新天地への転職を夢見て仕事を辞めてもなかなか次の仕事が決まらない……
退職後の「ブランク期間」ができることが気になって、転職活動がうまく進められない、ということはありませんか?
『仕事を辞めてから転職活動をしたい』という方向けの支援制度「就業手当」について、制度の仕組みや支給の条件、受け取れる金額などをご紹介します!
失業手当などと比較し、メリット・デメリットなどを確認して、ぜひあなたの転職活動成功に役立ててみてください。
就業手当とは
就業手当とは、基本手当(いわゆる
失業手当)の支給期間を一定期間以上残して、常用雇用(期間を定めない雇用、1ヶ月以上の期間での雇用)以外の形態で就業した時に受け取れる手当です。
退職後の再就職で正社員など安定した就職には至らなかったものの、
非正規雇用として早期に再就職した方をサポートするための制度が「就業手当」です。
失業手当には支給期間(給付日数)が決められており、早期に再就職すると支給期間が残っていても失業手当は受け取れません。
ですが、就業手当は
就業後も、支給残日数分の失業手当の代わりに受け取ることができる手当で、賃金の上乗せ的な意味合いがあります。
再就職手当との違いは?
正規職員のように長期間安定して雇用される場合が「再就職手当」の対象になり、派遣社員・パート・アルバイトのような雇用期間が短く、不安定な雇用である場合が「就業手当」の対象となります。
再就職手当は、基本手当(失業手当)の受給資格のある方で
基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あれば、基本手当の60%から70%の金額を支給残日数分一括で受け取ることができます。
就業手当は、
基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上あるときに、基本手当の30%を就業日数分受け取ることができます。
なお、年齢によって1日当たりの支給額の上限が決められており、60歳未満は1,836円、60歳以上65歳未満は1,485円となります。上限額は毎年8月1日に改定されます。
再就職手当と就業手当の両方を受給することは可能?
就業手当は、基本手当の受給資格がある方が
再就職手当の支給対象とならない雇用形態で就業した場合に支給されるものになります。また、就業手当を支給してもらうには、雇用期間が1年未満でなくてはなりません。
一方で、雇用期間が1年以上の場合はパートやアルバイトなどの非正規雇用であっても再就職手当が支給されることになります。
両者の決定的な違いは
雇用期間。同時に2つの条件を満たすのは不可能と言えるため、
再就職手当と就業手当の両方を受給することは難しいでしょう。
就業手当の受給条件
就業手当は、以下の6つすべての条件を満たさなければ支給されません。受給条件を確認して、自分が条件を満たしているかチェックしてみましょう。
<条件1>就業日の前日における基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上であること
就業手当は、基本手当の支給日数に余りがなければ受けることができませんが、支給残日数さえあれば必ずしも受給できるものではありません。
支給残日数が基本手当の所定給付日数の3分の1以上で、かつ45日以上あることが必要です。
<条件2>1年を超えて引き続き雇用される見込みがないなど、安定した職業に該当しない就業
雇用期間が1年以下であったり、雇用契約の更新が見込まれない派遣契約などで再就職手当の対象とはならない雇用となったりした場合のことを指します。
なお、就業手当における就業とは以下の要件を満たしたときのことをいいます。
・ 契約期間が7日以上
・ 週の労働時間が20時間以上
・ 1週間に4日以上働くこと
<条件3>待機期間が経過した後に就業した
失業手当は、離職票をハローワークに提出して求職の申し込みをしてから7日が経たなければ支給が開始されません。
就業手当の支給を受けるためには、基本的に失業手当の受給を受けることが条件になるため、この7日間の失業手当の待機期間を満了後に就業することが条件となります。
<条件4>離職前の事業主に再度雇用されたものでない
以前働いていた会社に再雇用されても、就業手当の支給対象にはなりません。前の会社と密接に関わりのある関連会社に雇用された場合も同様です。
<条件5>給付制限の場合、待機期間満了後1ヶ月間はハローワークまたは厚生労働大臣の許可・届出がある職業紹介事業者の紹介により就業した
給付制限とは、自分の都合で退職した場合や懲戒解雇された場合などでの失業手当の受給において、待機期間7日間のほかに設けられる失業手当が支給されない期間(1ヶ月から3ヶ月)のことをいいます。
この給付制限期間中における就業については、待機期間満了後1ヶ月間はハローワークまたは厚生労働大臣の許可・届出がある職業紹介事業者の紹介でなければなりません。
<条件6>受給資格決定日(求職の申し込み)前に採用が内定していた事業主に雇用されたものでない
ハローワークで求職の申し込みをする前からすでに採用が決まっていると失業の認定がそもそもできないため、就業手当の支給の対象にはなりません。
就業手当の受給額は?
