■書名:毎日1分間の「エアリハ」が転倒・認知症・生活習慣病の予防にガツン!と効く
■著者:繁岡 秀俊
■発行元:エール出版社
■発行年月:2013年7月1日
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「思い込む力」で転倒予防! 理学療法士&社会人落語家が提案する「エアリハ」とは?
高齢者の転倒や寝たきりを予防するためには、日頃から体を動かし、筋力低下を防ぐことが大切だ。しかし、頭ではわかっていても、なかなか実践できないもの。ふだん体を動かさないお年寄りにとっては、体が硬い、関節が痛い…といった症状もあり、ハードルが高く感じられるのかもしれない。
本書で紹介されているのは、毎日1分、楽しく筋肉を動かすためのリハビリ体操だ。ほかの体操とは、どこが違うのか?
実は、決定的に違う点がある。本書で紹介する体操はすべて「エア」だからだ。「エアギター」や「エアキーボード」のように、「つもり」になってリハビリする。エアでリハビリだから、「エアリハ」というわけだ。
ピンと来ない人もいるかもしれない。具体的に紹介しよう。
1.片手に1mほどのゴムチューブを持っていると「思い込む」。
2.次に、目の前に1本の柱があると「想像」し、手元のゴムチューブをその柱に回す(とイメージする)。
3.柱にかけたチューブの両端をそれぞれしっかり握る(とイメージする)。
4.握った手を10回、自分の胸の方に引っ張る。
これだけだ。
エアリハの目的は「脳を勘違いさせる」ことにある。ポイントは、本気になってエア(想像)すること。そうすると、「私たちは、ゴムチューブを引っ張るのに力がいるということを知っているため、頭の中でゴムチューブを想像した動きをするだけで、筋肉が必要以上に働く」のだと言う。
しかも、頭をフル回転させて想像し続けることで、認知症の予防にもなると言うのだ。
「思い込む」だけなので、実際に硬いゴムチューブや重いダンベルを使う必要はない。だから、関節の痛みがある人や力の弱い高齢者でも、負担なく、安全に、筋力向上のための体操を行うことができる。
こうした体操なら、老人ホームやデイサービスのレクリエーションでも気軽に取り入れやすいだろう。
本書では、転倒予防編(エア体操)として、寝たままでできるものを5種類、椅子に座ってできるものを6種類、立って行うものを3種類掲載。さらに、認知症予防編として「エア散歩」と「エア日記」も紹介している。
まずは、転倒予防編の中から好きなものを1つ選び、30秒体操する。さらに、認知症予防編の中から1つ選んで、やはり30秒行う。最低でも、合計1分のエアリハを毎日続けることから始めよう、と著者は提案する。
著者はリハビリの専門家である理学療法士。同時に、社会人落語家でもある。だから本書には、落語家ならではの笑いが散りばめられている。たとえば、前述のゴムチューブと柱をイメージしたエア体操には、次のような解説コメントがついている。
「ぎゅーっと、じわ~っと、しっかりイメージして!
手を離さないようにしてくださいよ、ゴムが顔に当たると痛いですよ。(笑)」
単に笑わせるためだけの文章ではないだろう。「顔に当たると痛い」という言葉で、体操をしている人に、想像をさらに意識させる効果があるのではないだろうか。実際にレクリエーションなどに取り入れる際には、トークの参考になりそうだ。
著者は、序章で次のように書いている。
<リハビリには魔法はありません。リハビリで病気は治りません。リハビリは動作を改善するだけです。
でも、リハビリには奇跡を起こす力があります! それも、今までには気付かなかったちょっとした工夫で。そう、皆様のちょっとした「思い込む力」だけで。>
転倒予防、認知症予防の体操を検討している人は、手軽に始められる一歩として本書を参考にしてみてほしい。
<小田>
著者プロフィール
繁岡 秀俊(しげおか・ひでとし)さん
理学療法士 兼 社会人落語家。医療法人大和会 辻野病院で訪問リハビリ責任者、介護老人保健施設 知恵の和苑でリハビリ科主任を務める。同時に、高座名「日向亭 葵」で落語家としての活動もスタート。「おしゃべりテーションの会」代表。NPO法人あすなろ、非常勤講師。現在は年間50件以上のボランティア活動を中心に、各地で「笑いと健康」に関する公演活動を行っている。