介護のプロと一緒に日々是介護術班も研究会モードへ。撮影場所の都合から「畳に寝ている方を想定」してのトライアルでしたが、どんな状況にも共通する“日々是的感覚”も見えてきたようです……
<協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏/文・構成 佐藤大成>
前回のその1(https://www.kaigo-kyuujin.com/magazine/archives/2382)の流れを受け、陽紀さんが実際に畳に寝ながら、寄國さんに姿勢を変えたり起こしたりという介助動作をしてもらいました。
寄國 体験をされて、いかがでした?
甲野 畳の上での介助というのは慣れなくてやりにくいところもあったかと思いますが、さすが、介助されているこちらには負担の少ない動き方だったと思います。ただ、こちらの重さを感じたときにやはり力がぐっと入る感じはありましたね?
寄國 そうですね、しっかり持たないと重さを支えられないので……
甲野 前に<持つ>動作を考えたときに(https://www.kaigo-kyuujin.com/magazine/archives/2314)、手のひらをやわらかく使うとカラダのつながり感が増しますよ、とお話したのですが、人のカラダのように、かなり重みのあるものを<持つ>場合には、手のひらをやわらかく使いながらも、その重さに見合うぐらいの強さで持つ感覚にするといいですね。手のひらを固めない程度に。
寄國 そうすると動作のはじめから終わりまで同じぐらいの力の入れ方になりますね。
甲野 そうなんです。介助をされる方の気持ちになってみると、カラダに触れられたときの感じにやわらかさがあって、なおかつ、かかる力が変わらないということは、安心感につながると思うんですよね。安心感があるとカラダもリラックスするので介助のしやすさにもつながります。人間関係でも、会うたびに話すことが変わる人のことは信用できないように、カラダも力の入れ方がいろいろに変わる人のことは信用できないと感じて、ぎゅっと力が入ったりするんですよ。
寄國 ええ、安心感をもってもらうというのはたしかに大事なことだと思います。わたしの場合は、介助をするときに必ず声掛けをするようにしています。「はい、これから起しますよ」とか「はい、いきますよ、イチ、ニイ、サン」というような感じで。そうすると、相手の方も気持ちの準備が出来ますし、協力的に動いてくれるようになりますね。
甲野 声掛けをするのはとてもいいことですね。介護術のひとつといってもいいぐらいだと思います。
寄國 では、今度は陽紀先生のやり方をわたしが体験してみたいと思います。
甲野 わかりました!
ということで、日々是流を寄國さんが体験してみることに。
次回へ続きます!
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同 行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点か らの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生ま れていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体 講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に 講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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