身体が不自由な方が外出する際に利用する介護タクシー。今回は、そんな介護タクシーの運転手の仕事について詳しく解説します。介護はもちろん、運転手の仕事に興味のある方も、ぜひ参考にご覧ください。
1 介護タクシーとは?
2 介護タクシーの種類
3 介護タクシーの運転手の仕事内容
4 介護タクシーの運転手の給料
5 一般的なタクシー運転手と介護タクシーの運転手の違い
6 介護タクシーの運転手になるために必要な資格
7 介護タクシーの運転手として働く方法
8 介護タクシーの運転手の転職状況
9 介護タクシーは介護が必要な方にとって重要な移動手段
介護タクシーとは、病気や障がいなどで身体が不自由な方が外出時の移動手段として利用するサービスです。車いすやストレッチャーのまま乗車できる設計の福祉車両を使用します。一般的に介護タクシーの運転手は、目的地までの車の運転だけでなく、乗車や降車の介助も行うことが多いです。
介護タクシーは、利用者さんの利用状況によっては、訪問介護サービスの一つとして介護保険を適用できるケースもあります。
介護タクシーの種類は介護保険適用のものと適用外のものに分けられ、費用や利用目的、サービス内容はそれぞれ異なります。適用外のものは「福祉タクシー」と呼ばれることもありますが、厳密な決まりはありません。
ここからは、介護保険適用、適用外それぞれの介護タクシーの違いについて解説します。
介護保険適用の介護タクシーの利用対象者は、要介護1~5の認定を受けた公共交通機関を利用できない状態の方です。介護タクシーのサービスは介護保険の制度内で提供されるため、ケアプランに記載された範囲内でのみ利用できます。範囲は、通院や選挙投票など「日常生活上又は社会生活上必要な行為に伴う外出」に限定され、趣味や嗜好に関する外出での利用や、家族の同乗はできません。
料金は「タクシー料金(運賃)」+「介助料金」+「介護機器の使用料」となるケースが多く、そのうち「介助料金」が介護保険の適用対象で利用者負担1割となります。
介護保険適用外の介護タクシーは、要介護・要支援認定の方どちらでも利用可能で、家族の同乗もできます。利用目的に制限がないので、習い事、旅行、買い物などさまざまな目的で利用することが可能です。
ただし、利用料金は全額自己負担なので、介護保険適用の介護タクシーと比べると費用が高くなる傾向にあります。さらには、運転手に介護関連の資格取得の義務がないことから、介助に対応していないことがある点にも注意が必要です。
介護タクシーの運転手は、利用者の送迎だけでなく、要介護者が利用しやすいようにさまざまなサービスを提供します。
利用者宅から目的地まで運転して乗り降りの介助等を行い、目的地での用事を終えたら利用者宅まで送り届けるのが基本の仕事内容です。なお、介護保険適用の介護タクシーの運転手は、目的地までの運転以外にも必要に応じて介助等の介護サービスを行います。事業所や支援内容によっては降車後にそのまま訪問介護の業務を行う場合もあります。
通院時の病院内におけるさまざまな介助は、基本的に病院職員が対応します。しかし、利用者の心身の状態が芳しくない、家族の協力を得られないなどの特別な理由がある場合や、病院側が病院内の介助が難しいと判断した場合には、例外として介護タクシー運転手が介助を行う場合があります。
また、着替えやおむつ交換といった身体介護に関しては、支援内容や事業所によって対応が異なります。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、介護タクシーの運転手を含むタクシー運転手の平均月給は33.9万円です。平均賞与12.8万円となっており、年収に換算するとおよそ419万円です。
年収は勤務する地域や勤務先によって変化します。年収アップを目指す人は、より条件のいい事業所に転職するのも一つの方法でしょう。また事業所によっては「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」など介護系の資格を取得することで手当てが出ることもあります。
「タクシー」といえば一般的なタクシーをイメージする人の方が多いかもしれません。一般的なタクシーと介護タクシーの運転手にはどんな違いがあるのでしょうか。4つのポイントから比較していきましょう。
