■書名:介護の現場 きけんまるわかり
■著者:山田 滋
■発行元:QOLサービス
■ 発行年月:2013年1月21日
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「知っていたら防げたのに……」介護の現場に潜む危険を徹底解剖
「デイサービスでは実にさまざまなトラブルが起こる」
これは、本書の「まえがき」の冒頭に書かれている文章だ。
施設に入所する高齢者よりも、比較的元気な利用者が一定の時間を過ごすデイサービス。レクリエーションなど活発な活動も多いことから、当然リスクも多様になり、事故やトラブルも発生しやすい。
本書では、デイサービスの現場で実際に起きた事故・トラブルなどの事例、そこから生まれた事故防止対策を紹介している。
挙げられている事例は実に様々だ。「(利用者が)自宅に戻ったら、骨折していた」「外出中に利用者を見失い迷子に」「施設に持ち込み禁止の飲食物を利用者が食べて誤嚥した」など。
「送迎時の事故」といった、車で利用者の送り迎えをしているデイサービス固有の事例もある。
また、利用者同士の交流から発するトラブルも多い。ケンカや迷惑行為といったものから、健康食品など商品の売りつけに困った、という話も。中には、利用者同士の恋愛といった微笑ましい例も挙げられている。
本書では、これらの事故やトラブルの状況を詳しく紹介。その後、「職員緊急会議で事故カンファレンス」と題し、どのように施設側が事故に対処するかの例を挙げている。
前述の「自宅に戻った利用者が骨折していた」というケースではどうなるだろうか。
利用者の家族から調査をしてほしいと要望があったため、施設の職員にヒアリング。しかし、デイサービス中の対応は万全だったとし、「骨折の原因に心当たりがないと家族に報告する」いう結果に落ち着いた。
しかし本書では、「このカンファレンスで本当に再発防止ができるのでしょうか」と問いかけ、さらに一歩踏み込んでいる。どのような方法で原因究明に取り組んだらよいのか、事故状況を推定する手がかりは何か、そして家族にどのように対応していったらいいのか。
「その場限り」ではなく、どうしたら防止できるのかを前提とした対応方法を、現場での生きた知恵と工夫を盛り込み、細かく紹介している。
<デイサービスでは、日々の活動の中にたくさんの事故やトラブルの種が潜んでいますから、あらかじめ事故やトラブルを予想して防止するための対策を立てておかないと、トラブルだらけのとんでもないデイサービスになってしまいます。
(中略)現場で活用できる防止対策や対応手法というのは、利用者と向き合っている現場職員の知恵と工夫から生まれるものなのだと思います>
介護施設で働く人はもちろん、これから介護の世界に飛び込む人にも、知っておきたい情報が満載だ。また、デイサービスに家族を送り出す側にとっても、トラブルに巻き込まれたときの参考になる一冊に違いない。
<松原圭子>
著者プロフィール
山田滋(やまだ・しげる)さん
早稲田大学卒業。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わり、2010年4月から株式会社インターリスク総研 主席コンサルタントとして勤務。実践に基づいたリスクマネジメントの方法論には定評がある。