金額の目安・もらえる期間など
就業手当は、就業した日数に応じて支給されます。賃金の上乗せ的な性質があるため、
1日に受け取れる金額が最大で1,836円(60歳以上65歳未満の場合は1,485円)と決して多くはありません。
例えば支給残日数が45日で就業日数も同じ場合は、1,836円×45日で82,620円(60歳以上65歳未満の場合は66,825円)となります。
支給対象期間に、引き続き同じ事業所に就業している場合について、雇用契約期間に属する日数分が支給されます(就業した最初の日の前日の支給残日数が上限)。
就業手当の計算式
就業手当の支給額は、支給対象期間中の各就業日について、
基本手当日額(失業手当の1日の給付額)の30%となります。
就業手当=基本手当日額×30%×就業日
※ 基本手当日額の計算方法は、原則として離職の日以前の6ヶ月における毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額に給付率(約50%から80%)を掛けた金額になります。
※ 基本手当日額の30%の金額については小数点以下を切り捨て、その後に就業日を掛けることになります。
※ 1日で受け取れる上限金額は「基本手当日額×50%×30%(60歳以上65歳未満は基本手当日額×45%×30%)」です。(2021年8月1日現在)
就業手当の計算シミュレーション
《Aさん》
離職時の年齢:35歳
勤続期間(被保険者であった期間):8年
自己都合の退職
離職後は基本手当の日額5,000円を15日間受け取り、3カ月限定の季節従業員として50日就業した場合。
基本手当の所定給付日数:90日(被保険者期間10年未満かつ65歳未満、一般に該当)
基本手当の受給日数:15日
基本手当の支給残日数:75日(90日-15日)
就業手当の日額は、
「基本手当の日額の30%」で
「上限1,836円」となります。
●就業手当の日額=5,000×30%=1,500円
(上限を超えていないため、日額は1,500円で計算)
支給期間は、再就職後の就業日数分で、基本手当支給残日数まで支給されます。
Aさんの場合、就業日数(50日間)が基本手当の支給残日数を上回っていないため、
50日分が支給されます。
以上より、Aさんの就業手当の支給額は
1,500×50日=
75,000円 となります。
《Bさん》
離職時の年齢:62歳
勤続期間(被保険者であった期間):25年
事業所の倒産により離職
離職後は基本手当の日額5,000円を140日受け取り、3ヶ月の派遣(契約の更新なし)として50日就業した場合。
基本手当の所定給付日数:240日(被保険者期間20年以上かつ60歳以上65歳未満、特定受給資格者に該当)
基本手当の受給日数:140日
基本手当の支給残日数:100日(240日-140日)
就業手当の日額は、
「基本手当の日額の30%」で
「上限1,485円」となります。
●就業手当の日額=5,000×30%=1,500円ですが、年齢による上限を超えているため、日額は
1,485円で計算することになります。
支給期間は、再就職後の就業日数分で、基本手当支給残日数まで支給されます。
Bさんの場合、就業日数(50日間)が基本手当の支給残日数を上回っていないため、
50日分が支給されます。
以上より、Bさんの就業手当の支給額は、
1,485円×50日=
74,250円 となります。
就業手当の手続き方法
<就業手当の申請に必要な書類>
・就業手当支給申請書
・雇用保険受給資格者証
・就業を証明することができる書類の写し(給与明細など)
・労働機関・労働時間を証明することができる書類の写し(雇用契約書など)
ステップ1
失業の認定に合わせて就業手当の手続きを進める必要があるため、
原則として4週間に1回、受給資格者本人がハローワークに行き、前回の認定日から今回認定日までの各日についての就業日と対象日における就業手当の支給を受けたい旨を報告します。
ステップ2
「就業手当支給申請書」を受け取り、記入します。
受給資格者本人がハローワークに行く場合は、就業したことについての事業主の証明は必要ありません。
ステップ3
記入した就業手当支給申請書と
雇用保険受給資格者証、
給与明細等就業を証明することができる書類の写し、雇用契約書や雇入通知書などの
労働契約の期間及び労働時間を証明することができる書類の写しをハローワークに提出します。
失業認定の来所日ですべての手続きを終えることができるため、添付書類をあらかじめ用意したうえで、ハローワークに行くことをおすすめします。
就業手当は手続き後、いつ振り込まれる?
