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2013年07月24日

機械のように動く! | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

profile-1今回は前回まで続いた「介護の現場に学ぶ!」シリーズのひとまずの締めくくり。介護ベッドが教えてくれた「小さな力でシンプルに動く」介助の仕上げに入ります!
<協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏/文・構成 佐藤大成>




こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。今回の目指すイメージは「機械のように動く」です------というと、みなさんの頭の中に?マークが点滅したかもしれませんね。

この「機械のように」という表現、 一般的にはあまりよいイメージがないかもしれません。「無機的」とか「冷たい」という言葉があわせて浮かんでくるような気がしますが、少し見方を変えると、「冷たい」は「がんばらない感じ」とも言えますし、「涼しい顔で淡々と仕事をしているような」という印象にも通じます。このへんにわたしたちが学べるポイントがあるような気がするのです。

と、そんな前置きをしつつ、今日は「機械のように動く」良さについて探求してみたいと思います。



甲野陽紀さんの日々是介護術19_1場面は、前回の続き、介護ベッドで休んでいる方の介助です。カラダの位置を少しベッドサイドに寄せてもらいました、という状況。「そこからベッドサイドに腰掛けてもらう介助を、できるだけ小さな力とシンプルな動作で」やってみたい、というのがテーマです。

上体を起こしつつ向きを変え、足が床に着くところまでていねいにサポートする------というのが動作の流れ。まずはイメージを組み立ててみます。右手は上体起しをサポート、左手は下半身をサポートしながらカラダの向きを変える動きをリードしていく------両手の役割を分けて考えるとこんな感じでしょうか (写真a)。

















では、まずは上体起しのサポートに回る右手の動きから。考え方はこれまでと同じですね(参考:介護用のベッドに学びたい2)。

→手の甲を上にして首の下に差し入れる
→肩のあたりに届いたら人差し指を中心に手のひらを返し肩甲骨にあてる
→肩甲骨から相手の肩全体の触れているところに軽く引っ掛ける感覚をもちながら上体起こしに入る

上体起しだけの場合は、そのままヒザをのばすように動きましたが、今回はカラダの向きを変える必要があるので、一息には上体を起こさず、左手がリードしていく下半身の動きに自然に合わせていくようにします。

次に下半身のサポートをする左手の動き。

→足裏に手を引っかける感じをもちながら手前に引いてくる

という考え方は前回と同じなのですが、今回はカラダの向きをより大きく変える必要があるので、手前に引くという動作のしやすさを考えて、前回とは逆の向きから膝裏へ手を差し入れるようにしてみました。

そんなイメージで実際に動いてみると……(写真b~e)。



甲野陽紀さんの日々是介護術19_2



どうでしょうか? タネエディターの身長約175cm、体重約70kgのカラダが、わりにすんなりと動いてくれました。解説していくと複雑な動きに感じられるかもしれませんが、左手と右手の位置と役割が決まれば、あとは引っ掛ける感覚をもったまま、左手の手のひらから手前に引いてくる動きに、自分のカラダを合わせていくだけ。足がベッドから床に降りていくとき、それにつられて上体も自然に起きてきますから、上体起こしをとくに意識する必要もありません。

イメージを組み立てているとき(写真a)より、動きは大きくなりますが、決して大きな筋力を使っているわけではないので、介助しているときの実感はたしかに“クール”。「機械になったような」という表現をしても的外れではないなあという気がします。



考えてみれば、全体が緩みなく精密につながりあってできている機械と違い、人間のカラダのつながりには随所に“遊び”があって、腕力や脚力という部分の力によっても動くことができるという特徴をもっています。それが「人間らしい動き」を生み出す原動力にもなるのですが、逆にそうした“部分力”に大きく頼ってしまい、かえってカラダには負荷のかかる動作をしてしまうことがあるのです。

筋力という“部分力”だけに頼らず、カラダ全体の力が出せるような動きをする------見方によっては「機械のように」も見えるこうした動き方をカラダ自身は、“これは楽で、なかなか賢い動き方だなあ”と感じてくれているかもしれないなあ、と思うのです。




◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
プロフィール
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html

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