■書名:介護食スイーツ レシピと栄養
■著者:代居真知子、鈴木理恵子、島崎洋子(栄養部分監修)
■発行元:誠文堂新光社
■発行年月:2011年7月31日
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利用者の低栄養対策に! おいしく、見た目も美しい介護食スイーツ
本書では、高齢者の食生活をより豊かにする高齢者向けのお菓子を紹介している。
高齢者向けのお菓子というと、どのようなものを想像するだろうか。「ようかん」「お汁粉」「まんじゅう」といった、和菓子を想像する人も多いと思うが、そのようなイメージを持って本書を手に取ると、メニューの多彩さに驚かされる。
紹介されているレシピは下記のようなものだ。
●高齢者にファンが多いという「ティラミス」
●チョコレートを使ったバレンタイン向けの「豆乳ブラウニー」
●カスタードクリームとフルーツをちりばめた「トライフル」
●ハロウィンの時期にぴったりな「かぼちゃチーズケーキ」
中には、ブームとなった「スムージー」や、コンビニスイーツでおなじみの、中心にたっぷりクリームが入った「ロールケーキ」も紹介。もちろん、「紅白まんじゅう」「御前汁粉」「ねりきり」といった和菓子もラインナップしている。
本書では、お菓子をただの「おやつ」としてではなく、低栄養時の「栄養補給」メニューとしてとらえている。
高齢になると、さっぱりした味を好むようになるため、肉や魚の摂取が少なくなるなど、たんぱく質が不足気味になるという。また、カルシウムや鉄といった栄養素も不足しがちになるそうだ。そこで本書では、お菓子で不足している栄養の補給を提案している。卵に牛乳といった良質のたんぱく質や、カルシウムが摂取できる「プリン」などがその代表例だ。
咀嚼力が弱い人や、飲み込む力が弱い人には、食材をすりつぶし、飲み込みやすくするきざみ食やミキサー食を提供することがあると思う。また、見た目が悪いミキサー食などにかわり、料理がイメージできる「ソフト食」を導入する介護施設も増えている。しかし、慣れ親しんだ料理と見た目がかけ離れているため、食が進まない利用者も多いのではないだろうか。その点、プリンやアイスクリームといったお菓子は、昔からおなじみの形をとどめているため、抵抗感なく取り入れることができるのだという。
本書で紹介されている介護食スイーツは約100点。
「ひな祭り」「母の日」「クリスマス」など12カ月分の、四季の行事にぴったりなスイーツのほか、飲み込みやすいトロリ系プリンのアレンジレシピや、フローズンスイーツについても紹介。作り方だけではなく、「クリームといっしょに食べると飲み込みやすくなる」といった、食べやすくするための工夫や注意点も掲載している。
一つひとつのレシピには、「飲み込み時の安全度マーク」付き。「ほぼ問題なし」「小注意」「大注意」といったアイコンがあり一目でわかるので、嚥下力に問題がある利用者の食事作りに役立てられる。同時にカロリー・たんぱく質・カルシウム・鉄などの栄養素の確認もできるようになっている。不足気味の栄養にあわせ、レシピを選択することも可能だ。
また、介護スイーツは、食べるだけではなく、レクリエーションなどで作って食べることにも適しているという。本書では実際にスイーツ・レクを行った介護施設の様子もレポートされている。スイーツ・レクに適したレシピも紹介されているので、挑戦してみるのもおすすめだ。
<本誌の目的は介護が必要となった方々においしいものを召し上がって、健康維持に役立てていただきたいということですが、同時に介護者にお菓子作りを楽しんで、ストレスを解消させていただきたいという願いもあります>
お菓子作りは料理とは異なり、「作らなければならない」という義務感を感じることなく、楽しんで作ることができると語っている。介護を必要とする人が、おいしく食べて栄養補給できるとともに、介護職の気分転換にもなる介護食スイーツ。取り入れてみてはいかがだろうか。
<松原圭子>
著者プロフィール
<執筆・編集>
代居真知子(よすえ・まちこ)さん
福祉介護ジャーナリスト・女子栄養大学生涯学習講師。女子栄養大学栄養学部卒。AM/FMラジオの構成作家、EPICソニー「ウォークマンブックス」の制作、日本財団の広報誌執筆などを経て、福祉・介護関係の著作に携わる。
<レシピ調理・執筆>
鈴木理恵子(すずき・りえこ)さん
料理研究家・文筆家。青山学院大学文学部卒。食を中心に日常を綴ったブログ「せっかちスローライフ」では、日英2カ国語でレシピを紹介。Facebookで800点を超える料理写真を公開している。
<栄養部分監修>
島崎洋子(しまざき・ようこ)さん
管理栄養士・産業栄養指導者。女子栄養大学栄養学部卒。管理栄養士として三重大学医学部付属病院栄養室、東京情報処理産業健保健診センター栄養科主任を歴任。