毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「ゴミ屋敷なら任せて!」という話題について紹介します。
訪問先はなんとゴミ屋敷!片付けたいけど、掃除は業務外…
近年、ニュース番組やワイドショーなどでしばしば報じられるのが「ゴミ屋敷」の問題。
自分にとってはお宝でも、他人から見ればゴミのように見えるものをコレクションしている人は少なからずいるだろう。
しかし、テレビで紹介されるゴミ屋敷は、明らかに趣味の範囲を超えており、近隣住民の頭痛の種になっているケースもある。
都内の訪問介護事業所でホームヘルパーとして働くカワノさんは、これまで何度も「ゴミ屋敷と紙一重」というお宅に訪問したことがあるそうだ。
カワノさんが振り返る。
「一人暮らしの80代の男性のお宅を担当していた時のことでした。
初めてお宅を訪問すると、部屋のそこら中にゴミが散らかっていて、足の踏み場がありませんでした。私は家事援助で食事を作らなくてはいけなかったのですが、当然台所も汚れていて、料理を作れる状態ではなかったのです。
経験が浅かった私はどうして良いか分からなくなってしまい、先輩に電話すると、そのまま料理を作るように言われたので、汚れたままの台所で料理を作って帰ってきました。今でも忘れられない経験です」
ヘルパーが訪問するお宅は、事前にケアマネジャーなどが訪問している。カワノさんが食事の援助だけで派遣されたということは、ゴミに関してはそのままでOKという判断が下されたということだろう。
ヘルパーは、“やってよいこと”と“やってはいけないこと”が厳しく定められているうえ、“やらなくてはいけないこと”があらかじめ決まっており、“やらなくてはいけないこと”をこなすだけで時間がなくなってしまう。
そこで、カワノさんは徐々に“掃除をしたくなる”ように、利用者を誘導するようになったそうだ。
ゴミだらけの部屋に住むお年寄りを少しずつ説得!
「ゴミが部屋に積み上がっているようなお宅だと、そこに住んでいる利用者さんはもちろん、訪問するヘルパーの健康も害されてしまう可能性があります。実際、コバエが発生していたり、ゴキブリが這いずり回っていたりするようなお宅もあります。
本来、介護を必要としている人を支えるのがヘルパーの仕事ですが、ヘルパーの健康と引き換えにする必要はないのでは、と思います。
原則的には、利用者が捨てないで良いと言えば、それはゴミではありません。
そういう場合、私は『部屋がキレイだと気持ちが良いですよ』と促し、丁寧にコミュニケーションを取り、了解を得た上で少しずつ片付けるようにしています。
毎回、コンビニ袋1つ分のゴミを捨てるだけでも、しばらく経てば目に見えてキレイになるんです。
最初は少し不満そうにしていたあるお年寄りが、半年ほど経ってかなり部屋がキレイになると、照れ臭そうに『こっちのほうがいいな』と言ってくれたこともあり、とてもうれしかったです」
実はカワノさんはゴキブリが大の苦手だが、これまでの経験で、(1)粘着シートでゴキブリを駆除する装置を設置し、(2)ゴミはすぐ捨て、(3)水回りを丁寧に掃除することで、ゴキブリはほぼ壊滅するということが分かったとか。
今では、部屋を散らかしっぱなしの利用者さんがいたら、その家をちょっとずつキレイにしていくのがカワノさんの秘かな楽しみになっているそうだ。
ヘルパーに大掃除はできないから…とあきらめてしまうのではなく、利用者と少しずつコミュニケーションを取るのも大切なのかもしれない。