厚生労働省は8月7日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催し、施設系サービスについて次期改定に向けた検討を行った。
特養では医療提供体制の強化、老健では各類型に応じた報酬のメリハリ付けや適切な薬剤調整の推進などが俎上に上った。特養は基準上、入所者の健康管理や療養上の指導を行う配置医師がいる。配置医師が施設にいない時間帯に生じた急変などの対応方法は、「配置医師によるオンコール対応」が最も多いが、「原則、救急搬送」も26.0~30.3%ある
また9割超の特養が算定していない配置医師緊急時対応加算について、未算定の理由を尋ねたところ、「配置医師が必ずしも駆けつけ対応ができないため」が45.3%で最も多く、次いで「緊急の場合はすべて救急搬送で対応しているため」が32.1%となっている。配置医師不在時の急変対応などが課題として指摘されていた。
全国老人福祉施設協議会参与の古谷忠之委員は「まず特養が行う『健康管理及び療養上の世話』の範囲を明確化する必要がある。その範囲を超える対応について、特養の配置医師と協力病院などの役割も整理し、協力医療機関との体制強化、オンライン診療との組み合わせなどを含め、特養の医療アクセスの向上を図っていくべき」と要望した。
日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、「配置医師の仕組みは残しつつ、地域の地域包括ケア病棟や在宅支援療養病院などがバックアップする体制を作っていく必要がある」と主張。
また日本看護協会常任理事の田母神裕美委員は、「看護師を基準よりも厚く配置したり、夜間緊急時にはオンコールを含めて看護職員が対応する体制を整備している施設もある看護体制加算に現行以上の上位区分を設定してはどうか」と提案した。
老健は、在宅復帰率やベッド回転率などの指標に応じた5類型に分けられ、それぞれ基本報酬の設定が異なる。最も報酬が高い超強化型は18年度に7.8%だったのが今年2月時点では28.6%にまで増加。18年度51.1%と半数を占めていた基本型は24.1%まで減少している。
全国老人保健施設協会会長の東憲太郎委員は、「機能が高い加算型、強化型、超強化型が全体に占める割合は18年度には42%だったが、現場の努力で今は7割超に達した。しかし、21年度の老健の収支差率は過去最低の1.9%にまで落ち込んでしまっている」とし、基本報酬の引き上げを求めた。
日本経済団体連合会専務理事の井上隆委員ら、複数の委員は「在宅復帰や在宅療養支援の取り組みをさらに推進するため、報酬のメリハリを強化すべきだ」と主張した。
また「適切な薬剤調整の推進」も議題の一つとなった。厚労省が示したデータによると、95%の老健が薬剤調整の必要性を高いと考える一方、実際に積極的に取り組んでいる老健は約半数に留まっている。
入所者の薬物療法について、入所前の主治医と連携して総合的な評価を行い、減薬に至った場合を評価する「かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)」の算定率は事業所ベースで5.8%に止まる。
算定が難しい理由としては、「処方内容を変更する可能性について主治医の合意を得ることや説明すること」「これまでの薬剤調整の経緯などの情報を主治医から得ること」など、主治医との連携を課題に挙げる声が多い。
東委員は、「同加算は退所時に1回算定が認められているが、ポリファーマシー対応は入所時が絶好のタイミング。(Ⅰ)~(Ⅲ)まであるうち、最もベーシックな(Ⅰ)だけでも入所時に算定できるようしてもらいたい」と訴えた。
<シルバー産業新聞 2023年9月10日号>
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