介護業界でがんばる人たちの転職体験をお届けするこのコーナー。
長年勤務した介護老人保健施設(老健)から特別養護老人ホーム(特養)へ転職したE・Wさんの体験談を、全4回の連載で掲載します。
第2回では、8年のブランクを埋めるかのように精力的に働きながら、子育ての時間も確保するEさんの、働くママとしての姿をお伝えします。
◆介護老人保健施設(正職員・主任)→特別養護老人ホーム(正職員)
E・Wさん(女性・42歳)
介護業界での経歴詳細
●介護老人保健施設(正職員・主任)(勤務期間:16年/月収約32万円+ボーナス約2.2か月分)
●特別養護老人ホーム(正職員)(勤務期間:3か月/月収約27万円+ボーナス約2か月分)
保有資格:介護福祉士
家族構成:夫、長男(22歳)、長女(17歳)
*E・Wさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目(前回)はこちら
【出産後に復職!】8年前に辞めた老健の雰囲気は……?
母が勤めていた医療法人内の介護老人保健施設(老健)で介護職として3年ほど勤め、妊娠・出産を機に退職した私。
その後、8年ほど専業主婦をしていましたが、早く職場復帰したいと思っていました。
父が60歳で長年勤めた会社を退職したタイミングで、復職。父には申し訳なかったけれど、自分としては介護現場に戻れたことがうれしくて胸がいっぱいでした。
オープニングのときの仲間は10年以上たって数人辞めていたけれど、和気あいあいとした雰囲気はそのまま残っていたし、尊敬していた上司や話をわかってくれる管理者も在任していました。
改めて、この職場は人が温かくいい職場だな、と思いました。
それくらい居心地がよく、スタッフひとりひとりの事情をわかってくれているのだとも感じました。
退職して8年もたった私を快く受け入れてくれる職場に感謝しながら、正職員としてがんばって働こうと、決意も新たにしました。
【復職後の労働条件は?】優先したかったのは「土日休み」
出産後、復職時の希望は『土日休み』
私が復職するにあたって法人にお願いしたのは、「できるだけ土日に休みたい」ということ。
子どもたちはまだ小学生と保育園児。
学校は土日休みですし、子どもの休日に合わせまだ一緒に過ごしたいと伝え、隔週で土曜日は休み、日曜日はすべて休みにしてもらいました。
老健で夜勤も担当。育児との両立は大丈夫?
そのかわり、他のことは職場の意図に従いました。
「できる範囲で夜勤に入ってほしい」と言われたので、週末お休みして戦力になれない代わりに、月に8~9回夜勤に入ることもありました。
周囲には「それこそ子どもがいるのに大丈夫?」と言われましたが、うちの職場の夜勤は早朝帰れて、夜勤明けの翌日は休日でした。
子どもたちは、夜勤の日は父母の家に泊まり、夫の休日前夜は夫が仕事帰りに実家にお迎えに行き、子どもたちと過ごします。子どもの休日が夜勤明けの日は、子どもたちが起きたころには帰宅できました。
平日の夜勤明けの日は、父に保育園に送ってもらい、夕方には私が保育園や学童に迎えに行ける。その日の夜はずっと子どもたちと過ごせますし、翌日は休みなので、子どもた
ちと存分に一緒にいられてかえって好都合だと思っていました。
老健の正職員としての給料は?
