■書名:日本で老いて死ぬということ ~2025年、老人「医療・介護」崩壊で何が起こるか
■著者:朝日新聞 迫る2025ショック取材班
■発行元:朝日新聞出版
■発行年月:2016年6月30日
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介護と看取りの現実、そして新たな取り組みをリアルな取材事例を通して紹介
本書は、2013年11月から2年半、朝日新聞神奈川版で連載された「迫る2025ショック」シリーズに加筆・修正し、再構成したものだ。以下のような3部構成で、「老後の現実問題」についてさまざまな角度から切り込んでいく。
第1部「日本で老いて死ぬということ」では、高齢者が直面する問題にスポットを当てる。たとえば、老後が長くなることで増える「孫離れうつ」や「孤立うつ」に注目し、高齢者の生きがいをどう回復するか考える。また、胃ろうの選択に悩む家族の様々なケースも紹介。
第2部「介護の現実~在宅・施設それぞれのリアル」では、介護する側である医療・介護スタッフ、および家族の視点を中心に、在宅と施設それぞれの介護の現実や対策について綴る。
第3部「老いは地域社会で見守れるか」では、小規模多機能型居宅介護施設を立ち上げた女性と利用者の物語や、高齢化が進む団地のコミュニティ再生への取り組み、自治体の活動などを紹介する。
取材した人数は100人超。現実に老後を迎えている高齢者、介護に直面する家族、高齢者医療や介護の現場で働く在宅医や訪問看護師、介護職員たちに密着取材した内容はとてもリアル。その内容から、日本社会の抱える大きな課題が浮き彫りになる。
特に多くのページを割いて紹介されるのは、第2部「介護の現実~在宅・施設それぞれのリアル」だ。
そこに登場するのは、介護と育児の「ダブルケア」や「遠距離介護」に悩む家族。迷いながらも在宅で看取ることを選択した家族。または施設での看取りを選んだ家族など…。彼らがどう感じ、どう悩み、どう行動したかという事例を通して、現実の厳しさと、どう看取るかという選択の難しさが伝わってくる。
それと同時に、疲労困憊した家族に手をさしのべるケアマネジャーや、一緒に奮闘する医療・介護スタッフの存在が大きな救いとなって胸に響いてくる。
本書では「老後の現実問題」についての解説に加え、それらに対する「先進的な取り組み」についても紹介している。
たとえば、下記のようなものだ。
●お年寄りの思いや力を引き出すケアで、全国から注目を集める藤沢市の施設
●「嚥下フレンチ」のような異業種のコラボによる口から食べる支援
●横浜市における、市民が助け合う「共助」の活動
●横浜市鶴見区の医療と介護の垣根を取り払う取り組み
●中高生を対象にした在宅医療の現場の体験型講座
<2025年問題に立ち向かうため、いろいろな人たちが「つながる」動きを見られると、うれしくなる。それは医師同士だったり、医療職と介護職だったり、歯科医師とシェフだったり…。(中略)こうした様々な「つながり」が化学反応を起こしたとき、すごくおもしろいことが起こるに違いないーー。>
本書をきっかけに、介護に携わる一人ひとりが2025年問題を「自分事」として考え、介護職として何ができるかを考えてみてほしい。特にケアマネジャーをめざす人、在宅介護や看取りに携わりたいと思っている人にぜひ手にとってほしい一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
朝日新聞 迫る2025ショック取材班
団塊世代がすべて75歳以上になり、医療や介護の提供が追いつかなくなる「2025年問題」。そこに危機感を持った朝日新聞横浜総局が特別取材班を立ち上げ、2013年11月から神奈川版で「迫る2025ショック」の連載を開始。連載は2016年4月まで続き、書いた記事は160本近くにのぼった。