こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。最近思います。「からだの声」を聞くことも介護術になるのかもしれないなあ、と。からだがしたいことを手助けすることはもちろん大切な介護術ですが、その前に、その後に、「からだの声」に耳を傾けることは同じように大切なのではないか、ということ。「疲れた」ということも「からだの声」。今回はそんな「からだの声」から始まります!
<協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏/文・構成 佐藤大成>
タ えー、今回は女性の方からの質問ですね。
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質問「仕事は嫌いではないのですが、疲れます。どうしたら疲れないで仕事ができるようになるでしょうか?」
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タ という短い質問です。短いだけに切実なような気もしますが、どうでしょうか?
陽 「疲れる」の内容がもうひとつ明確ではないので断定はできませんが、なんとなく、この方はいま自分の仕事場が自分の居場所ではない、と感じているのかもしれませんね。
タ はー、なるほど。仕事は嫌いではない、というあたりがそんな想像をさせますね。肉体的にハードというんじゃなくて。
陽 そういうこともあるのかもしれませんが。ハードな仕事が多いのに報われているような気がしない、とか、うまく気分転換できないぐらい忙しい、とか。
いろいろなことが混じり合ってはいるとは思います。
タ そうしたあれこれを陽紀先生的にひとまとめにすると「自分の居場所がない」ということになるんですね。
陽 そうではないかなあ、と想像しているわけですけどね。というのは、どんなにハードな仕事だとしても、まわりがそのことをすごく認めてくれているという場にいるときは、おそらく、気持ちの納得がいかないような、あとに尾を引く疲れは感じないのではないでしょうか。
タ なるほど。今日は徹夜になったから疲れたなあ、というような疲れはだれにでもありますからね。
陽 居場所がない、というのが言い過ぎだとしたら、肩身がなんとなく狭い、とか、そんな感じのときはだれでもありますよね。まわりと自分との関係がうまくできていない状態にある、それをどうしたらいいかわからない、場違いな感じ、というような……
タ 介護術の稽古の感触みたいですね、それは。
陽 置き換えるとなんとなくわかりますね。
タ 日々是介護術の稽古をさせてもらって目からウロコが落ちたことがたくさんありますが、その中のひとつが、介護術というのは「相手と自分との関係がつねに問われている」ということだったんですよ。そこにいい関係性ができていないと、気持ちのいい介助にならないんですね。他の仕事の現場でもきっとそうだと思いますよ。
陽 賛成です(笑) 介護術の稽古はこうしてものごとを考えるときも役に立ちますよね。カラダは相手との関係性が出来ていて、相手か自分かどちらか一方をまるごととらえていれば、遊びのあったネジがしっかりと締まってくるように、目的に向かったストレスのない動き方ができるものだと思うんです。
タ かえって中途半端にいろんなことを気にかけていると、カラダは思い通りに動いてくれない、ということは日々是の稽古でホントに実感しました。そのぶん、余分な力を使ったり、気力を出したりしなくちゃならくないわけで。だから、疲れるんですね。
陽 そういう意味で、まず「自分の居場所」というものをどうとらえているのか、ということを、この方も一度チェックしてみるといいですよね。
タ まわりと自分の関係がどうなっているのかな、ということも含めてですね。
陽 はい。そうやって、自分自身の関係性のつくり方を振り返りながら、一方で、具体的に「自分の居場所を作っていく」ということもやってみたらいいと思います。
タ 自分から居場所を作る?
陽 そうです。自分が自由に使える空間があると落ち着いた気持ちになれるし、束縛のない自由な気持ちをそこで感じることができるんですよ。そういう気持ちに確実になれる自分の場所がある、と思うだけで何かがんばれる気がしてきませんか?
タ なるほどねえ、それはおもしろい方法ですねえ。具体的にはどうでしょうか。ロッカーまわりだけは自分の空間だとか?
陽 どこでもいいと思いますよ。具体的な場所が見つからなかったら、毎日仕事場でする習慣の中で自分だけの習慣を作ってみるとかでもいいですね。
タ 僕だったら、自分の好みの珈琲を毎日ちゃんと入れることから始めます。最近は珈琲を入れながら、指先の力について考えたりしているんですよ。
陽 だから、最近、理解が速くなったのかもしれませんね(笑)
タ まあ、理由はいろいろあるということですが……まとめると、あんまりあちらこちらに気を遣わないで、しばらくは自分がほっとできる場所をちゃんと育ててみるのもひとつの方法では?ということでしょうか。
陽 いろいろ気にかけない。気にかけるならひとつだけ。それを何にするか、というふうに考えてみるといいですね。
タ 自分にいわれているみたいです(笑)。このシリーズ、もう少し続きます。では次回!
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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