■書名:はじめよう 音楽リハビリテーション 3大機能のための50の音楽ゲーム集
■著者:長倉 裕二、大塚 裕一、宮本 恵美
■出版社:あおぞら音楽社
■発行年月:2016年9月
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専門的知識は不要!介護職でもできる音楽リハビリを紹介
音楽をリハビリに使うと聞くと、専門的な知識が必要で、ハードルが高そうに感じる人が多いかもしれない。しかし本書を開いてみると、簡単そうで試してみたくなるから不思議だ。
そう感じるのは、3人の著者自身が大の音楽好きで、日常的に楽器演奏を楽しむ理学療法士・言語聴覚士であることが大きいのではないだろうか。どのページをめくっても、理論だけにとどまらない作りになっている。音楽に合わせて体を動かしたり、言葉を発したりすることが、ごく自然に楽しいと感じられそうなのだ。
なお、本書で紹介される音楽ゲームはすべて、著者の一人、大塚裕二さんを中心に長く機能訓練の現場で実践してきたものなので、理論の裏付けとともに効果の面でも折り紙付きだ。
本書の特色については、以下のように述べられている。
<●音楽リハビリは、音楽療法士やリハビリ専門職が実施するだけではなく、介護職員やレクリエーションワーカー等の多職種の人々が実施することも想定し、簡単にできる「評価方法」を紹介した。
●障害や予防の視点から「運動機能」、「言語機能」、「認知機能」の3大機能に分類し、それぞれに対応する音楽リハビリの具体的手法を、イラストと楽譜を用いてわかりやすく紹介した。>
高齢者の認知症予防や脳血管障害者の機能回復を目指すリハビリとして、取り組む前にはまず、対象者がどんな問題を抱えているのかを把握する必要がある。そのために本書では、経験の浅い介護職でも、対象者の問題を簡単に把握できる「評価方法」が紹介されている。
また、音楽リハビリの具体的手法のページでは、親しみやすく楽しい音楽ゲームを50個紹介。1ゲームにつき見開き2ページを使って説明されている。
リハビリの専門職でなくても取り組めるように細やかな配慮がされ、わかりやすさは抜群だ。
介護職にとってうれしい配慮は、「準備」の項目でゲームのために必要な楽器や物品がわかるようになっていること、そして「導入トーク」が準備されていることだろう。アクティビティに不安のある介護職でも、ぐっと取り組みやすくなるはずだ。
「イメージ」の項目では、イラストによって視覚的にゲーム内容を把握できる。理解を助けてくれるだけでなく、愛嬌があって楽しく笑顔になれるイラストだ。このイラストも本書の大きな魅力の一つ。
表紙裏の「本誌で扱う50の音楽リハビリ・ゲームの『目的』一覧」からは、目的にあったゲームがすぐに探せるようになっている。こちらも実務に役立ちそうだ。
例えば、「手指の可動域の拡大」を主目的にしたい場合には、「さいたちった」と「背中伝達リズム編」の2つのゲームがみつかる。「さいたちった」を選べば、使う歌は「バラが咲いた」だとすぐにわかる仕組みだ。
本書は、音楽リハビリを理解して実践しやすいように、さまざまな工夫がなされた手引書。現場で使うことを想定しての配慮がつめこまれた一冊だ。
著者プロフィール
長倉 裕二(ながくら・ゆうじ)さん
理学療法士。熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科長、教授。専門理学療法士骨関節・生活環境支援として、医療現場のリハビリテーションに携わる。日本理学療法士学会診療ガイドライン委員、日本義肢装具学会評議員理事、日本身障スポーツ学会理事。
大塚 裕一(おおつか・ゆういち)さん
言語聴覚士、日本音楽療法学会認定音楽療法士、介護支援専門員。熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科准教授。失語症、構音障害、認知症、嚥下障害の機能訓練の中で、音楽を用いたリハビリを継続中。一般社団法人熊本県言語聴覚士会事務局長、くまもと言語聴覚研究会代表。
宮本 恵美(みやもと・めぐみ)さん
言語聴覚士、介護支援専門員、保育士。熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科専任講師。日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士、認定言語聴覚士摂食・嚥下分野。一般社団法人熊本県言語聴覚士会副会長、くまもと言語聴覚研究会副代表。