毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「お年寄りと過ごして気付いた大事なこと」という話題を紹介します。
仕事を通して成長するなら「介護の仕事」がいい?
介護という仕事の魅力を一言で語るのは難しいが、その1つとして挙げられるのが、自分も人間として成長できること。
自分よりも人生経験が豊かな人たちと触れ合うことで学べることは多い。「老人から学ぶことなど何もない」と考えてしまうような人がいるかもしれないが、本当にそうなのだろうか。
関連記事:
介護職に転職してやっと気づいた「過去の自分の愚かさ」
一匹狼で人付き合いは煩わしい。そんな男性が…
都内の訪問介護事業所でヘルパーとして働くアオキさん(31歳・男性)は、これまでずっと自由気ままに“一匹狼”として生きてきたが、ヘルパーに転職したことで、少しずつ考え方が変わってきたという。
「担当しているお年寄りの中に、立派な一軒家で暮らすYさんという女性がいます。Yさんの家には高級な家具や食器、いかにも高そうな絵や壺などがあって、いかにも“ザ・お金持ち”といった感じ。けれどもYさんはいつも退屈そうにしているんです」
金銭的・物質的に恵まれても、精神的に満たされない人がいるのは理解できるが、その理由はアオキさんには容易に理解できないものだった。
「お金はあっても話し相手がいなくて辛い」
「Yさんの不満は、“やることがない”ということなんです。
私はYさんのように、誰にも干渉されずに1人で暮らすのが老後の夢だったんですが、Yさんに言わせれば、『そんな生活はあっという間に飽きる』『ちっとも楽しくない』と言うのです」
Yさんは経済的には恵まれているが、交友範囲が非常に狭く、話し相手もいない。これまで人間関係のデメリットばかり見てきたアオキさんだったが、Yさんの話を聞くうちに、“目が覚めた”という。
「友達を捨てるのは簡単。作るのは難しい」
「例えば楽しいことがあった時って、誰かにそれを話したいものですよね。だからSNSがあれだけ流行っているわけで。誰かに何かを頼まれた時って、面倒だなとも思うこともあるけど、嬉しい部分もある。やっぱり最後は『人付き合い』なんですよね」
Yさんに、『友達を捨てるのは簡単だけど、作るのはとても難しい』と言われたというアオキさん。
「これまで私は、ちょっとでも嫌なことがあると、すぐに関係を切ってしまってきたんですが、そんなんじゃダメだなと思うようになりました」と自分の考えを見つめ直しているという。
「健康な体」の反面教師も…
一方では、利用者が“反面教師”のような例もあるという。
「支援を必要としている人のために介護業界は存在しますが、出来ることなら介護サービスを使用しないで生活できるのが理想ですよね。
色々なお宅を訪ねていると、まったく掃除をしていなかったり、甘いジュースやお菓子ばかり摂取していたり、運動が完全にゼロだったり、『このような生活を送っているようでは、健康でいるのは難しいな』と思ってしまうような方がいます。
介護の仕事を始めるまでは、正直、健康の大切さをまったく意識していませんでしたが、健康に気を使うようになりました」
お年寄りと触れ合うことで、すっかり考えが変わったアオキさんは、周囲からしばしば「雰囲気が変わった」「別人になった」と言われるのだそう。鋭かった目付きもすっかり穏やかになり、同居する両親もとても驚いているそうだ。