毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護のアルバイトは大学より学ぶことが多い!」という話題について紹介します。
ささいなきっかけで始めた介護施設のアルバイト
いつの時代も若者を悩ませるのが就職活動。
大学進学率が50%を超えた今、「大卒」という資格だけで就職を決めるのは難しいのが現状だ。
各大学では就職セミナーなどを行って、学生の内定獲得をサポートしているが、たくましい学生は自力でアピールポイントを探し出している。
現在、関西地方の私立大学に通うオノさんは、介護施設でアルバイトをしたことで多くのことを学び、就職活動で絶対的な強みを発揮したという。
オノさんが介護施設をアルバイト先に選んだのは、非常に簡単な理由だった。
高校まではアルバイトをしたことがなかったオノさんは、大学に入ったら何かアルバイトがしてみたいと考えていたが、知らない人に囲まれて仕事をするのは不安だらけ。
すると、介護施設で介護職として働いていた母親から「じゃあウチの施設でアルバイトすれば?」と言われ、それに飛び付いたのだ。
母親が働いている気安さで、介護施設でのアルバイトを始めたオノさんだったが、いざ働いてみると、学ぶことだらけだったという。オノさんが語る。
「介護施設で働いてみて、自分が今までいかに狭い世界で生きてきたかということを知りました。
施設の入居者さんの中には、兵隊として戦争に行った人、子どもを13人も生んで育てた人、小学校しか出ていなくて字が書けないという人、日本刀を研ぐ仕事をしていた人、洋食屋を60年間も続けた人など、私がこの仕事を選ばなかったら絶対に出会わなかったであろう人とたくさん会うことができました。
私は人見知りをする方なのですが、母が長年この施設で働いているということもあって、『○○の娘です』と言うと、皆さん“警戒心”を解いてくれるので、その点は母に感謝しています」
大学では経済学部に通い、将来はメーカーで商品開発などに携わりたいと考えていたオノさん。彼女が通う大学は、偏差値的にはあまりレベルが高い大学ではなかったが、就職活動は極めてトントン拍子に進んだそうだ。
介護のアルバイト経験がアピールポイントになって、就活に成功!
「就職活動で提出する履歴書や面接では、介護施設でアルバイトしたことを自己PRに使いました。他の受験者と差別化を図ろうと思ったのは事実ですが、机の上で学んだことよりも多くのことを介護施設でのアルバイトで学べたので、それを素直にアピールしようと思ったのです。
それに、施設では自分より遥かに年齢が上の人と常に触れ合ってきたので、面接でも緊張することはありませんでした」
その甲斐あって、オノさんは超大手飲料メーカーの内定をもらったが、彼女の心は揺れているそうだ。
「介護施設で働いて、介護の仕事の面白さを知ってしまったので、本当はこのまま介護の道に進みたいんです。母親は、『介護業界はいつでも入れるから、今はとりあえず内定をもらった会社に入りなさい』と言うんですが……。
就職活動でアピールするために介護のアルバイトをしようなんていう打算的なところは少しもなかったのですが、学生時代に介護の仕事をしたのは、視野が広がってとても良かったと思います。『自分もいつかは年を取るんだ』という当たり前の事実を知るだけでも意味はあると思います」
オノさんは母親のアドバイスに従い、大手飲料メーカーに就職する予定だが、夏休みを利用して介護系の資格を取る予定だという。
アルバイトをしていた介護施設の社長からは、「会社に入って給料をもらったら、給与明細を見せなさい。それよりたくさん給料を払ってあげるから!」と、激しく勧誘されているそうだ。