毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「あらためて比較検討する各党の介護に関する政権公約・政策」という話題を紹介します。
4月12日、4年に1度行われる統一地方選の投開票が行われた。深刻な人手不足や低賃金など、問題が山積する介護業界に携わる者にとって、選挙は自身の身の上を占う大きな関心事だが、どの党が「より介護職員に寄り添った政権公約・政策」を提案しているのだろうか?各党のマニフェストを見てみよう。
政権与党の「自民党」は?
まずは政権与党の自民党だが、日本を導く圧倒的多数の与党であるが、そのマニフェストは?
「介護サービスへのニーズが急激に増大する中で、現行の介護制度は財政的に危機的な状況にあります。従事者の処遇改善や研修等の支援による介護サービスの質の向上や効率化・重点化に加え、所要の財源確保を前提とした公費負担の引上げ等により、保険料負担の増大を抑制しつつ、真に必要な介護サービスを確保します」(一部抜粋。以下同様)
マニフェストには、具体的な数値や政策は一切あげられていない。“努力目標”という感がある。
自民党サイト
連立政権を組む「公明党」は?
自民党とともに連立政権を組む公明党はどうか?
「介護保険サービスを必要とする方がより利用しやくなるよう、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせた複合型サービスを大幅に拡充するとともに、ICTの活用も含め24時間365日いつでも利用可能な在宅支援サービスを強化します。あわせて、必要な介護・看護人材の確保、処遇改善を進めます」
こちらは、“介護を受ける側”に関しては、自民党よりも具体的な目標が掲げられているが、介護する側に関しては自民党と同様、抽象論に終始している印象だ。
公明党サイト
政権奪回を目指す「民主党」、野党第二党の「維新の党」は?
それでは、政権奪回を目指す前・与党の民主党はいかなるマニフェストを掲げているのか?
「医療と介護の連携、サービス付高齢者住宅の確保、在宅サービスの充実等により、住み慣れた地域で暮し続けられるように、地域包括ケアシステムの構築を進めます」
「認知症の人とその家族への支援を充実させます」
「介護・福祉現場での人材確保のため、民主党が提唱して成立させた介護職員・障害福祉従事者の処遇改善法に基づき、介護報酬、障害福祉報酬をプラス改定し、介護職員・障害福祉従事者の賃金を引上げます」
「財政支出を抑制し、要支援高齢者に対する訪問介護・通所介護サービスを市町村に移管する「要支援切り」は、介護サービスの質と量の低下を招き、家族の介護のために離職する「介護離職」や介護する家族も倒れる「共倒れ」が増加するため、見直します」
「認知症や、要支援切り」というくだりは与党には見られないが、その他の点に関しては与党と“似たり寄ったり”と言えそう。ただ、与党よりも詳しく言及されており、介護職員の給与をアップさせる「処遇改善法」は民主党が提唱したものだったのか、という発見もある。
民主党パンフレット(PDF)
野党第二党の「維新の党」は素っ気ない印象。基本政策としてあげられているのは
「介護と連携した地域医療の充実と高度・先端医療との機能分化」
介護に関する文言は、この一文のみ。
維新の党サイト
介護に力を入れるのは「共産党」と「社民党」?
介護に関して、特に力を入れて説明しているのは、共産党と社民党の両党だ。
共産党は2014総選挙の各分野政策の中で、介護難民や利用者の負担増、特養待機者など、介護業界が抱える問題点をさまざま指摘した上で、
「介護・福祉労働者の労働条件改善、介護報酬の増額」
「国費の投入で賃金アップ」
「介護報酬の削減反対、抜本的な底上げ」
「介護職による医療行為の代替は見直しを」など、介護職員を全面的にバックアップしている。
共産党サイト
また社民党も、社会保障に関する政策の中で、介護に関する課題をあげ、制度見直しを訴えた上で「介護労働者の労働条件を改善」を掲げている。
「介護職の離職率は、年間22%と他の産業と比較して非常に高いのが現状です。早急に賃金を含む労働環境を大幅に改善します」
「軽度要介護者に対する介護報酬が引き下げらえたために、事業所の運営難や『ケアマネ難民』という事態が生じています。状況を点検し、報酬の改善を行います」
「ケアマネジメントの公正、中立性を守るために、ケアマネジャーが事業所から独立できるよう介護報酬を改善します」
「ホームヘルパーに関するサービス事業所の過剰なマージンを規制し、介護保険報酬が賃金として労働者に支払われるよう指導を行います。社会保険(労災保険、雇用保険等)の加入を徹底させさます」
より具体的な内容が掲げられており、党としての力の入れようが伺える。
社民党サイト
与党は抽象的な目標に終始せざるを得ず、その一方で野党は好きなだけ理想論を語れるという各々の立場はあるかもしれない。そもそも政党は、政策や主張に共通点のあるものが集まってできるもの。それぞれの政党で考え方に違いがあるのは当然だ。我々は政党や政治家を選ぶことで、間接的に自分の意見を伝えることができる。
低い賃金や激務で疲弊する介護職員にとって、労働環境の改善は1秒でも早く望むもの。日頃、政治に興味のない人、選挙に行かない人も、政党や選挙を気にしてみてはいかがだろうか。