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2018年02月27日

よくわかる!2018年度介護保険改正・介護報酬改定のポイント | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

2018年は、介護保険制度が見直され、改正される年。2年に一度の診療報酬改定と同時の改定となり、「今回の改正は大きな変化をもたらす」と介護職の間でも噂でした。
結果的には、それほど大きな変更点はなく介護報酬もプラスになり、胸をなでおろした人も多いのではないでしょうか。しかし、安心してはいられません。

一見、穏やかな改正に見えても「将来の大きな変革に向けた第一歩を踏み出した」という政府の決意が見える内容も含まれています。
「厚生労働省の真意を読み取り、今後に備えるべき」と語る、東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授の高野龍昭さんに、「介護職が知っておきたい改正のポイント」を解説していただきました。
介護業界で働く方にとっては、今後の仕事内容や処遇にもやがて大きく影響する内容です。

監修: 高野龍昭(たかの・たつあき)さん
東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授。専門分野は、社会福祉学、介護福祉学。著書に「これならわかる〈スッキリ図解〉介護保険第2版2015年版」(翔泳社)があり、2018年版「これならわかる〈すっきり図解〉介護保険第3版(仮)」(翔泳社)も上梓の予定。



介護保険改正のポイントは大きくふたつ

2018年度の介護保険法等の改正の内容を大きくわけると、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「介護保険制度の持続可能性の確保」のふたつに大別できます。
介護業界ではすでに意識している点だと思いますが、2018年度以降はどう変わっていくのかを細かく見ていきましょう。

「地域包括ケアシステムの深化・推進」は、健康・介護など、高齢者におけるさまざまな問題を解決するには、地域でその問題を分析して取り組んでいくという内容です。
介護を必要として困っているお年寄りやその家族にとっては、暮らし慣れた地域で問題を解決できるなら、それが一番ではないでしょうか。

よく知った地域の中に相談できる場所があり、相談した結果、解決につながるサービスがある――これまでも「地域の困りごとは地域で」という取り組みを進めてきましたが、更に「深化・推進していこう」ということです。
そのため、市町村に決定権をより多く与える内容になっています。

「介護保険制度の持続可能性の確保」は、財政難の中で介護保険制度を持続させるために、しなければならないことがあると示唆しています。
これまで通りの介護保険制度を続けていては、いずれ介護保険が破たんしてしまいます。そのために、介護職、利用者、利用者家族など、すべての人たちを対象に、ある意味「痛み分け」のような内容も盛り込まれています。

「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」。この2つのテーマには、それぞれ具体的な内容が示されているので、介護業界で働く方にとって影響の大きい内容を中心に解説していきます。
また、介護報酬に関連する改定内容も挙げていきます。むしろ、介護職にとってはこちらのほうが気になる内容かもしれませんね。


新しい施設「介護医療院」を開設

【地域包括ケアシステムの深化・推進】
――医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)――
次こそは!?6年後に介護療養病床が廃止
かねてから何度となく廃止が予定されてきた介護療養病床が、ついに2024年度末までに廃止の方向となりました。

医療保険の『医療療養病床(医療保険財源)』と、介護保険の『介護療養病床(介護保険財源)』があり、対象となるのは介護療養病床。2018年4月からの改正では、2024年3月末までに6年間をかけて順次廃止するように、決定しました。

そもそも、介護療養病床は、2006年の介護保険改正のときに、2012年までの廃止が決定していました。
ところが実際には廃止は難しいとされ、現在に至っています。というのも、代替えの施設がないことから、利用者の受け入れ先を見つけるのが困難だったのです。
治療しても改善の見込みがない高齢者は、自宅での生活が困難なケースが多々あります。介護療養病床は、療養のための医療や日常生活を支える少ない場でした。

それが今回の改正で、代替えの施設が決定したのです。情報通の介護職なら、「介護医療院」という名称は、すでに聞いたことがあるかもしれません。

より医療ケアを必要とする要介護者のための「介護医療院」
介護医療院は、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設です。要介護者の長期療養の先にある、看取り・ターミナルも視野にいれて、その機能とケアも担います。
開設主体は地方公共団体、医療法人、社会福祉法人などの非営利法人等。特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同様に介護保険法上の介護保険施設ですが、医療法上は医療提供施設として法的に位置づけられます。