就業手当は、失業の認定に合わせてその場で手続きができるため、審査も速やかに行われます。
審査では、就業手当の支給条件をすべて満たしているかどうかなどを確認し、問題がなければ支給決定が行われます。審査期間については業務取扱要領に特段の定めはありませんが、再就職手当のような一括支給でなく、かつ支給条件も緩いことから書類に不備がなければ滞りなく結果がでるものであると考えられます。
支給が決定すると、その日の翌日から7日以内に指定の金融機関の口座に就業手当が振り込まれます。
就業手当は損をする?!就業手当の注意点
就業手当の支給を受けた日については、基本手当の支給を受けたものとみなされ、
支給残日数が減少します。
一方で、就業手当の就業条件を満たすと1日4時間以上働く日が出てくるため、1日4時間以上働いた日は基本手当の対象外となり、その日に受け取る予定の基本手当1日分を先送りすることもできます。
基本手当を先送りせずに就業手当をそのまま受け取るか、基本手当1日分を先送りするか選択することができます。
就業手当は基本手当日額の30%であるため、就業手当の支給は受けずに、引き続き基本手当の支給を受けたほうが得をする場合もあります。
例えば、2週間の労働契約で週4日、1日6時間の勤務をしたとします。契約期間中では8日の勤務ということになりますが、この8日分の就業手当を受け取ると、
基本手当日額の30%分を8日受けることになります。
ここで就業手当は受け取らずにこの8日分の基本手当を先送りし、その後失業状態が続いたとすると、先送りされた基本手当8日分が受け取れるようになります。就業手当の場合は基本手当の30%となりますが、先送り分が受け取れるようになれば100%となるため、就業手当の受け取りは慎重に判断したほうがよいと言えます。
就業手当のメリットは?受給した方がよいのはこんな場合
それでは、就業手当を受け取ったほうがよいケースはどのような場合でしょうか。
基本手当は受け取れる期間に定めがあります(基本的には離職後1年間)。
就業先との
雇用期間満了日が基本手当を受け取れる期間を超えている場合は、基本手当を先送りしても受給期間を過ぎてしまうため、基本手当を受け取ることができません。つまり、
就業手当を申請したほうが得ということになります。
さらに、就業先で受け取る賃金と就業手当の受給額を加えた金額が基本手当の日額を上回ればなおメリットは大きいと言えるでしょう。
就業手当のよくある疑問
Q.ハローワーク以外で就職しても支給されますか?
自己都合退職や懲戒解雇など給付制限が行われる場合は、7日間の待機期間満了後1ヶ月以内の就業は、ハローワークか厚生労働大臣の許可・届出がある職業紹介事業者の紹介でなければ就業手当の支給を受けることができません。
最初の1ヶ月は紹介元に制限がありますが、
この1ヶ月を過ぎれば、それ以外の求人から仕事を探してきても就業手当を受け取ることができます。
給付制限が行われない会社都合による退職(倒産やリストラなど)の場合は、7日間の待機期間を過ぎればハローワーク以外からの就業でも就業手当を受け取ることが可能です。
Q.派遣やパート・アルバイトへの就職でも支給されますか?
就業手当は「安定した職業に該当しない就業」が条件となるため、
派遣やパート、アルバイトのほうが支給対象となる可能性が高いです。就業手当における就業の条件を満たしたうえで、「就業手当の注意点」と「就業手当のメリット」に配慮しつつ、就業手当の支給を受けるか基本手当を先送りするかを選択してください。
なお、派遣やパート、アルバイトであっても「1年を超えて勤務されることが確実な場合」は
再就職手当の支給対象となることがあります。
Q.新型コロナで無職に。対象になりますか?
新型コロナウイルス感染症の影響による雇止めなどで離職を余儀なくされた方であっても
就業手当の支給対象となります。
さらに、新型コロナウイルス感染症については、一定の条件を満たせば、基本手当の給付日数が30日または60日の延長となる「特例延長給付」制度が設けられています。
そのため、就業手当にはこの延長された給付日数も含めて計算してよいかどうか気になる方も多いと思いますが、延長給付により延長された給付日数については、就業手当算定の基本手当の所定給付日数には含まれないため支給残日数には影響されません。
例えば、基本手当の所定給付日数が90日で新型コロナウイルス感染症の影響により150日に延長されても、支給残日数の算定には90日が採用されるので基本手当の受給日数が10日であれば支給残日数は80日ということになります。
Q.就業手当の使い方(使途)に制限はありますか?
就業手当には法律などで定められた使途制限はありません。
ただ、就業手当は再就職した労働者に対する支援金ともいえる
就職促進給付の一部であるため、今後の仕事の準備に使用することをおすすめします。
例えば介護事業所に勤めるときは、基本的な介護の知識と技術を習得できる介護職員初任者研修(4万円から9万円程度)を取得するなどが良いでしょう。
最後に
就業手当は基本手当の支給残日数の条件以外は比較的緩やかであるため、多くの方が受け取れる可能性があります。ただし、雇用期間と基本手当の受給期間との兼ね合いによりあえて受け取らないほうがよい場合もあるので慎重な検討が必要です。
それでも、せっかく早く就業することができたのに再就職手当が支給対象外となり、落ち込んでいる方にとって就業手当は魅力的に感じるでしょう。
就業手当であれば受給できるチャンスは十分あるので、就業手当の受け取りを希望する場合は積極的にハローワークに相談するとよいでしょう。
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