毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護士が語る『高齢者の実態』」という話題を紹介します。
「高齢者」の本当の姿って??
人間誰しも必ず年を取るが、身近に高齢者がいないと分からないことは多いもの。映画や小説で描かれる高齢者は、常に沈着冷静で、あらゆる物事に達観していて、含蓄に富んだアドバイスをくれる存在だが、あれは事実に即したものなのだろうか?
物語の“お年寄り像”とは違う?!実際の高齢者は…
都内で訪問ヘルパーとして働くヤスダさんはいう。
「確かに映画などでは、お年寄りが話のカギを握っていることは多いですよね。『○○には絶対近寄ってはならぬ!』とか『私の言う通りじゃったろ』みたいな。
まぁハッキリ言って、そんな人はいません(笑)。みなさん、良くも悪くも普通の人ばかりですよ」
お年寄りに敬意を払うのは大切なことだが、勝手な“お年寄り像”を描かれても迷惑といったところか。
年を取ると人格が変わる?高齢者の実態
ただ、年齢を重ねる上で、人格が変化する人が多いのは事実であるようだ。
「われわれ介護スタッフは、利用者の方の“年を取ってから”しか知りませんが、ご家族に話を聞くと、年を重ねた上での変化には、色々なパターンがあるみたいです。
『昔はとにかく怒りっぽくて、怒鳴り声をあげてばかりだったが、今ではすっかり穏やかになって、孫と遊ぶのが一番の楽しみになっている』
という人がいる一方で、
『若い頃から神経質だったが、いよいよ口うるさくなって困り果てている』という人もいます。
さらに、
『ものすごく活動的だったのに、今では家から全く出ない』
『おしゃべり好きだったのに無口になった』
といった具合に、別人のように変わる人もいるようです」
介護家族がとまどう、老人の「子ども返り」
そして、予備知識が無いと驚いてしまうこと間違い無いのが、「赤ちゃん返り」「子供返り」と呼ばれる一種の退行現象だ。
「認知症の方の中には、行動が子供や赤ちゃんのようになるケースがあります。
誰かの後ろを付いて歩いたり、『足が痛い』だの『背中がかゆい』だのと、かまってもらいたがったり、自分で出来るはずなのに、着替えや歯磨きなどをやってくれとねだったり……事情が分からない家族は、困惑したり怒ったりしてしまうようです。
もちろん、ご家族が世話をできればそれが一番でしょうが、元気だった親や祖父母がそのようになっていく姿を見るのは辛いものです。そういった場合は、ぜひとも我々“プロ”の手を借りて欲しいものです」
「人生まるごと」学ぶことができる介護の仕事
「介護業界で働く人間は、よく
『人間の一生はぐるっと一周、円のように回る』と言います。
生まれたばかりの子は自分では何も出来ず、ベビーカーに乗り、身の回りの世話をしてもらう。一方でお年寄りも、車椅子に乗るようになり、身の回りの世話をしてもらうようになるからです。
大きな意味で『人間』や『人生』について学ぶことができたのは、介護の仕事をしていて一番良かったことです」
老いは誰にでも等しくやって来るが、その対処法は本人には意外とよく分からないのが現実。そういった現実を学ぶことができるのも、介護の仕事の魅力のひとつと言えそうだ。