この内容を見る限り、「介護療養病床と同じではないか」と思うかもしれません。
実際、「病院又は診療所から新施設(介護医療院)に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できることとする」と国は規定していますから、看板を掛けかえればすむ話だと思ってしまいそうです。

しかし、介護療養病床をそのまま介護医療院にするわけにはいきません。
介護医療院のほうが1床あたりの面積を広く設定しているので、面積の余裕なくベッドを配置していた介護療養病床は、4人部屋を3人部屋にするなどの変更や、部屋の改築なども行わなくてはなりません。
面積あたりの病床数が減るわけですから、報酬額もその分減ることになります。

また、介護医療院は「重度の人のケアをする病床」というスタンスがはっきりしています。
重度の入居者を一定数以上受け入れる必要があり、ガン末期などの本当に医療を必要としている要介護者の受け入れを中心とすることが求められます。
同時に、一定数以上の看護・介護職員などを配置することが求められ、重度者への対応を行う施設という意味合いを強めます。
介護医療院の設置は、本来の目的にかなった内容への改正といえます。

療養病床ではこれまで比較的自立度の高い人の受け入れも行い、「社会的入院」という言葉で説明されていました。
しかし、限られた病床数なのですから、より重度の人を優先すべきです。要介護度が低い人であれば、病院ではなく有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に転居して在宅医療サービスを利用することなども視野に入ることになるでしょう。


高齢者と障害者が同一事業所でサービスを受けられるように

【地域包括ケアシステムの深化・推進】
――地域共生社会の実現に向けた取組の推進等(社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)――
高齢者と障害者が「共生」することのメリット
高齢者施設と障害者支援施設はまったく別のもの、というのが従来の考え方で、通所・入居施設ともに相互に交流はありませんでした。
しかし以前より問題視されていたのは、障害のある方が65歳以上になり要介護認定を受けると、障害者向けの事業所から高齢者向けのデイサービスや老人ホームへの利用を優先することが原則となるため、慣れない施設に利用者が戸惑ってしまうことでした。

このようなデメリットをなくし、高齢者と障害者がともに同じ時間を過ごす(共生していく)ことが改正の主旨です。
高齢者と障害者の事業所が一体化すれば、相互の交流が生まれ、認知症を持つ人が障害者のケアをすることによって活性化する、あるいは障害のある若い人が高齢者の車椅子を押して交流するなど、さまざまなメリットが期待されます。

事業所を一体化すれば、通える事業所も増えます。特に、障害者の事業所は数が少なく自宅から比較的遠いところにある場合も多いようなので、自宅から近ければ、非常にラクになります。

なお今回の改正では、障害者支援施設であれば介護保険施設としての指定も受けやすくなり、その反対も同様です。

高齢者と障害者が同じ事業所内で過ごすことには、他にもメリットがあります。
高齢者福祉も障害者福祉も、それぞれ人手不足、経営難などの問題を抱えています。定員数を満たしておらず、なおかつ利用したい人がいたとしても、職員数が規定を満たすことができないために、受け入れが不可能になっているケースも多々あります。

また、特に高齢者向けの事業所はM&Aが盛んに行われるほど、経営的な難しさを抱えています。高齢者と障害者の福祉が一体化すれば、人材も資産も相互に乗り入れることができるとういう期待があるのです。

職員は介護・障害福祉両方のスキルが必要とされる
しかし、これを実際に働く職員側の視点で見ると、深刻な課題が見えてきます。

これまで、高齢者、障害者それぞれの理解やケアの質を実現するだけでも、専門的なスキルが必要で難しい局面が多々ありました。それが、これまで経験のない分野の利用者を受け入れることで、ますます幅広い知識や経験が必要とされます。
必要な知識や質の高さが求められることで人材不足が加速しないか、サービス提供がうまくいかないことでかえって事業所の経営が困難にならないかなど、議論は尽きません。