給料についても、こちらからの要望は何も言いませんでした。
一からやり直しのつもりだったので。
夜勤手当も入れて、手取り20万円くらい。ボーナスは約2か月分。
「夜勤をそんなにしているにしては、少ないね」と人には言われましたが、お金ではなく、とにかくこの条件で働ける場があることがありがたかったのです。
【復職後の思い】復職後に感じた介護現場の変化とは
休職中にルールが増えていた介護業界
8年たって現場に復職してみると、介護業界はいい意味でも悪い意味でも「施設らしくなった」と感じました。
以前は、介護の内容も身体介護と生活支援があいまいな部分がありました。
「制度上ここまでしかできない」と断ることなく、介護職がその場の状況で判断して、必要ならやってしまう、という感覚だったと思います。
けれど、介護保険制度にのっとって仕事をするようになり、決め事が増え、禁止事項も多くなり、会議が増えて責任問題が問われるようになりました。
あいまいなことは許されないし、この時間にこういうことをやる、ここから先はやらないほうがいい、というような線引きがはっきりしました。
それに、私が最初に就職した頃は、事故報告書もありませんでした。
小さなけがなどは、ご家族に面会時に伝え、近所の人とのやり取りのような感じでだったんです。
けれど、介護業界が社会から期待されるようになると、そうはいきません。
ルールをしっかりと作り、だれが見ても間違いのない介護をするよう目指すことになっていきました。
利用者さんの気持ちを優先!叶える介護ができる施設でのやりがい
「決め事やルールが増える」と聞くと、やりたいケアができないんじゃないかと思うかもしれませんが、きちんとしたルールがあれば正しいケアができると思います。
しかも、この職場は何よりも利用者さんの気持ちを優先し、職員は家族のように利用者さんと関わり関係性を作ろうとする施設でした。
その理念は私が復職した後も引き継がれていて、訳あって退所する利用者さんが、泣きながら「私のうちはここ、どこへも行きたくない!」と言ったり。
利用者さんのご家族が、「ここが一番よかった」とか「家ではこんな楽しそうな顔見たことない」と言ってくださったり。
私たちも、そんな言葉に励まされて毎日仕事に取り組んでいました。
【育児と仕事の両立の秘密】私の現場復帰を支えてくれたのは……
夜勤もあるフルタイムの仕事をしながら、小さな子どもを育てるのは、私ひとりではとてもできません。
家族にはかなり助けてもらいました。
母は「私とあなたでどちらかが家にいる時間を作るために、休みは重ならないようにしましょう」と言ってくれたり、私が夜勤の日には、家にいて子どもたちの世話をしてくれました。
疲れているのに申し訳ないと思ったけれど、むしろ、孫たちがお泊りするのを喜んでくれていました。
父は日中も家にいたので、子どもたちとたくさん遊んでくれました。
畑仕事が定年後の趣味だったので、子どもたちを一緒に畑に連れて行き子どもの好きな果物を育てたり収穫したり楽しませてくれていました。
夫は私が仕事で遅い日には子どもたちを迎えに行ってくれて、食事し寝かしつけてくれていました。
私が働くことを応援してくれて、不満を口にしたこともなく、ありがたかったですね。
そして姉が実家近くに住んでいて、うちの子どもたちと同年代の子どもがいたので、「一緒に遊ばせたほうが楽だから」と言って、かなり助けてくれました。
自宅でお料理教室をやっていた姉が、子どもたちを集めて料理を教えてくれるなど、子どもたちにとっては年の近い友達と遊べて楽しい時間だったようです。
家族全員のサポートがあってこそ、夜勤バリバリの介護職を続けてこられたと思っています。
【復職後のワークライフバランス】昇進よりも、子どもと過ごす時間を優先
老健に介護職として復職した時には、介護保険制度が始まった後だったので、介護福祉士資格を取得することが当面の私の目標になっていました。
受験資格が得られたらすぐに試験を受けて、介護福祉士資格を取り、ますます仕事にのめりこんでいきました。
復帰して5年くらいたったころには、役職について欲しいと言われました。
そうなると、現場に出る時間はそれまでと変わらないけれど、出席しなければいけない会議が増えます。
会議が開催される日は、夜勤明けや休みの日でも出勤しなければなりません。
そのころはまだ、上の子が中学生、下の子は小学校低学年。
会議での出勤が増えると、子どもたちとの時間は奪われてしまいます。
これ以上、家にいる時間を少なくしたくなかったので、昇進はありがたかったけれど、お断りしました。
でも、その時はそれでよかった。
そのときどきで何が一番大切か、どう時間使っていくかを考えながら働くことは、長く働くためにも大事だと思います。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、老健に復職後に、Eさんが感じたやりがいと、老健でのケアに対する悩み、転職
を意識したきっかけについてお伝えします。
次回「老健のケアでの成功体験を、他の施設にも広めたい!~転職体験Eさん3」は、4月29日に公開予定です。
*E・Wさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目(前回)はこちら
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