「年俸制」という言葉を聞くと、野球やサッカーなどのプロスポーツ選手や、外資系企業などで導入されているイメージが強く、介護業界とは縁遠い話と思う方が多いかもしれません。
しかし、実際に年俸制を導入している介護事業者も増えているようです。
そこで今回は年俸制の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
年俸制とは、月単位ではなく年単位で社員の給与を計算する給与体系のことを言います。
読み方は「ねんぽうせい」です。
多くの企業は月単位で給与を計算する月給制を採用し、12か月の月給とボーナスなどを合計して年収が決定します。
年俸制の場合は先に1年間に支払われる給与額を決定し、そこから毎月給与が支払われるという違いがあります。
年俸制の場合は1年分の給与が一度に支払われるのかというと、そうではありません。
年俸制であっても、給与は1か月単位に分割して支払わなくてはいけないという労働基準法上の決まりがあるため、給与自体は月給制と同じように毎月支払われます。
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。(引用元:労働基準法第24条2項)
年俸制と月給制との最大の違いは、年間の総収入があらかじめ決まっているか、決まっていないかの違いです。
年俸制では1年間の給与額が先に決定しているため、その年度の会社の業績などに関係なく給与額決定当初に予定していた額がそのまま給与となります。
月給制の場合は、基本給や手当が年度途中で変わる場合や、ボーナスが削減もしくは支払われないということもあり、年間の給与額が固定していません。
年俸制の場合は社内での活躍が次年度の年俸に反映されるため、成果主義と結びつきやすいのに対し、月給制の場合は年功序列による年齢や勤続年数が反映されやすい制度になっています。
年俸制でも残業代は支払われます。
年間の給与額が決定していても、残業代に関しては支払わなければいけないと労働基準法で義務付けられています。
年俸制を採用していても、時間外労働をすれば残業代は発生するのが基本です。
ただし、固定残業代として「みなし残業時間」が適用されている場合、設定された時間外手当をあらかじめ年俸に含めて支給することがあります。
たとえば、1か月30時間をみなし残業時間とした場合、固定残業代として1か月あたり10万円が年俸に含まれて支給されるなどです。
この場合、残業時間が固定残業代の上限である30時間を超過した場合には、固定残業代に上乗せして残業代が発生する仕組みになっています。
年俸制でもボーナスが支払われる場合があります。
年俸制の場合はボーナスも含めて給与額が決定しているので、ボーナスは支払われないという認識の方も多いようです。
しかし、年俸で定められた金額とは別にボーナスが別途支払われることもあります。業績などに応じて年俸に上乗せしてボーナスが支給されるパターンなどです。
それとは別に、あらかじめ定められた年俸を12等分して毎月給与として支払うのではなく、年俸からボーナス相当分を切り離し、別途ボーナスとして支給。残った年俸分を12等分して支給するということもあります。
この場合は、ボーナスとして毎月の給与と別に受け取ることができますが、月の給与とボーナスを切り離して支給しているだけなので、労働基準法上はボーナスとしてはではなく年俸の一部とみなされます。
給与の受け取り方法によって、働く上でのメリットとデメリットはあるのでしょうか?労働者側から見た年俸制のメリットとデメリットを解説します。
■年俸制のメリット
年俸制のメリットとしては、年俸制は成果主義と結びつきやすく、評価に応じた報酬を得ることができるという点があります。
月給制では年齢や勤続年数による基本給がベースになるため、大幅な給与のアップは見込めません。
その点、年俸制であれば前年の評価によっては年齢・勤続年数に関わらず高い給与を手に入れることも可能です。
■年俸制のデメリット
一方で、年俸制によるデメリットもあります。
社内で高い評価を得られなかった場合は、年俸額が下がる可能性があります。基本給が減らない年功序列の月給制との違いがここにあります。
年俸が下がれば、モチベーションを維持することも難しくなり、さらに成果をあげることが難しくなる負のスパイラルに陥りやすくなります。
会社からの評価で給与が減額されるということもありえるのが年俸制のデメリットです。
年俸制の仕組みとメリット・デメリットなどについて解説しました。
実力主義でもらえる給与の額が大きく異なる年俸制は日本の風土とはなじみにくいという声もあります。
ただ、自分の実績や成果が直接給与に反映されるのであれば、大いにモチベーションにつながります。
介護業界でも効率化・成果重視の風潮が強くなり、その結果年俸制を導入する事業者も増えています。
目に見える成果という形を残しにくい介護という仕事、評価の仕組みや移行に向けてのプロセスをしっかり構築していくことが重要になるでしょう。
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