介護職員においても、今後は障害者支援の分野でも活躍できるスキルを身に付けることが不可欠となるでしょう。課題の大きい改正となりそうです。

なお、現時点ではこの共生型サービスは、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイが対象となっています。将来的にはこの範囲が拡大するものと思われます。


利用者の重度化防止などに取り組めば、市町村にインセンティブを

【地域包括ケアシステムの深化・推進】
――自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進(介護保険法)――
要介護者の「自立支援・重度化防止」を支援
介護保険はそもそも、利用者の自立をサポートし、健康の維持だけではなく、理想的には要介護度を軽くすることを目指すケアシステムです。

しかし、介護保険は、要介護度が高い人ほど介護報酬が高く設定されています。
それは、要介護度が高くなるほど、身体機能の改善や維持に技術や工夫が必要だからですが、裏を返せばADLを向上させると報酬が減るということです。
中には、機能改善や維持に努力を傾けず、利用者の要介護度が高くなるのを待っているようにしか見えないケアを施している事業所も見受けられます。

介護保険の目的と逆行するようなケア内容にならないよう、保険者(市町村)の機能を強化し、努力を求めるということです。
こうした自立支援、重度化防止を目標とした計画を策定することも、市町村に求めています。
そして実際に、ADLを改善した事業所には報酬を上げることを検討している市町村も数多くあります。

自立支援・重度化防止に対する報酬の予算は年間2000億円
事業所に加算するとなれば、当然ながら予算が必要なため、自立支援や重度化防止を計画し、着実に実施した市町村には、「財政的インセンティブ」つまり、本来の予算に上乗せするご褒美を確保するというのが今回の改正の主旨です。
そのご褒美額は年間2000億円規模(政府予算:全国計)にものぼります。

「2000億円もの十分な予算がある」という言い方もできますし、全国には1700以上の市町村があるため、「もらえても1億円ちょっと、たいしたことはない」という考え方もできます。
1億や2億円程度の予算で何ができるのか、と不満の声も聞こえてきそうですが、そうではなく、これは「大きな変革の兆し」だととらえるべきです。

市町村によって介護サービスに大きく差がつく可能性
この2000億円の予算を使って、「効果を出した市町村には“財政的インセンティブ”を上乗せする」と決めました。
これまで国は、市町村によって介護に関する予算に大きく違いを出すことはしませんでした。

全国一律の介護サービスを求めがちな政府が、「努力によって市町村に差をつける」と宣言したわけで、この意識の変革は非常に大きいものと考えるべきでしょう。
将来的には、自立支援や重度化防止に努力しない市町村が「ディス・インセンティブ(罰金)」を払うことも検討されています。そうなれば、事業者にとっても気が気ではないでしょう。

介護職にとっては、働く市町村によって処遇にも影響がみられるかもしれません。
今後は介護職として就職するときは、事業所の業績だけでなく、市町村のインセンティブについても調べて判断する時代になろうとしています。


介護保険料の支払額が変わる

【介護保険制度の持続可能性の確保】
――介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)――
加入している医療保険者により介護保険料が変わる
この項目は、介護サービス利用者ではなく、保険を払う40歳以上に関係します。
40歳以上になれば、介護保険料を支払う義務があります。40歳から64歳の第2号保険者(一般的にはまだ介護保険サービスを使わない世代)がどのように介護保険料を支払っているかご存知でしょうか。
それぞれが加入している国民健康保険、健保組合、協会けんぽ、共済組合などから、医療保険ととも介護納付金として天引きされています。

これまでは保険の加入者数に応じて一律に月額が決められていましたが、これが不公平だということになりました。
国民健康保険の加入者は零細な自営業や個人事業主が多く、収入はあまり高くない人が多いことが考えられます。そうすると、収入の中での介護保険料の割合が高くなり、負担が大きくなってしまいます。
一方、健保組合や共済組合に加入しているのは、公務員や大企業に勤務している収入が高い人たちです。
その不平等さから、収入の額に応じた負担額にすることが決定しました。

