■書名:みんなで楽しめる 高齢者の年中行事&レクリエーション
■著者:尾渡 順子
■発行元:ナツメ社
■発行年月:2014年2月13日
>>『みんなで楽しめる 高齢者の年中行事&レクリエーション』の購入はこちら
季節を感じる内容で、利用者が盛り上がり笑顔になるレクリエーションを紹介
老人ホームやデイサービスなどの介護施設にはレクリエーションがつきもの。レクは、生活上のリハビリテーションやコミュニケーションの構築などの目的で行われる。そして、利用者にとっては楽しみのひとつでもある。
軽く体を動かすゲームや、クラフト作りなどの手作業、クイズなど、さまざまなレクリエーションがある。
本書の特徴は、クリスマスやお正月、ひな祭りといった季節行事や年中行事にまつわるものを中心に紹介していることだ。
著者の尾渡順子さんによると、四季折々の行事や季節感を盛り込んだレクリエーションを行うことで、利用者によい影響をもたらすという。そのメリットは下記のようなものだ。
●利用者がいまの季節を認識できる
●老若男女問わず、共通の話題になる
●昔の記憶を引き出してお互いを知ることができる
●精神的な安定と喜びを生む など
慣れ親しんだ季節行事に触れることで利用者は安心し、昔を振り返るきっかけにもなる。また、利用者同士で共通の体験があれば、懐かしさをお互い共有でき、よりよい関係づくりに結びつけることもできる。
掲載しているレクリエーションは、体を使って行うもの、手先を動かして作るものなどさまざまだ。
例えば、春の「ひなまつりの記者会見」は、利用者がお雛さまやお内裏さまに扮してさまざまな質疑応答に答えるゲーム。夏の海を舞台にした「シャークたたき」は、もぐらたたきを応用したゲーム。利用者は飛び出るシャークに思わず体が反応し、大いに盛り上がるという。
そのほか、ウエディングドレスに身を包み、当時の思い出を振り返る回想レクや、「ビールゼリー」などの料理を作るクッキングレク、季節に応じた小物を作るレクなどバリエーション豊富。同じようなレクリエーションばかり続くと利用者が飽きてしまうが、この本を使えば防止できそうだ。
<レクリエーションとは、決まった時間にゲームやリハビリ、手作業を行うことではありません。お年寄りたちの中に「ここに来れば、楽しみが待っている」「ここに来れば、会いたい人が待っている」「ここに来れば、やるべきことが待っている」、そんな思いが芽生える活動を指すと私は考えています。ただ、招集をかけられ、言われるままにやらされているだけでは、「やらせのレク」と呼ばれても仕方がないと思います>
ゲームはオリジナルで、所要時間やゲームに必要な人数、適した会場の広さなども掲載されている。さらに「はじめの声かけ」「進行中の声かけ」「まとめの声かけ」なども紹介されており、レクリエーションの司会を行ったことがなくても取り組めるような内容となっている。
また、盛り上げるポイントや、認知症や失語症の利用者がレクに参加するときのサポート方法も載っており、介護職初心者にも心強い内容だ。
巻末には「男性がレクリエーションに参加してくれない」「司会進行が苦手」「取り揃える道具について」といったO&Aコーナーも掲載。「冬至」「小寒」といった季節の二十四節気、「今日は何の日」といった情報も収録しているため、レクリエーションの場以外でも活用できるだろう。
<松原圭子>
著者プロフィール
尾渡 順子 (おわたり・じゅんこ)さん
2002年に介護福祉士の資格を取得後、社会福祉士、認知症介護実践者、介護教員など8つの資格を取得。10年間、介護福祉士として福祉の現場で専門的にレクリエーション援助に携わり、研究成果を多数発表する。現在は、社会福祉法人興寿会 所長代理を務める。