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2014年07月09日

手の力を活かせ!9 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

●大きなもの、長さのあるものをもつときは、「全体をとらえながら」手の力を活かしてみてください。それだけでカラダはガラリと変わります!

前回に引き続きモデル役をお願いしたWakaiさんは、東日本大震災後のボランティアも経験している。だれかの役に立てることが喜びという人には「介護の仕事は向いていると思います」。現在の仕事場であるNPO法人「ケアグループあい•あい」(千葉県白井市)での充実した日々がうかがえる生き生きとした表情で、今回の「試してみたい」稽古にも取り組んでいただきました
前回に引き続きモデル役をお願いしたWakaiさんは、東日本大震災後のボランティアも経験している。だれかの役に立てることが喜びという人には「介護の仕事は向いていると思います」。現在の仕事場であるNPO法人「ケアグループあい•あい」(千葉県白井市)での充実した日々がうかがえる生き生きとした表情で、今回の「試してみたい」稽古にも取り組んでいただきました

甲野陽紀(以下、Hal)_こんにちは、身体術研究者の甲野陽紀です。今日は、手の力を実践で活かすときにぜひ覚えておきたい日々是的な介護術を試してみたいと思います。前回に引き続き協力いただくのは、介護現場で働くWakaiさん。現場では介護する相手を抱き上げたり、支えたり、あるいは大きなものをもったりしますよね?

Wakai_はい、手で抱える、支える、もつ、という場面はたくさんありますね。

Hal_そんな場面で、とくに意識をしたり、注意をしていることはなにかありますか?

Wakai_うーん、どうでしょう……相手が人の場合は、強くカラダに触れ過ぎて痛くないかとか、苦しくないかな、と気をつけていますが。ものをもつ場合には、一度腰を痛めたことがあるので、腰に負担がかからないようなもち方をしようとは心がけています。ただ、具体的に動作のここに注意している、ということはないかもしれませんね。

Hal_やはりいろいろ気は使いますよね。場面はさまざまだと思いますが、共通していえることは、Wakaiさん自身のカラダに安定感があって、不安なく動けているときは、お互いに負担が少ないということですね。

Wakai_それはわかります。こちらの不安は相手の方にもつたわりますし、自分が腰をケガしたときは、動く前にちょっと不安を感じたのにそのままやってしまったんですよ。

Hal_では今後のために、ということで試してみましょうか。ここにウオーキング用のポールを用意してきましたので、これを片手でちょっともってみてください。最初はいつものもち方で結構です。ポールを持ったWakaiさんの手をわたしが上から押さえ込みますから、がんばって抵抗してみてください。

――ポールを片手に立つWakaiさん。とてもしっかりしているように見えるのですが……陽紀先生が上からその腕をおさえると意外に簡単にグラリと……――

Wakai_……これは、腕の力ではなかなか持ちこたえられないですね。

Hal_腕で持ちこたえようとすると、けっこうたいへんですよね。では、次は手にもったこのポールの「全体をとらえながら」立ってみてください。

Wakai_「全体をとらえる」というのは……?

Hal_手が触れている部分だけではなくて、ポールの全体、上端から下端までを含めて、自分がもっているなあという感覚を瞬間的に感じること、といったらどうでしょうか。方法としては、ポールの上端と下端を目でさっと追ってみると、長さのあるものと自分とのつながりが感じられるようになるので、自然に「全体をとらえる」感覚ができるようです。ぱっとポールの両端を見たときに、自分の手の内にポール全体がはいっているような感じが得られるかどうか、がポイントです。

――さっそく「全体をとらえながらもつ」の稽古へ。「なんとなくわかったような気がします」といったWakaiさんのカラダがその言葉通り、一変!――

ウオーキングポールをもったときのカラダの安定感は?_いつものように編 手で人を抱える、支える、あるいは手に何かをもつとき、注意はどうしても手が触れたところに向かいがち(B_1)。そのため、カラダ全体でもつ感覚ではなく、腕や手の力に頼る感覚が生まれ、カラダ全体の安定感は失われてしまう(B_2〜B_4)。「大きなものや長いものをもつときは、とくにそのことが顕著にあらわれるのです」と陽紀先生
ウオーキングポールをもったときのカラダの安定感は?_いつものように編
手で人を抱える、支える、あるいは手に何かをもつとき、注意はどうしても手が触れたところに向かいがち(B_1)。そのため、カラダ全体でもつ感覚ではなく、腕や手の力に頼る感覚が生まれ、カラダ全体の安定感は失われてしまう(B_2〜B_4)。「大きなものや長いものをもつときは、とくにそのことが顕著にあらわれるのです」と陽紀先生

ウオーキングポールをもったときのカラダの安定感は?_全体をとらえたとき編 「いつものように編」の反省を踏まえて、今度は「ポール全体をとらえて」から、陽紀先生の力を受けてみると――Wakaiさん、ガラリ一変! 写真B_2〜B_4とC_2〜C_4を見比べると、カラダのしっかり感の違いがよくわかる。「介助するときも、相手の方のカラダ全体をとらえることを心がけると、楽にできるようになります。同時に、介助を受けている方も、これは気持ちがいいなあと感じてくれる動き方になると思いますよ」と陽紀先生
ウオーキングポールをもったときのカラダの安定感は?_全体をとらえたとき編
「いつものように編」の反省を踏まえて、今度は「ポール全体をとらえて」から、陽紀先生の力を受けてみると――Wakaiさん、ガラリ一変! 写真B_2〜B_4とC_2〜C_4を見比べると、カラダのしっかり感の違いがよくわかる。「介助するときも、相手の方のカラダ全体をとらえることを心がけると、楽にできるようになります。同時に、介助を受けている方も、これは気持ちがいいなあと感じてくれる動き方になると思いますよ」と陽紀先生

Wakai_うわっ! これはスゴいですね(笑) まったくぐらつかなくなりました。

Hal_これなら、介助をするときや、大きなものや長いものなど、手の力を活かしたい場面で役に立つのではないでしょうか?

Wakai_そうですね。介助がうまくいかないようなときでも、この「全体をとらえる」を思い出せば、そこで動作をリセットできるかもしれませんね。ぜひ仕事の中でも心がけてみたいと思います。それにしても、ほんとにちょっとしたことでカラダって変わるんですね。改めてビックリしました。

Hal_介助をするときや、大きなものや長いものをもつときに、ちょっと思い出してもらうといいですね。「全体をとらえる」ことができた瞬間に、カラダは内側でしっかりとつながって安定してきますから――
ということで、次回は、これまで試してきた「手の力を活かせ」のまとめです!




◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
プロフィール
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html

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