混乱を避けるためにも、この制度は2017年8月からすでに導入され、2020年度までに完了の予定です。
また、おおよそですが負担増となる人は1300万人、負担減となる人は1700万人となります。

介護保険の改正は、介護職であれば仕事の一環として知るべきものですが、今回の改正のように、自身の生活にも影響が出る場合があります。今後の動向にも注目していきましょう。


収入が多い利用者は、介護保険の自己負担3割に

【介護保険制度の持続可能性の確保】
――2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする(介護保険法)――
収入が高い利用者は3割負担に
持続可能な介護保険サービスのためには、財源を確保することが先決です。
そのひとつは「財源のほうの保険料を増やす」こと、もうひとつは「利用に制限をかける、あるいは利用料を値上げする」ことです。

現在、利用者が支払うのは全体の1割、あるいは2割負担。残りの9割、あるいは8割が税金でまかなわれているのは周知のとおりです。それなので、利用が増えれば増えるほど、財源が持ち出されることになります。
一方、利用料を値上げすれば、その分、財源の減り方が少なくなるというわけです。

今回の改正では、利用料の値上げが予想されていました。それも、2015年8月から始まった2割負担に相当する人を増やすことで、財源の持ち出しを減らそうとしていると噂でした。

2015年8月の改正では、2割負担の対象者は年金収入等280万円以上の人でした。
今回の改正にあたって財務省などが検討を求めていたのは、例えばその280万円をさらに下げて250万円などにすることです。そうすれば、2割負担の対象者が増えて財源が以前よりは守られます。

しかし、この噂は現実にならず、実際には3割負担層を設けることになりました。
年金収入等が340万円以上の人が対象です。3割負担になることで、介護サービスを受けにくくなる高齢者もいるでしょう。月額4万4400円の上限(2018年8月に施行)があるにせよ、人によっては生活に負担割合が大きくのしかかることも考えられます。

利用者の収入の全容についてはなかなか知り得ないことが多いですが、ケアマネジャーは介護保険証などをチェックし、利用者の負担割合に変化がないか、早めに確認しておく必要があるでしょう。

3割負担の設定で、介護保険の財源は安定する?
受給者全体は496万人、そのうち2割負担は45万人。
では、介護保険サービスが3割負担になってしまう人は、どの程度いるのでしょうか。
厚生労働省の資料を見ると、3割負担は受給者全体のわずか3%の約12万人という調査結果でした。
受給者全体の3%の人の負担額を増やしたところで、どれほど財政に影響があるのかは疑問が残ります。

しかし、もしかするとこの改正は、もっと先を見据えたものなのかもしれません。次回の改正では、3割負担がもっと増えるような内容になることも考えられます。

介護保険サービスの負担が大きいと考える人が多くなれば、介護サービスの利用を控える人も出て来ることは想像に難くありません。そうなれば、介護事業所の運営にも影響してきます。
今回の負担割合に安心することなく、今後の負担割合の改正の機運についても、目を光らせることが必要になるでしょう。


介護の仕事に大きく影響!2018年度介護報酬改定や処遇改善

法改正の内容を知ることも介護職には重要ですが、むしろ介護報酬改定のほうが日ごろの職務に大きな影響がでることもあるため、気になるポイントかもしれません。

介護報酬が下がれば介護業界で働く人の給料に影響しますし、勤務している事業所の経営も苦しくなる場合が多いのは周知のとおりです。また、細かな加算についても、直接仕事内容や勤務体制に影響します。
2018年度の介護報酬改定や処遇改善はどのように変わるのでしょうか。

まず介護報酬は、0.54%のプラスになりました。
「下がるのではないか」と戦々恐々していた事業所や介護の仕事に携わる人たちも、ほっと胸をなでおろしているでしょう。

介護報酬の改定内容は4つに分けることができます。

〇地域包括ケアシステムの推進
〇自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
〇多様な人材の確保と生産性の向上
〇介護サービスの適性化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

