一般的に、正社員は安定した働き方ができるというイメージが定着しています。そのイメージから、正社員として働くことを望む人は多いですが、実際にはどういう働き方なのか本当に知っていますか?
契約社員や派遣との違いは?正社員にもデメリットがある?など、今回は、正社員の定義や正社員になるまでの道のり、メリットとデメリット、その他の雇用形態との比較などについて紹介します。
正社員とは
正社員とは一般的に、
期間を定めずに雇われている労働者であって、就業場所において正規として雇用される者を指します。
雇用期間の定めのほか、1日の所定労働時間が8時間・1週間の所定労働時間が40時間でなければ正社員ではないといわれることがあります。しかし、正社員はあくまでも
雇用形態のことをいうため、仮に
1日の所定労働時間が短かったり、1週間の所定労働日数が少なかったりしても事業所によっては正社員として扱われることがあります。
正社員のメリットとデメリット
【正社員で働くメリット】
① 雇用期間に定めがない
正社員の最も大きなメリットは、
雇用の期間に定めがないことです。正社員として採用されれば基本的に定年まで働き続けることができます。
雇用が安定していることは、自らの将来設計をするうえでも大きなメリットになります。
② 収入が安定している
正社員は、役割基本給などの
基礎的な給与が安定しており、各種諸手当についても非正規職員よりも金額が高く、正社員のみが対象となる諸手当を設けている事業所もあります。
また、賞与の面でも非正規職員よりも多く支給されるなど収入面が安定します。
③ 福利厚生が充実している
介護業界の場合は特に介護福祉士などの資格取得に際し、事業所が受講費用を補助してくれる場合があります。その場合、雇用が安定している正社員に限定しているなど、正社員だからこそ受けることができる福利厚生の恩恵があります。
【正社員で働くデメリット】
① 勤務に対する自由度は低い
正社員の場合は、就業規則に則った勤務シフトとなるため、
就業形態を自由に調整することは難しいです。また、非正規職員よりも責任ある仕事を任されることが多いため、
長期休暇が取りにくい、転勤があるといった場合があり、勤務についての自由度は低いといえます。
② 人間関係に悩むことがある
正社員だと収入面が安定している反面、転職・退職したくとも安定した収入を失ってしまう可能性があるため、なかなか動けないことがあります。
事業所での人間関係で悩んでいたとしても、転勤がない限りは同じ人間関係の下で働かなければなりません。
ただ、退職を考えるほどに人間関係で悩んでいるのであれば、決して無理をせず、所属長や労働基準監督署、その他の関係機関などに相談するとよいでしょう。
③ 副業ができない
昨今、働き方の多様化やより多くの収入を確保することなどを目的に副業をしている人も多くいます。
しかしながら、正社員に関しては自社での業務に支障をきたす恐れがあるため、
副業を禁止している場合があります。
特に介護関係は不規則勤務であり、利用者の命を預かる責任重大な仕事であることから副業を禁止する傾向が強いです。
正社員と契約社員の違い
「契約社員」とは、正社員と同じような就業条件ではあるものの、
期間を定めて雇われている労働者(契約期間は1回につき最大で3年まで)のことをいいます。各事業所によって名称が異なり、単に有期契約職員としている場合や準正規職員、パートナー職員など様々です。
契約社員は有期契約ではありますが、正社員と同様の就業条件であることから、同じ職務であれば、基礎的な給与面について正社員とほぼ変わりありません。
契約期間を設けることで、事業所としては
今後この職員を正社員に登用するのに相応しい人材かどうかを見極めることができます。また、職員側にとっては
働きやすい事業所であるかや、
企業風土が自分にあっているかなどを長い期間かけて判断することができます。
また、契約社員は基本的に、契約により定められた勤務地が就業場所となるため、
正社員とは違って転勤がないことがほとんどです。
このように、一見すると契約社員の方が好条件のように思うかもしれませんが、
デメリットもあります。
有期契約ということは、契約期間が満了したのち更新されなければ退職となります。そのため、
契約期間がない正社員に比べて雇用が不安定であるといえます。
また、契約社員はあくまでも労働契約書に基づいた条件で働くことになるため、
契約期間中における昇進や昇給といったものは行われません。これらは、契約期間が満了したのちに判断されます。
正社員と派遣社員の違い
「派遣社員」とは、労働者が人材派遣会社に登録して雇用契約を結び、派遣社員として別の事業所で働く雇用形態のことをいいます。
業務の指示は派遣先の事業所が行い、
給与は派遣元である人材派遣会社が支払います。
正社員のように事業所が直接雇用する形態ではなく、あくまでも
派遣元である人材派遣会社が雇用主となるので、正社員のようにその事業所に期間を定めずに雇われるということはありません。また、派遣社員として同じ派遣先の事業所に対し派遣できる期間は
原則として3年が限度となります。
派遣社員のメリットは、労働者が希望する就業条件に対し人材派遣会社がそれに合わせた派遣先事業所を選定してくれることにあり、
労働者自らが就職場所を探す必要がないということです。
また、派遣先事業所での派遣期間に限りがあるので、
色々な事業所を経験することができます。特に介護に関しては入所型、通所型、訪問型など様々な形態が存在するので、より多くの事業所を経験したい方にとっては、派遣は魅力的な働き方の形態であるといえます。
ただし、
派遣社員にはデメリットもあります。それは契約社員と同様に、常に有期契約を繰り返すことになるため、
雇用が不安定になることです。また、有期契約の上限が3年と定められていることから責任ある仕事を任される可能性は低く、就労に関してのモチベーションを維持することも難しいといえます。
正社員になるには?
正社員になるためには、
求人で正社員を募集している事業所に応募するか、
有期契約職員から正社員への登用制度により正社員になるかのいずれかの方法になります。
正社員求人は有期契約職員よりも人気があるため、競争倍率が高く、採用基準も厳しくなります。正社員を募集している事業所に応募する場合は、筆記試験対策や面接試験対策などをしっかりと行い、試験に挑まなければなりません。
それに対し、比較的採用基準が低く、競争倍率も低い有期契約職員であれば、採用されたのち
正社員登用の条件を満たすよう一生懸命働けば正社員登用への道が開けます。
しかしながら、
事業所が常に正社員登用を行っているとは限りません。希望者が複数名の場合は選抜試験が行われることもあります。そのため、正社員として相応しい人材であることをアピールできるようにしなければなりません。
「常勤」「非常勤」との違いは?
介護の業界では
「常勤」と
「非常勤」という枠組みで区別を行うことが多々あります。常勤・非常勤と、正社員は何が違うのでしょうか?
実は、正社員や有期契約職員などの括りと、常勤・非常勤の括りは、厳密には別物として取り扱われます。
正社員やパート職員が
『雇用形態』を意味しているのに対し、常勤や非常勤は
『就業形態』を意味しているからです。
つまり、
常勤とは
「1日の所定労働時間が8時間であって1週間の所定労働時間が40時間である者」、いわゆる
フルタイム勤務者を指しており、それ以外は非常勤ということになります。
それに対し、
正社員は
「雇用期間の定めがない者」を指しており、雇用期間に定めのある者は有期契約職員などとなります。
そのため、たとえばフルタイム勤務者であるパート職員は常勤職員とされ、正社員でも短時間勤務者は非常勤職員とされます。
まとめ
正社員であることは、実生活においても安定的な収入が得られているということで社会的な信用度も高いため、多くのメリットを享受することができます。
一方で正社員として働くことに伴うデメリットも存在します。
どの雇用形態が自分に合っているのかを慎重に考えた上で、今後の働き方を考えてみるといいでしょう。