◆訪問介護事業所(正職員)→訪問介護事業所(登録ヘルパー)
S・Tさん(女性・47歳)
介護業界での経歴詳細
●訪問介護ヘルパー(正職員)(勤務期間:5年/年収約360万円)
●訪問介護ヘルパー(登録ヘルパー)2事業所掛け持ち(勤務期間:8年/合計月収約48万円)
保有資格:ヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)
家族構成:夫、長女(26歳)、長男(24歳)
*S・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目、
2回目(前回)はこちら
【登録ヘルパーの働き方】シフトの効率化とレベルアップをサ責に提案!

2つめに登録した訪問介護事業所では、回ってくる仕事の効率が悪く、サービス提供責任者(サ責)にシフトの提案をしているうちに、シフトの組み方を相談されるようになりました。
私はもっと働きたいのになかなか仕事を入れてくれないのには理由があり、他の登録ヘルパーさんがのんびり働いていて、少しでも仕事を増やすと、「そんなにできない!」とクレームを入れられるからだということがわかりました。
「Sさんも仕事を詰め込むと大変かなと思って……」と。
でも、そんなことをしていては、ヘルパーの人数ばかり増えてうまく利用者さんの要望に応えられません。
そこで、『ヘルパーの人数を増やすのではなく、訪問に行ける時間が多い人を雇った方が質のいいサービスを提供できるはず』とサ責に提案。たくさん働ける人を雇おう、ということになりました。
求人を出すだけでなく、私が以前働いていた事業所での知り合いにも積極的に声を掛けていきました。
当時、管理者をしていた知り合いには「正職員でないと将来が不安」「登録ヘルパーでは十分な稼ぎにはならないんじゃない?」などと言われましたが、私が登録ヘルパーとして月に48万円の収入があること、社会保険もあることを説明すると驚いて、すぐに「やってみようかな」と転職してきてくれました。
また、この事業所には、私の娘もヘルパーとして登録しているので、とにかく私を含めて3人で、どんどん仕事をこなしていこうということになりました。
そうしているうちに、噂を聞きつけて他の事業所の登録ヘルパーからも「時給はいいし、効率よく仕事ができるんでしょ。私も登録させて」と問い合わせがきました。
こうしてだんだん力のあるヘルパーが集まってきたのです。
【効率よく働く!】登録ヘルパーの1日の訪問スケジュール例
自分もシフト調整に関わりながら仕事を組み、毎日積極的に働いていた頃の1日のスケジュールをお伝えします。
7:00~ 訪問1件目。身体介護でモーニングケアを行う(60分)。その後、自費の介護を30分プラスする形で、本人のやってほしいことを支援する。
9:30~ 訪問2件目。身体介護と生活援助を行う(90分)。排泄介助、清掃、洗濯などをこなし、ともに昼食を作ってあらかた片付けるところまでが担当。
11:00~ 次の訪問先まで1時間あるので、さっと昼食をとってから移動。おにぎりやサンドイッチなどを買って簡単に食べることが多い。
12:00~ 訪問3件目。頸椎損傷の方の身体介護へ(60分)。ベッドから車椅子に移乗してキッチンへ誘導。夕食のためにともに調理を行い、体を拭いてベッドに。経管をつなぎ、安全を確かめる。
14:00~ 訪問4件目。介護保険の身体介護と生活援助に、自費分の介護をプラスした支援を行う(120分)。見守り、胃ろうのケア、たん吸引。たん吸引などを行う資格は、正職員で勤務していた頃に取得した。訪問看護師と連携して働くことが多かった現場で、さまざまなことを教えてもらえたことが現在でも仕事に役立っている。
17:00~ 訪問5件目。身体介護(60分)。オムツ交換、清拭、グルーミングケアなど。
18:30 いったん帰宅。家族のために夕食を作り、一緒に食事をとり、片付け。どんなに忙しくても夕食は家族ととるのが我が家のルール。夫は自営業なので、たいていは夫とともに食卓を囲み、子どもたちも仕事がなければ一緒に食事をしている。
20:00~ 訪問6件目。身体障害のある女の子の入浴介助(60分)。
*日曜日は午前中のみ2~3件の訪問。水曜日は休日。
【現在の仕事の悩み】事業所の方針と自分の思いが一致しない
「仕事が遅い人に合わせた方がうまくいく」って本当?
効率よく仕事を入れ、こなしていると、高収入が望めます。
けれど、現在の訪問介護事業所で登録ヘルパーをしているうち、別の課題も見えてきました。
訪問サービスの計画書があいまいで、現場での働き方に戸惑うことがあるんです。
例えば、60分で十分に終わる内容なのに、90分の計画になっている、という場合。
予定通りのケアが終わったあとの残りの30分、何かをしてさしあげたいけれど、サービス計画に示されていないことはできません。
訪問現場で手持ち無沙汰になってしまって困るので、サ責に相談したところ、「ケアマネジャーの意向だから」とのこと。
実は、そのケアマネジャーを間接的に知っていたので、サ責に許可をもらって紹介してもらい、話をしたら、「そんなにあくせく働かなくてもいいじゃない」という返事。
「あなたのようにバリバリ働く人ばかりではないのよ、ゆっくり働きたい人もいるの。一番遅い人に計画を合わせたほうがうまくいくでしょう?」と。
事業所の考え方と合わない!ケアに対する思いの違い
働くヘルパーの都合に合わせて計画を立てる、という考え方は理解できる部分もありますが、釈然としない部分もありました。
誰のためにサービスを行っているのかと考えると、わからなくなる。
利用者さんは、毎日の生活の中で、解決してほしい課題がたくさんあります。
でも、サービスの時間の中で、ほんの少ししかその課題を解決できなければ、残った困りごとはどうするのでしょうか。
手早い人とそうでない人がいるのはわかりますが、メリハリをつけてケアプランを作れないのかと疑問を感じました。
自分の理想の介護をするには…「事業所の立ち上げ」しかない?!
また、私と娘、引き抜いてきた女性の他のヘルパーは、技術向上に向けた意識はやや低いと感じています。
研修も特にない事業所では、自分から学ぼうと思わないと、新しい技術を会得することはできません。
私は訪問看護師から学んだり、障害者支援の事業所の方から障害のある人のケアを学んだり、体系的でないにしても、学ぶ機会を作ってきました。たん吸引の講習も受けて、扱える資格も得ています。
旧態依然とした訪問介護を続けていては、未来はないと思い、研修やテキストを他のヘルパーさんにも紹介しているのですが、以前から働いている先輩ヘルパーさんたちにはなかなか受け入れてもらえません。
いち登録ヘルパーとしての立場で、これ以上口出しをすることができず、もやもやとしてきました。
登録ヘルパーになったばかりの頃は、「お金さえもらえればいい」と思っていたのですが、次第に「ヘルパーという仕事を通して、さまざまな出会いをし、社会貢献をしたい」と考え始めると、今の働き方で本当によいのか、疑問が大きくなってきました。
私は47歳、まだまだ働けます。
この元気なときに、もっといい仕事をしたい。
胸を張って「訪問介護はすごくいい仕事だよ」とみんなに言いたいと思うようになり、それには、自分が思う介護ができる事業所を立ち上げることではないかと、思い始めました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
最終回の次回は、これまでの経験をステップに、自ら訪問介護事業所を立ち上げたいきさつと、今後の展望について伺います。
次回「訪問介護事業所を立ち上げ!職員が働きやすい環境って?~転職体験Sさん4」は、2月12日に公開予定です。
*S・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
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