上記の中で、特に「多様な人材の確保と生産性の向上」には力を入れるということで、介護職の処遇改善についても期待できそうです。

ただ、厳しい財源の中で報酬をプラスに転じれば、将来の国の財源が苦しくなるのもまた事実。
加算になる部分を単純に喜ぶのではなく、介護業界の将来を見据えること、つまり地域包括的なサービスや持続可能な介護保険制度への寄与などを考え、実践していくことが重要です。
たくさんの改定項目の中から、介護職・ヘルパーやケアマネジャーに関係の深い内容を中心にお伝えします。


「訪問介護」の改定ポイント

●訪問介護の「生活援助」は資格が不要に
訪問介護における掃除や調理介助など、生活援助の部分は、必ずしも介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などの資格がなくてもよいことになりました。
これは、訪問介護の事業所やヘルパーにとっては大きな変更です。

資格を持っていない人でも料理や掃除など、家事を中心に行う職員として雇うことができます。
有資格者であるヘルパーは、身体介護や利用者とのよりよいコミュニケーション、そして医療連携など、本来の任務に没頭することができます。より専門性を高くし、誇りを持って仕事ができる環境になりました。

ただ、生活援助の役割を持つスタッフとの連携もまた必要になります。
ひとりで両方を担うよりも煩雑な部分が出てくるかもしれませんし、あまりに介護の基礎を知らない生活援助スタッフでは、ヘルパーも利用者も困ってしまいます。

そこで、生活援助スタッフには、50時間程度の研修が義務付けられることになりそうです(詳細は2018年4月頃に決定)。
生活援助スタッフをどう扱うのか、事業所の運営のしかたが注目されます。

●サービス付き高齢者向け住宅など、集合住宅居住者への訪問介護の減算
訪問介護は1軒1軒を訪問するため、移動時間が多くかかります。
しかし、サービス付き高齢者向け住宅などの居住者への訪問となれば、隣室のドアをあけて順番に介護サービスを施すのですから、移動時間が大幅に短縮されます。
これと、1軒1軒の訪問介護を同じ報酬額にするのは不適切とみなされ、減算幅が大きくなることになりました。
集合住宅での訪問介護が多い事業所では、運営に工夫が必要になるでしょう。


「通所介護(デイサービス)」の改定ポイント

●サービス提供時間区分の見直し
これまでデイサービスでは、7~9時間、5~7時間、3~5時間の3つの区分でサービスが提供されていました。
つまり、提供時間が7時間5分であっても「7~9時間のサービス提供」とすることができたのです。これが1時間刻みに見直されました。
利用者さんの滞在時間が増え、レクリエーションの内容を見直したり、送迎の時間の変更をするなどさまざまな影響がありそうです。

●心身機能の維持・改善に成果に対する評価を導入
「レクリエーションで楽しんでもらう」ことに集中しがちなデイサービスは多いですが、本来は、高齢者が活性化することや、心身の健康の維持・促進に寄与することが望まれています。
そこで、デイサービスに通ってADLが良くなった場合は、介護報酬の加算をすることになりました。実際には「バーセル・インデックス」という指標を使ってADL向上の評価を行います。

ただ、加算の度合が低い(3~6程度)といわれているため、単なる努力目標に終わるのではないかと、疑問視されています。


「リハビリテーション」の改定ポイント

●長時間の「通所リハビリ(デイケア)」は基本報酬を見直し
デイケアで利用者がリハビリそのものに費やす時間は、せいぜい半日程度。
それが滞在時間7~8時間ともなれば、多くの時間はデイサービスと同様の過ごし方をしていることが考えられます。
訓練時間以外の時間の利用については報酬を下げることが検討されています。

●リハビリテーションに関する「医師の関与の強化」や「成果の評価」
リハビリテーションは、病院の外来で医療保険を使うのではなく、介護保険を使う形に移行させるのが国の意向です。
しかしその場合、理学療法士などだけの判断によらず、医師の関与をしっかりとさせ、確実なリハビリテーションを実現することに一定の評価をします。

今後はますます、医師と理学療法士や作業療法士などとの連携が密になっていくでしょう。


「居宅介護支援事業所・ケアマネジャー」の改定ポイント

●「入退院時の報告」の加算条件が変更
ケアマネジャーについては、入院加算、退院加算というものがあります。
利用者が入院した場合、これまでは7日以内に利用者について入院先に報告すると加算がつくことになっていました。これが今後、加算は「3日以内の報告によるもの」と変更されます。

