■書名:プロが教える 本当に役立つ介護術
■監修者:福辺 節子
■発行元:ナツメ社
■発行年月:2012年12月27日
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体の負担を軽くし、介助する人もされる人も笑顔になる介助術とは?
介護という仕事にやる気を持って携わっていても、移乗や着替えなど日常的な介助が思うようにできず、ストレスをためてしまったり、腰を痛めてしまったり…というケースも多いのではないだろうか。もちろん、そうした介助は、利用者にとっても苦痛ではないだろうか。
そんな日々の介助に不安がある人、悩んでいる人にぜひ手にとってほしいのが本書だ。
「介助のやり方と声かけを変えたら、ぐっと負担が減りました」
「動作がスムーズになっただけでなく、お互いに笑顔が生まれました」
「お年寄りが協力してくれるようになり、自分の介助に自信がつきました」
本書には、介護福祉士やホームヘルパーが、紹介されている介助術を実践してどう変わったかの感想がいくつか紹介されている。上記は、その一部だ。実際どうすれば、負担が軽く、お互い笑顔になるような介助ができるのだろうか?
監修者の福辺氏は次のように書いている。
<介助される人が痛くなく、怖くなく、楽しみながら人生を送ることを目的にするのと、ただ単に介助者の身体がラクに早く介護することを目的にするのとでは、介助はまったく異なってきます。(中略)介助者にとってのラクな介助から出発してしまうと、ひとつひとつ声かけをし、確認をし、お年寄りの反応を待つ丁寧な介助は、とても時間がかかる「やってられない」介助になります。ところが、介助される側から出発した介助は、同じものにもかかわらず、介助者にとってもラクで楽しい力のいらない介助になります。>
《介助される側から出発した介助》は、以下の「福辺流介助術」の5原則が基本になる。
1)相手の動きのパターンをとらえる
2)できることとできないことを見極める
3)人間の正常な反応を利用する
4)本来の自然な動作をなぞる
5)丁寧な介助をする
本書を見ると、声かけをとても重視していることがわかる。声かけをはじめとする適切な誘導により、お年寄りが本来持っている力を無理なく引き出し、人間の体に備わった自然な反応を活用する。そして、必要な介助だけを行う。それが「福辺流介助術」のポイントだ。そうすることで、介助される側も、介助者も、双方にとって負担の少ない介助が可能になるという。
具体的に、本書では「寝返り、お尻上げ」に始まり、「身体を起こす、立ち上がる」「座る」「車椅子と移乗」「歩く」「食事・口腔ケア」「排泄」「着替え」「入浴」の項目別に、マヒのある・なし、一部介助、全部介助などに分けて、それぞれ個別に解説していく。
大きなイラストで、手順に添って介助動作が説明されているので、介助の流れや、介助者の手の動き、姿勢、目線などが非常にわかりやすい。体のどちら側にマヒがあるかもイラスト上で色分けされているし、どのタイミングで、どのような声かけをすれば良いかも丁寧に示されている。
本書で紹介しているのは介助の基本動作だが、介護経験が浅い人はもちろん、経験豊かな人にとっても、今まで気づかなかった動作のコツやヒントが見つかるかもしれない。ぜひ、介助する人もされる人も、お互いに楽で負担の軽い介助を実践するのに役立ててほしい。
<小田>
著者プロフィール
福辺 節子(ふくべ・せつこ)さん
Natural being代表。理学療法士・医科学修士・介護支援専門員。大学在学中に事故により左下肢を切断、義足となる。現在は、介護職・看護師、家族などを対象とした「もう一歩踏み出すための介助セミナー」を各地で開催。施設や家庭での介助・リハビリテーションのアドバイスも行っている。著書に『人生はリハビリテーションだ』(教育史料出版会)、監修書に『早引き 介護の基本技法ハンドブック』(ナツメ社)などがある。介助の達人としてNHK『ためしてガッテン』やNHK Eテレ『楽ラクワンポイント介護』にも出演。