「指先を活かせばこんなにカラダはしっかりする体験」は、いつでもどこでも確認できる日々是介護術の原点になりますね。
写真A 指先の場所は指の先端部と腹の間の斜めに見える部分
――手の力を引き出す3つの“定点”の中で、今回まず取り上げるのは「指先の力」。本コラムでも折りに触れて紹介してきましたが、これは体験するたびに「えっ? こんなことでカラダが変わるの?!」とびっくりしてしまいます。
はじめて体験した方はたいていびっくりしますが、それは気がつかないだけで、ふだんでもカラダに無理のない安定した動き方をしているときは、だれでも指先の力を活かした動き方をしているんです。
――指先はカラダの末端なので大した役割がない、と思い込んでいる人が多いですよね?
そうかもしれませんね――でも、
本当は「指先こそカラダが動くときの司令塔」なのかもしれませんよ。
写真B 指の先端で支えているとき
一度体験してもらえば、すぐに納得してもらえることですが、 手の指先だけではなく、足の指先も含めて
カラダの末端と呼ばれているところから動き出すと、不思議なほどカラダのまとまりが増してしっかりしてきます。
「カラダの内側のつながりがよくなって安定する」という表現をすることもありますが、同じ意味ですね。
この
「カラダがしっかりする」という感覚は、どんな介護•介助をするときにも大切な、もっとも頼りになる感覚なんです。「カラダがしっかり」することで、カラダ全体の力を使って介助ができるようになるからです。
――ということは、いつも「カラダがしっかりしているかどうか」を確認しておけばいい、ということになりますね。
写真C 指先で支えているとき
そうですね。そのとき、「指先を活かせばこんなにカラダはしっかりする体験」が生きてくるんです。「これがカラダがしっかりするという感覚なんだ!」ということをいつでもどこでも確認することができますから。その意味では、この「指先を活かせばこんなにカラダはしっかりする体験」は、日々是介護術の原点になることともいえますね!
○
ということで、
指先の力が体感できる新しい稽古をご紹介します。
「指の先端」と「指先」を使ってあるもの(指先だけで支えられるもの、ということで写真ではパソコンの収納ケースを使っています)を支えて立ったとき、「カラダのしっかり感、安定感」がどう変わるか、というテストです。「指先がどこかわからない」という方は
写真Aで位置を確認してから、
写真BとCで、支える指の感じをつかんでください。つかめたら、だれかにカラダを押してもらってください――さあ、どうでしょう?
「指先」をピンポイントでつかまえられるようになったら、ビクともしないぐらいにカラダはしっかりしてくるはずです!
○
写真D~F 指の先端を使ったときのカラダのしっかり感軽~く押しているだけなのに、ふわーっと陽紀先生のカラダが傾いていく……しかし、常識的には「これがふつう」。指先部分の、ほんのわずかな違いがカラダのしっかり感に影響を与えるとは思えないのですが――
写真G・H 指先を使ったときのカラダのしっかり感いよいよ「指先」の出番。最初は軽く、しだいに力をいれて横方向に押してみるものの、陽紀先生、さっきとは別人のよう。軸がまったくぶれていない――次回はさらに別の角度からも検証してみます!
次回も引き続き、「指先の力」を検証していきます。
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html