介護の仕事に没頭したい気持ちがあるのに、病気で退職する羽目になる。2回も同じような体験をし、すっかり気落ちしてしまったA・Eさん。今後どうすればいいのか、と悩みます。
でも、介護の仕事はやめたくない……。そして考え抜いた結果、「自分の身体や心の声を聞きながら働く」ことが大切だと思い至ったのです。
やりたいことに向かって、自分らしい働き方をしているAさんに、学ぶことがたくさんあります。
*A・Eさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
A・Eさん(57歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…20年
●介護の仕事に就く前…手芸作家、主婦
●介護業界での転職回数…3回
●いままでの勤務先…訪問介護事業所、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、デイサービス、福祉系専門学校
●保有資格…介護福祉士、介護教員
以前の同僚から「訪問介護をしない?」と声がかかった
デイサービスの後半で発病した甲状腺の病気は、治るまでに時間がかかりました。
身体の病気が原因で心のバランスまで崩してしまい、いつ仕事ができるのかがわからない状態。
「ゆっくり休みなさい」と言われるほどに、焦燥感で辛くなりました。
「やりたい」気持ちは十分あるのに、身体や心がついていかない。これが一番厳しいな、と思いました。
少し体調がよくなったころ、最初に努めた社会福祉協議会の職員だった方から連絡がありました。
介護保険が導入され、社会福祉協議会の役割も変わり、退職することにした、と。
「でも、訪問介護の仕事はやめたくないから、NPO法人の訪問介護事業所を立ち上げたの。体がしんどいのはわかっているから無理しなくていいけど、短時間の勤務から始めてみない?」
うれしい申し出でした。
体調を考えながら働ける環境なら、気持ちも少しラクです。
二つ返事でOKし、最初はヘルパーから始めました。そして現在までの10年以上働き続け、現在は管理者兼サービス提供責任者(サ責)として勤務しています。
こんなふうに、辞めた職場の人から声がかかる私は幸せだな、と思います。
私はどの職場も円満退社だったので、いつでも退職した事業所を訪ねることができていました。
仕事を通して出会った方々とは退職後も交流があり、多職種連携へと繋がっています。
こんな関係を築ける転職はいいなぁと、我ながら思います。
辞めるときは、立つ鳥跡を濁さず。事業所の悪口を周囲の人に言ったり、内情を暴露したりしない。
そんな自分なりのルールを作って転職することが、あとになってよい結果として戻ってくることもあります。
若い人たちにもすすめたいですね。
若い人たちに介護の魅力を伝えるため、講師の仕事も
以前の職場の同僚に誘われて勤務した法人には、措置時代から介護に関わる、力のある人たちが集まっていました。
ほかの事業所が「困難なケースだからうちでは無理」と断るかもしれない利用者さんでも、涼しい顔で引き受けられるようなスキルとパワーがあり、利用者さんも私たちが来るのを心待ちにしていて、いい関係を築くことができます。
ケアマネジャーや地域包括支援センターなどにも喜ばれ、ヘルパーとしてもサ責としても充実した仕事ができました。
ただ、「あそこにはデキるヘルパーがそろっている」と評判を得れば得るほど、困難ケースが舞い込むようになります。
ほかでは対応できないようなケースを、地域包括もケアマネジャーも私たちに振ってきます。
「できない」とは言えないし、現にできてしまう。ますます喜ばれ、ますます困難ケースが舞い込む……。
正直に言って、「働けば働くほどもうからない」事態になりがちでした。
ヘルパーが訪問することを忘れてしまう認知症の利用者さんの担当になれば、訪問しても「いない」ことがしばしばです。家に帰れなくなっているのではと探すこともあります。
でも、探すことへの介護報酬はないので、収入になりません。管理者やサ責の仕事は介護報酬を生み出さないので、忙しくなるだけです。
銀行の印鑑が見つからないと言われては一緒に探し、見つからなければ印鑑の変更を銀行にお願いしに行く。
だれかがやらなければならないことをやっているわけですが、ここには料金が発生しない。
意義があるけれど、事業の発展に結び付かないところに、ジレンマがありました。
介護の実践を積めば積むほど、何故と考えることが多くなりました。
そんな中、「今だけのことを考えるのではなく、介護の未来も考えよう」という気持ちが高まってきました。
実践を理論と結びつけるために、福祉系の大学に入って介護を学び直すことにしました。
働きながら学ぶことは大変でしたが、多くの学びを得ることができました。
そして、今は、管理者兼サ責の仕事をしながら、福祉系専門学校の講師も務めています。
これから介護の世界に歩んでいく若い人たちに、介護の楽しさや意義をしっかりとわかってもらいたいという気持ちからです。
介護の仕事はおもしろい、自分も成長できる。そのことがストレートに伝わり、介護の仕事に誇りをもってもらえるように。
若い人たちをより良い道に導くことも、長くこの仕事に従事してきた者の責任だと思っています。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*A・Eさんの「私が転職した理由」…
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