■書名:埼玉・和光市の高齢者が介護保険を“卒業”できる理由 ~こうすれば実現する!理想の地域包括ケア
■監修:東内京一
■著者:宮下公美子
■出版社:メディカ出版
■発行年月:2015年2月15日
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高齢者を元気にするためのヒントが見つかる!「チームケア」成功ストーリー
高齢になると身体能力は低下する。残念なことだけれど、介護の必要性がどんどん高まっていくのは当然のこと…。そう思っている人は多いと思うが、実はそうではない。
本書で紹介されているのは、埼玉県和光市で行われた「介護」を卒業するための取り組みだ。
「行政の取り組みと、実際に現場で働く介護職の仕事は関係ない」と思うなかれ!この一冊には、支援が必要な高齢者を再び健康に、元気にするためのヒントがたっぷりつまっている。
例えば、日々利用者のケアをしながら、こんな疑問を感じたことはないだろうか。
「何でもしてあげる『手厚すぎるケア』は利用者の生活能力を奪うのではないか?」
「利用者本人のやる気がなければ、リハビリや自立支援も意味がない…」
和光市の取り組みも、高齢者の「手厚い介護を受けたい」「介護予防には興味がない」という意識が大きな壁になる。そこで和光市が行ったのは、新しいプログラム作りだった。
筋力向上のトレーニングだけでなく、食の自立支援や口腔ケア、フットケアなど、身体機能だけでなく、生活機能向上を重視。さらに、高齢者自身が「自分が好きなもの」を選んで参加できる多彩なプログラムや高齢者同士の交流の場をつくるなど、高齢者のやる気を生み出す工夫を続けた。
「本人のやる気がないからできない」ではなく、「やる気を出してもらうためにはどうすればいいのか?」をとことん考え、実行する。それでもダメなら、違う方法を考える。それを根気よくくり返したことが、多数の高齢者が介護を「卒業」するという結果につながっていく。
また本書の中には、和光市の職員はもちろん、ケアマネジャーや管理栄養士、歯科・看護師、薬剤師、理学療法士など、さまざまな専門職が登場する。こういった専門職の人々が連携しながら、高齢者一人ひとりのケアにあたっていることが、和光市の取り組みの大きな特長の一つでもある。
その一人である地域包括支援センターの職員は、本書の中でこう語っている。
<和光市はみんなが課題解決のために同じ目標に向かって、全体で高齢者を支えていることを感じます。チームケアが行き届いていて、誰か一人だけの力で支援し続けるということがありません。そこが和光市の良さだと思っています。>
また、ほぼ寝たきりだったA子さんが、約1kmの距離を杖なしで歩けるようになったケースを知った著者の宮下公美子氏はこう語る。
<もちろん、A子さんのように順調にいくケースばかりではありません。しかし、本人の努力とケアチームの努力が相乗効果を生むと、このようにみごとな改善につながることを、和光市の専門職はみなよく知っています。だからこそ、高齢者の力を引出し、望む生活を実現することを目指して粘り強い支援を続けていけるのです。>
さまざまな専門家がチームでケアにあたること。そして、すぐには結果が出なくても根気よく続けること。
本当に利用者のためのケアとは何か?それを実現するために必要なものは何か?その答えが見つかるのではないだろうか。
著者プロフィール
<監修者>
東内 京一(とうない・きょういち)さん
和光市保健福祉部長。埼玉県和光市役所入庁後、税務課、国民健康保険課などを経て、2000年より介護保険室へ。その後、長寿あんしん課の課長補佐・介護福祉担当統括主査・地域包括支援センターリーダー・後期高齢者医療担当統括主査を兼務。2009年4月、厚生労働省に移り、老健局総務課課長補佐に就任。2011年10月、再び和光市に戻る。2012年10月より現職。
<著者>
宮下 公美子(みやした・くみこ)さん
介護ライター。社会福祉士・臨床心理士・ホームヘルパー2級養成研修修了。できるだけ現場に近づき、現場の目線から情報発信することがモットー。現在、介護ライターとして活躍しつつ、認知症高齢者の成年後見人や特別養護老人ホームの心理相談員、神経内科クリニックの臨床心理士も務めている。
●著者の宮下公実子さんが介護求人ナビ読者のために、毎週気になるトピックスを解説
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