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◆Movie Infomation◆
■作品名:0.5ミリ
■出演:安藤サクラ 柄本明 坂田利夫 草笛光子 津川雅彦 ほか
■原作:「0.5ミリ」安藤桃子(幻冬舎文庫)
■主題歌:寺尾紗穂「残照」
■監督•脚本:安藤桃子
■配給:彩プロ
*報知映画賞で、『0.5ミリ』が作品賞と助演男優賞(津川雅彦さん)をW受賞しました!
「介護」って何?の疑問に、直球で答える「おしかけヘルパー」
「介護」に向かうとき、どこか自分の本音を殺して、建前にはめた行為をしていることがあるはず。そんな日々にガツンと一発刺激を与えてくれるのが、この作品だ。
主人公のサワは、訪問介護事業所で訪問ヘルパーだった。しかし、死期の迫った男性高齢者の家族から「おじいちゃんと寝てくれない?」と言われ、添い寝して事件が起き、クビになってしまう。おまけに、貯金全部をポケットに入れたコートを紛失し、一文無しに。天涯孤独でお金も家もないサワは、いったいどうするのか?
”フリーの訪問ヘルパー”と言えば聞こえはいいが、要するに、サワは、街でカモれそうなおじいちゃんに近づき、弱みに付け込み、ゆすったり、家に居着いたりして暮らしていくようになる。給料は出ないけれど、雨露をしのげ、お腹も満たされるから。
エエッ、これ、犯罪でしょ!?
もちろんおじいちゃんたちも、最初は怒りに震える。しかし、サワと暮らしているうち、いつしか心を通わせ、まるで家族のような関係になっていく。最後は「ありがとうね」と心から穏やかな笑みを浮かべる。規則からはずれまくりの介護で、彼らを元気にしていくのだ。
サワはヘルパーとしての技術は申し分なく、しみじみとおいしい家庭料理でおじいちゃんを魅了する。それだけではない。老人たちを「個性あるひとりの男」としてとらえ、真正面から向き合う。詐欺にひっかかり、身ぐるみはがされそうになっているおじいちゃんのためには、危ない男と全力で対峙し、追い払う。認知症の妻を受け入れられない老人には、その妻を献身的に介護することで、介護の本質をあたたかく示す。ピュアでストレートな愛が、おじちゃんたちの心を溶かす。
「介護者と介護される者は、『してあげる』『してもらう』」の関係に陥ってはいけない、ひとりの人間として尊厳を持って接するのだ――」。
介護者としての大前提を、サワは全身で表現する。その上で、おじいちゃんたちとの暮らしを、心底楽しむ。高齢者だけじゃない。心に傷を負った若者にも、認知症のおばあちゃんにも、わけへだてのないピュアな心で接して、その人の幸せを作り出す。
介護を仕事にする人なら、ぜひ観て欲しい。アナーキーであっけらかんと明るいサワを見ているうちに、もしかしたら仕事の悩みも霧散してしまうかも。サワは観客にとっても、「心のヘルパー」なのだ。
○●○ とっておき!製作裏話 ○●○
ファミリーに支えられ、監督自ら
ロケ地高知に移り住み、「命の大切さ」を次代につなぐ
安藤桃子監督は、1982年生まれの32歳。高校時代からイギリスに留学し、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業、その後、ニューヨークで映画作りを学ぶという申し分のない経歴を持つ。父親は映画監督・俳優の奥田瑛二さん、母親はエッセイストの安藤和津さん。そして妹は、この映画の主人公でもある安藤サクラさん。
0.5ミリは、安藤桃子さん自身が祖母の介護を経験し、そこから発想を得て書いた小説を出版・映画化したもの。今回は奥田さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、和津さんがフードスタイリストを務める。ベテラン俳優陣の中には、サクラさんのご主人の両親である柄本明さんや角替和枝さんもいる。まさに、家族一丸となり挑戦した映画でもある。
「後にも先にも家族で映画を作る事に挑戦出来るのは0、5ミリだけ」と、監督は言う。特に、主役は、「この作品はサクラで撮ると決めていた」というほど。数々の賞を総なめしてきたサクラさんは、「”最強の役者”。その女優を、姉の私にしかできない撮り方で表現できたことも、幸せでした」。
撮影はほぼ全編、高知ロケ。この土地に惚れ込み、撮影後は移り住んでいる。そして現在、お腹には赤ちゃんが。この地で夫とともに新しい命を育む監督は、映画のテーマのひとつでもある「命のバトンを繋ぐこと」を、自ら次の世代につないでいく。
<三輪>
*安藤桃子監督のインタビューは、姉妹サイトのオアシス介護で詳しく掲載しています。