ただし、「病院に出向いて」という条件はなく、郵送や電話を使うなど、伝達の仕方については自由度が増しました。
また、退院時の書類提出をした場合も、加算となります。
利用者の在宅生活について、ケアマネジャーが医療職に詳しく情報提供することは、利用者の治療に大きく役立ちます。
利用者が在宅生活から病院での治療・生活へとスムーズに移行できるように、ケアマネジャーには「医療連携の意識」や「迅速な報告」が求められます。

●「居宅介護支援事業所」の管理者は「主任ケアマネジャー」に義務化
ケアマネジャーの質の向上を目指し、2021年までには、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャー資格者とすることが盛り込まれています。
新たに雇用する、あるいは現在所属しているケアマネジャーが資格を取得することが必要です。
現状、管理者を兼ねているケアマネジャーにとっては大きな問題となりそうです。


「その他施設など」の改定ポイント

●小規模多機能は「訪問」を重視した加算へ
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護で認知症の利用者に対応をしているところは、大きな加算がつくことになりました。
特に、訪問に力を入れている事業所は評価され、訪問加算がつきます。
小規模多機能では「通い」がメインになりがちですが、そうではなく、本来的な機能発揮に向けて、個別の訪問が今後は重視されるということでもあります。

●特定施設(介護付き有料老人ホーム)で退院直後の人や看取りについての加算
介護付き有料老人ホームなどでは、退院後の利用者の対応について大きな加算があります。さらに、看取りの加算も増えることになります。


「福祉用具貸与」の改定ポイント

●福祉用具貸与の報酬の上限設定
車椅子や介護用ベッド、手すりをはじめ、さまざまな福祉用具の利用には、報酬額が決められています。
しかし、福祉用具に関しては、これまで報酬額に自由度が認められていました。同じような介護ベッドでも、導入のしかたなどによっては手間のかかり具合が違うため、認められてきたという経緯があります。

しかし、今回の改定で報酬上限額が設定され、不適切な「儲け方」ができない体制づくりを整えました(2018年10月開始)。
ケアマネジャーや管理者などは、価格の上限を確かめた上で、福祉用具貸与の利用を提案していく必要があるでしょう。


「処遇・給料アップ」の改定ポイント

●介護職員の処遇改善が積極的に行われる
「介護職の給料は安い」とはよく言われることです。
ですが実は、2009年から介護職員の施設・事業所における処遇改善として、5度にわたって月額の処遇改善加算を拡充してきました。その額は合計月額5万3000円に相当します。
これがすべて、介護職員の給料に充当されているとはいえませんが、他業種も低迷する中、介護業界での職場環境は、良いほうに向かっているといえるでしょう。

そして、「介護福祉士資格を持ち、10年以上現場勤務している者には8万円の処遇改善をする」という安倍総理の発表も、介護職の間で話題です。
現時点では詳細まで発表されておらず、2019年10月の消費増税に合わせて実施することだけは決まっているようです。具体的に、すべての介護福祉士資格保有者に相当するのか、現場とはケアマネジャーになっている人は含まないのかなど、詳しい内容については不明です。

しかし、政府が慢性的な介護職員不足を少しでも改善し、介護職のキャリアアップにインセンティブをつけようとしていることは事実です。
納得のいく処遇が得られていくよう、期待したいですね。

介護報酬に関しては、「ラクはさせない」という厳しい面と、「きちんとやれば加算する」という評価の面がはっきりしてきたように思えます。
また、介護職にはより高度な知識や経験が求められ、加算、減算というわかりやすい形で評価されるようになりました。

自らが働く業界にどんな変化が起きているのか、改定の情報などは普段からこまめにチェックして知ることも、介護業界を知る上では大事だといえます。
今後の動きもしっかり確認していきましょう。

<監修:高野龍昭(東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授)/ライター:三輪 泉(社会福祉士)>

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