■書名:イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ
■監修:田辺 有理子
■発行:中央法規出版
■発行年月:2016年8月31日
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介護の現場でイライラと上手に向き合い、楽しく働くためのノウハウが満載
介護職は、利用者やその家族、介護スタッフ同士や看護師、リハビリスタッフなど、多くの人に接する仕事。
人間関係のストレスが原因で、イライラしたり、思わず声を荒げてしまったり、感情的になってしまった経験は誰にでもあるのではないだろうか。
そのイライラの感情が利用者に向かえば、虐待につながりかねない。
あるいは逆に、優しく対応できない自分の未熟さに落ち込んだり、自分で怒りを溜め込んでしまい、仕事の継続に影響するケースもある。
本書は、そうした介護職のためのストレス対処法として、アンガーマネジメントのテクニックを紹介した一冊。
アンガーマネジメントとは、怒り(anger)の感情と上手に付き合うための技術だ。
カチン!ときたときの怒りのピークはほんの数秒だと言う。
そのわずかな間に「売り言葉に買い言葉」で返してしまうと、怒りを爆発させる結果になる。
そのため、怒りの反応を数秒間遅らせるテクニックが肝心になる。
そこで著者の田辺有理子さんが勧めるのは、「魔法の呪文」を用意しておく方法だ。
「何とかなるさ」「これも給料のうち」など、用意した言葉を心の中で言ってみる。
あるいは、心の中でユーモアのある反論をしてみるのも、クールダウンにつながる。
ペットの顔を思い浮かべるなど、イメージを利用するのも良いと言う。
また、怒りの程度を0~10の点数で表すのもオススメ。
怒りのスイッチが入ったときに、今のは何点だろうかと考える。
これも反射的な怒りの爆発を防ぐテクニックだ。
他にも、怒りの感情を引きずらないためのテクニックや、怒りの耐性をつくる方法、「いつも」「必ず」「絶対」「前から思っていたけど」といった怒ったときに出やすいNGワードなど、さまざまな知識やノウハウが紹介される。
ストレスの対処法というと難しい内容を思い浮かべるかもしれないが、本書に紹介されているのは、どれも試してみやすいテクニックばかり。
高齢者施設を舞台に、4人の介護スタッフと課長が遭遇する「イライラ」の場面がイラストや会話で展開するので、自分の悩みに置き換えやすく、対処法もすんなり理解できるだろう。
<介護は人と人とがかかわる仕事ですから、相手は変えられなくても、自分の対応によって相手の反応が変わります。
スタッフが穏やかな口調で対応すれば、相手もそれに応じて、気持ちが落ち着いていきます。
また一方で、人と人とのかかわりですから、毎回うまくいくとは限りません。
何回か試してみて、そのうちの一回成功すれば上出来です。>
仕事をしていくうえで、どうストレスに対処していったらよいか迷っている人は、ぜひ本書を手にとり、ヒントを探してみてほしい。
そしてアンガーマネジメントの手法を職場で共有し、怒りの感情についてお互いに話し合える環境をつくってみてはいかがだろうか。
<小田>
著者プロフィール
田辺有理子(たなべ・ゆりこ)さん
横浜市立大学医学部看護学科講師。
北里大学大学院看護学研究科修士課程修了(看護学修士)。
看護師として大学病院勤務を経て、2006年より大学教員として看護教育に携わり、2013年より現職。
看護師のストレスマネジメントのほか、医療現場の暴力・暴言の問題、看護倫理などにアンガーマネジメントを活用した研修を提供している。
看護師、保育士、精神保健福祉士、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会シニアファシリテーター。