしようと思っています。
「ここは自分の城なんだ」という思いを利用者さんが持ち、自宅で暮らすことに誇りを持てるように支援することが重要です。
若年性認知症の方のデイサービスをいつか作りたい
利用者さんに「ふつうの暮らし」をしていただくために、若年性認知症の方の就労を支援するデイサービスを作りたいというのが、転職のきっかけでした。
実際に就労に結びつけるには、行政や企業との連携など、準備がたくさん必要ですが、ひとつひとつ積み重ねて実現していきたいと考えています。
日常の業務に流されるのではなく、「こうありたい」という介護をいつも確かめ、目指していくことが重要だと思っています。
そのためにも、サービス提供責任者(サ責)としてのスキルも上げて、法人の経営の成長も実現していきたいと思っています。
現在、障害児の送迎や入浴支援は早朝と夕方に集中しています。
みんなが同じ時間に支援を望むのですが、そのニーズに応えられるキャパシティがないことにも、課題を感じています。
時間を有効に使えるような支援ができればいいですが、なかなか難しいですね。
よい知恵がないかと模索中です。
考えて熟考して実践する。介護の仕事はその繰り返しだと思っています。
【今後の夢】介護付き民泊や観光で、旅行を楽しんで欲しい
認知症の方、支援が必要な方は、どうしても家とデイなどの往復になってしまいます。
でも、ときには旅してみたらどうかと思うのです。
今、私が暮らしている地域は観光地として有名で、感染症の心配なときは難しいですが、落ち着いたら、この地域へ日本中から遊びに来てほしい。
そんな時に、『介護付き』の民泊や観光ツアーがあればおもしろいと思うんです。
空港で出迎え、ホテルか民泊で介護福祉士の支援つきで泊まり、青い海で遊んでもらう。
利用者さんにとっては、良い思い出になると思うのです。
介護職の支援が付いていれば、家族もその間、ゆっくりできます。
これらは介護保険外のサービスになりますが、旅行に行くと考えてもらえたらいいのではないでしょうか。
訪問介護のノウハウがある我々だからこそ、叶えてあげられるプランだと思うんです。
日本中の介護が必要な方々とつながって、楽しく過ごすお手伝いをしたいと思っています。
【介護職として】成長のために大切にしている3つのこと
介護関連の書籍や講演会などで勉強をすること
介護の仕事は人によって解釈がいろいろあるので、正解を出すのが難しいと思います。
そんな中で、どこに向かっていったらいいのか悩むこともあると思いますが、まずは自分なりに勉強をすることが大切だと思っています。
介護にはさまざまな領域がありますし、「自立支援」が目的といっても、そのやりかたもさまざまです。
自分は、実際に運営している方の講演に行って話を聴いたり、そういう方の本を読んだりして、その実践と自分のやっていることを照らし合わせるなどして、検証するところから始めました。
さまざまな介護現場で経験の幅を広げること
また、現場での経験も重要です。
病院、デイサービスでの経験だけでは介護を俯瞰して考えることができないと思ったので、訪問介護や小規模多機能型居宅介護、そして障害者の方の支援も行っている法人に転職しました。
転職したことで、自分の視野が広がり、また理念も深まっていると思います。
また、自分は国家資格、民間資格も含めてさまざまな資格を取得しました。
認知症に関するオレンジリングの講師をはじめ、さまざまな講師の活動をさせてもらっていますが、人に教えるためには自分がきちんと学び、伝える技術が必要です。
これも、よい経験になっています。
同じ介護福祉士の仲間と刺激し合える関係を作ること
日々、色々なことを学んでいますが、自分が考えていることが本当に利用者さんにとって有益なのだろうかと迷うこともしばしばあります。
また、ひとりではその思考の実現が難しいこともあります。
そんなときには、仲間がいることが強い支えになります。
自分は地域の介護福祉士の仲間と有志の会を作り、介護職同士のつながりを持つと同時に、医師会ともつながりを持ち、介護の進化につなげていきたいと思っています。
他県で先進的な介護を行っている法人の経営者の方や、在宅診療医の方をお呼びして講演を開催するだけでなく、「遊びましょう」と一緒に集うことの楽しさも共有させてもらっています。
そんな遊びの中で、その方々の介護のエッセンスを授けていただけることも、ありがたいことだと思っています。
【転職への思い】やりたいことを実現するために、転職は有効!
介護の仕事、といっても在宅も施設もさまざまな種類があり、また相談業務や計画作成など、その仕事はとても幅広いです。
また、同じ施設形態でも、会社や事業所によって雰囲気も違えば理念も違うので、自分に合っている場所、自分に向いている仕事を選ぶことが大事だと思います。
合わないな、と思えば、転職して良いと思いますし、仲間といっしょに力を発揮できる場を作って行くべきだと思っています。
自分が幸せにならないと、きちんとしたケアはできません。
自分の環境を整えてケアに入ることが重要。
そして、職場やグループなどに腹を割って話せる人をつくることもまた、大切だと思っています。
【介護の仕事への期待】若い世代にこの魅力を伝えていきたい
介護職は、2040年の日本のリーダーになるべき職業だと思っています。
医療、福祉、介護はフラットであるべきだし、それが実現できるとき、介護は最高にすばらしい仕事になります。
その環境を整えて、若い人たちに、ぜひこの業界に来てほしい。
しっかりキャリアを積み、勉強して資格をとれば、その分給料も上がっていく。
介護職同士、つながる場も持てますし、職場のあれこれをひとりで悩む必要もない。
事業所の垣根を越えた付き合いをすることが、楽しくこの仕事をするポイントだと思います。
自分の所属するグループでは、介護福祉士、看護師、歯科医師、セラピスト、みんなごちゃまぜでケアについて同じ目線で語っています。
立場の違う専門職が協力し合える関係は本当に楽しい。
この魅力を、地元のラジオ局を通じてアピールし、発信もしています。
そうした仕組み作りをすることも楽しいですね。
どんな仕事をするにも迷いはあるし、エネルギーは必要です。
けれど、エネルギーを注入した分、やりがいもある。
介護の仕事に就いて本当によかった。そう思います。
だから、もっと多くの人たちに介護の世界に来てほしい。
その課題を解決するのが、自分の目下の目標でもあります。
仲間たちと力を合わせ、楽しく実現していきたいと思っています。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
第2回:
病院での仕事が辛くてデイサービスに異動。その人らしさを活かせる楽しい介護~転職体験Tさん2
第3回:
高齢でも認知症でも「普通に暮らす」を支えたい!訪問介護のやりがい~転職体験Tさん3
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