一般的なタクシーと介護タクシーの違いは、業務範囲の広さです。介護タクシーの対象者は身体が不自由な要介護の方なので、運転手は、乗車・降車・通院時における介助も行います。
事業所によっては、訪問介護サービスを行う場合もあり、運転とそれに伴う準備全般を行う一般的なタクシーと比べると業務範囲が広いです。
一般的なタクシーは、利用者の予約に合わせた配車のほか、街中で利用者を探すいわゆる「流し」という運行方法が一般的です。日中・夜間のシフト制で勤務するので勤務時間が不規則になりがちでしょう。
一方、介護タクシーは基本的に予約に合わせた配車のみを行います。予約をとる時間帯は朝から夜までと決まっている事業所が多いので、勤務時間も不規則になりにくいでしょう。運転と介護業務を兼ねていたり、当日に急遽対応が必要になった場合などは、忙しい状態が続くこともあります。
一般的なタクシー運転手の給与は、基本的に歩合制です。そのため、給与額が月々で変動しやすいでしょう。一方の介護タクシーは、介護関連企業が運営している場合、月給制を取り入れているケースが多いので、安定した収入を得られます。ただし一般的なタクシー会社が運営している場合は、介護タクシーであっても歩合制を取り入れていることがあります。
一般的なタクシーは、セダンやミニバンタイプなどの一般車両が使われます。一方の介護タクシーは、車椅子やストレッチャーをそのまま乗せられる福祉車両の使用が多いです。
ただし、ミニバンタイプの一般車両を介護タクシーとして使用している事業所もあります。介護タクシーでは、利用者さんの需要に応じて車両を選択することになります。
介護タクシーの運転手になるには「普通自動車二種免許」の取得は必須です。ただし「普通自動車二種免許」だけでは、利用者に介助を行うことはできません。乗車・降車時の介助や移動介助などを行うためには、別途介護系の資格が必要です。
特に「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」などの資格を取得すると業務の幅が広がるので、専門的な知識や技術を用いながら介助業務にあたることができます。求人によっては、資格取得が必須となっていることもあるでしょう。
介護タクシーの運転手として働くためには、どのような方法があるのでしょうか。介護タクシーの運転手として働く方法は、大きく分けて「就職」と「開業」の2つがあります。ここからは、就職する方法と開業する方法について、それぞれ詳しく解説します。
就職する場合、介護タクシーの管理を行う事業所や介護施設などの求人に応募します。「普通自動車二種免許」の資格があれば未経験でも応募できる場合が多いです。就職先によっては、「介護職員初任者研修」を取得するためのサポートを受けられるでしょう。また、就職前に「介護職員初任者研修」を取得していると優遇されるケースもあります。
介護タクシーを開業する場合、介護保険事業所として登録する必要があります。さらに、介護タクシー事業者として、管轄運輸局(運輸支局)に「一般旅客自動車運送事業経営許可申請」と「運賃認可申請」を行い、法令試験に合格しなければなりません。この許可を得るためには、人員・車両・車庫・営業所要件を満たす必要があり、別途、介護タクシー事業を行うにあたり必要な介護系の資格を取得します。
事業開始までに多くの時間と労力が必要となるので、まずは事業所に就職する方が難易度は低いでしょう。
介護タクシーの運転手は、介護業界で働いた経験のある方の資格やスキルを活かせる職種の一つです。また、タクシーやトラックなどドライバーとして働いた経験のある方の転職先としても人気があります。特に「普通自動車二種免許」を持っている方は有利です。
また、介護タクシーの認知度は、徐々に拡大しています。少子高齢化の影響で介護が必要な方が増えていくことを踏まえると、今後も介護タクシーの需要は高まると考えられるでしょう。
介護タクシーは、外出することが困難だった要介護状態の方や、介護が必要な方にとって、非常に重要な移動手段です。将来的にも需要が高く、とてもやりがいを感じられる魅力的な仕事といえるでしょう。一般のタクシーやトラックなど、他のドライバー業からの転職もしやすい職種なので、興味のある方はぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
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