こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。あるやり方がうまくいかないとき、考え方や見方を変えてみる------これはさまざまな状況で対応を迫られる、介護の現場ではしばしば直面するテーマではないでしょうか。「そのとき、どのように変えたらいいのか? 突破口の見つけ方は?」という難題に、前回タネエディターもぶつかったようですが……
<協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏/文・構成 佐藤大成>
(※稽古を繰り返すうちに、タネエディター、何かを感じたようで、目つきがアヤしい……)
タ 陽紀先生、ぼくにも見えましたよ。
陽 見えました?
タ はい、前回の確認でもあるのですが。目で追っていてはダメだということが、たしかにわかりました(笑)
陽 それは、かなりの前進ですね(笑)
タ 前回の陽紀先生の写真をみて気がついたんですが、目が手を追っていないんですよね(写真a~b)。それなのに、ちゃんと受け手の対応ができている。ということは、目に頼らない感覚を働かせて身体を動かしているということだ、と。
陽 ということだと思いますよ、わたしも。
タ ということは------と考えたんですが。ヒントは、<自分が変わる→相手も変わる>のときに稽古した動き方にあるんじゃないかと。
陽 なるほど。
タ あの稽古では、こちらが相手を動かそうと必死になっていたときはびくとも動かせなかったのに、相手のことは考えず自分だけの動きをとらえるようにしたら、ふわりと動けたんですよ。その感覚をここに応用してみたら、どうかなあと。
陽 そこまできたら、出来たも同然、かもしれませんね。
タ ところが、問題がありまして。
陽 はい。
タ あのときは、自分から動くことができたんですが、今回は「受け手」なんですよね。相手の動きがつねに先にあって、それにこちらが対応していかなくてはならないわけですね? それも目を使っていては追いつかないぐらい速い反応をしなくちゃいけない。つまり、自分の動きをとらえよう、とか考えていたらまず対応できないだろう、と思うんです。じゃあ、どうしたら? というところでカベにぶつかってしまいました……
陽 入り方のわからない道が一本ある三叉路に出たという感じですね。入り口が見えている二本のうち、「目で追う」という道はどうも行き止まりらしい。「自分の動きをとらえる」という道は通れそうだけど、条件がそろわないと難しいような気がする、という感じでしょうか。
タ あー、そんな感じです。もう一本の道の入り口が見つからないんですよね。
陽 すっと見つかる、というのも気持ちのいいことですが、見つからなくて試行錯誤するというのも悪くないことですよね。「動きの質」を深くとらえる、ということができるようになりますから。
タ 「動きの質」、ですか?
陽 はい、量ではなく質。「動きには量と質がある」という考え方はなかなか興味深くて、ここからさまざま展開ができるのでちょっと頭の片隅に置いておいてくださいね。これからも何度か出てくる言葉だと思いますから。では、もう一度、稽古してみましょうか。
タ 今度はどの“道”を行きましょうか?
陽 三本の道のうち、「目で追う」道はタネエディター的にはどうも行き止まりらしい、ということだったんですが、もう一度この“道”をたどってみましょう。目で追うことがどうしてカベにぶつかってしまうのか、ということを、動きの量と質という観点で把握してみようと思います。
タ わかりました。要領はさっきと同じですね。
陽 基本的に同じですが、今度は両手ではなく、意識的に左手だけを目で追ってみてください。両手を追うよりも対応が楽になるはずです。
(※稽古再開。タネエディター、今度はどこか表情にも余裕がでてきた様子…写真d)
タ これはいいですね。最初の稽古よりも、対応力があがった気がします!
陽 ではこのままもう少し先へ進んでみますよ。
(※といいながら陽紀先生、今度は右側の攻め手にも変化を加えると……)
タ うーん……ここで“行き止まり感”が出てきました。両手を目で追うよりも、片手だけを追ったほうが対応力はあがったと思うんですけど、限界がありますね。
陽 そうですよね。では、かりに、この“道”をとことん進むとしたらどうしたらいいでしょうか?
タ それはもう、方法はひとつしかないんじゃないでしょうか。稽古を何度も繰り返して目で追うスピードをどんどんあげていく、というような------
陽 そう------つまり、それが「動きの量」で対応するということなんですよ。この場合「動きの質」というのは「目で追う」こと、「動きの量」は------
タ ははー、それが「スピード」なんですね。
陽 その通りです。
タ つまり、スピードを上げるというのは、「その動きの質は変えないまま、量を増やしていく」こと、だと。
陽 はい。そして、その方向で進んでみたら「行き止まり」にぶつかった、ということですから、今度は動きの質を変えることを考えなくてはいけない、ということになりますね。
タ それが第三の道の入り口を発見することにつながる、と。なるほど!
陽 次回がますます楽しみになってきましたね(笑)
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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