■書名:誤診だらけの認知症
■著者:座間 清
■発行:幻冬舎
■発行年月:2016年11月
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「認知症専門医」を疑え!? 薬の影響で症状が悪化することも
「認知症」という言葉が使われるようになり、10年以上が経つ。現在は認知症治療を掲げる病院も多く、メディアで「認知症専門医」がコメントする光景もよく見かける。
認知症の薬も開発されているため、「治療法は確立されていて、専門医に診断してもらえば大丈夫」と思っている人も少なくないのではないだろうか。
しかし、本書の著者である医師・座間清氏は「認知症専門医こそ、疑うべき」と語る。
座間氏は、高齢者専門クリニック「ざまクリニック所沢」で、日々多くの認知症の人と向き合っている。もともとの専門は整形外科であったが、義父の認知症発症をきっかけに、認知症に関する勉強や研究を行うようになった。そこで、「誤診」「誤投薬」で、症状を悪化させている人が多い現状を知ったという。
認知症は、それぞれの原因疾患によって症状はもちろん、有効な薬剤が異なる。しかし、その診断方法が非常にあいまいだ。治療のガイドラインはあるものの、しっかりした治療法は確立されておらず、医師によって診断・治療方法にバラつきがある。
投薬もしかりで、専門医ではない一般内科や小児科、消化器科などが、「もの忘れがある」といった患者や家族の訴えだけで、診察もしないまま、本来は慎重に投与しなければならない認知症治療薬を使うケースもあるという。
間違った治療を受けた人はどうなるか。改善する人もいるが、中には攻撃的になり暴力をふるったり、身体をうまく動かせなくなったりする人もいるという。
認知症のタイプによって、一気に症状が悪化することもあるのだが、専門知識を持たない医師は、これが薬の副作用によるものなのか、認知症の症状が進んだことによるものなのか区別がつかない。
そこでまた、新たな薬を投与し症状が悪化する……という悪循環に陥り、「薬害」につながることも少なくないと本書では語られている。
このような事態を招かないためには、どうしたらよいのだろうか。
「まず患者や家族が、認知症に対する正しい知識を身につけること」「診断・治療を医師任せにしないこと」が大事であると座間氏は言う。そのために、本書では認知症や薬の正しい知識について詳しく説明している。
認知症は大きく「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」に分けられるが、本書では「レビー小体型認知症」「糖尿病性認知症」など、認知症は全部で7種類あると解説されている。
ひとくくりにされがちな「アルツハイマー型認知症」も、さらに3つに分けられるという。
また、認知症ととても似ていて、誤診されやすい病気についても言及。
高齢者に多い「せん妄」は、抗生物質やステロイド剤など、日常的によく使われる薬の副作用によっても起こることがあるという。熱中症も、せん妄の原因のひとつであるとのこと。
それを知らないまま、“にわか専門医"に認知症の薬を投与されたら……ゾッとする人も少なくないだろう。
<誤診による薬害を防ぐためには、専門医こそ疑うべきだということです。一般的には、症状が深刻であるほど医師の治療方針に従うほかありません。しかし実は患者側が認知症の基本的な知識を押さえておくだけで、正しい判断を下せない「名ばかり専門医」と「本当の名医」をいとも簡単に見分けることができます>
本書では、誤診のパターンや、薬漬けの治療から脱して改善した症例も多く紹介されている。認知症にかかわるすべての介護職に読んでほしい本だ。
著者プロフィール
座間 清(ざま・きよし)さん
ざまクリニック所沢院長。専門は整形外科。加えて老年内科、抗加齢医学も実施。レビー小体型認知症である義父の医療過誤を含め、高齢者医療における問題を解決するため、埼玉県所沢市にて地元に密着した老年内科の診療を開始。特に認知症医療に関しては、基礎研究結果に基づく理論を重視、保険診療においても抗加齢医学を考慮し、認知症患者にとって最も適した治療を提供している。