結局、カフェの経営の検討は一時中断し、新たなキャリアを模索するTさん。6年勤務した特養に辞表を出し、居宅のケアマネジャーとして新たな一歩を踏み出します。とはいえ、さまざまに揺れるTさん。その心境は、読者のみなさんのリアルな気持ちにも重なります。Tさんの言葉や、彼のとった行動に触れながら、みなさんも将来のことを考えてはいかがでしょうか。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Sさん(36歳)の転職経験
大学卒業後、就職せずに2年間バイト生活
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技術者派遣会社に就職、プログラマーとなり、のちにシステムエンジニアへ
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事業縮小のため本社に戻り、営業職に
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ハローワークでホームヘルパー2級を取得
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特別養護老人ホームに就職。6年間勤務する間に介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得
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2015年春より系列の居宅介護支援事業所に異動し、ケアマネとして勤務
将来を深く考えたとき、辞める決心はかたまった
今の自分の立場を変えようと思ったとき、これから何をしたいのか、より深く考えるようになりました。その上で、カフェを一時中断したのも、「それが本当に自分の将来の夢なのか、今すぐやるべきなのか」の疑問にYESと答えられなかったから。今やるべきことはそれではない。今は、もっと介護業界人としてのキャリアを積み、広く深い視点で物事を考えられるようになることが大事なのだ、と気づいたのです。
また、仕事に行き詰まりを感じるようになってからは、介護業界の勉強会や、横のつながりを持つような会にできるだけ参加するようにしました。家と職場との往復だけで、狭い世界しか持っていないのは危険ですし、職場以外の介護職の人たちに、悩みを話してみたいという気持ちもありました。
実際、これも正解でした。認知症の勉強会などに出てみると、自分のケアがまだまだだ、と気づきます。また、同業他社の人たちとつながり合うと、熱い思いを持って介護に臨んでいる人たちが「こんなにたくさんいるんだ!」と驚き、積極的に行動している人たちに触発もされます。同じ職場で我慢をしていることが最良ではないことがハッキリしたとき、僕は6年間勤めた法人を迷いなく辞める決心ができました。
転職にあたっては、インターネットの求人情報をよくチェックしましたね。最初に介護業界に入ったときはハローワークに行きましたが、今は介護専門の求人サイトのほうが情報が豊富だし、自宅でもスマートフォンでも確認できて、便利だと思います。
居宅介護支援事業所に転職
次の職場は、僕を含めて従業員が3人しかいない、居宅介護支援事業所です。実はここ、介護の勉強会で知り合った人に紹介してもらったんです。
最初は、「社員3人の事業所に転職してもいいのだろうか」と、戸惑いもあり、躊躇していました。けれど、何事も経験だと思えましたし、何より、失望感を持ち続けている職場に長くいることが、自分のプラスにはならないと思えました。病院の相談員としてフルタイムで働いている妻が、「行きたいところに行きなよ」と言ってくれたのも、大きかったと思います。
まだ転職して3カ月、覚えることばかりでいっぱいいっぱいで、「仕事が楽しい」と実感するところまでいきません。でも、きっと今の経験や知識が、次のステージで活かされるのだと信じて、今は忙しさに負けないように、がんばっています。
…実家のカフェはもういいのか、って? う~ん、あまり先の話になると、正直言ってわかりませんね。ケアマネジャーは介護保険制度の改正で右にも左にも動かされるし、介護に使える国の蓄えがどんどん減っている中、このあと、介護業界もどうなっていくのか、先が見えませんよね。正直、不安も大きいです。
そう思うと、「ああ、介護業界を捨てて、どこか田舎で自給自足の生活をする人生もあるかなぁ」などと思ってしまう自分もいます。首都圏で高い物価や家賃に引き回されて、何歳まで生きていけるのか。自分でもわかりませんし。
でも、どんな形でも、何かしら高齢者に関わっていきたいし、とりあえず、今は経験を積むことだ、と思っています。介護の仕事には「これでいい」という限界はありません。心と体が元気なうちは、少しでも前進していくべきなのだろうなぁと。今はそんな気持ちでいます。
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