■書名:超図解 やさしい介護のコツ
■著者:米山 淑子
■出版社:朝日新聞出版
■発行年月:2016年3月
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介護初心者が知りたい基本を、わかりやすく解説
本書は、高齢者の介護を始めるときに、まず基本を知るために読むことをおすすめしたい手引書だ。
食事、着替え、入浴など、基本となる介護のすべてを網羅し、わかりやすく解説。また、必要に応じた拾い読みにも向いている。
本書の一番の特長は、ほぼすべての介護の動作において、吹き出し形式で「声かけ例」が示してあること。
介護者と高齢者のコミュニケーションとして、心の通い合う関係を築くため、さらには介護の動作をスムーズに行うためにも、「声かけは必要不可欠」との考えがベースにあるからだ。
<介護者には「世話すること、すべきこと」に夢中になっておざなりになりがちな、お年寄りへの「声かけ」は、信頼関係を保った円滑で楽しい介護には欠かせません。介護のほぼすべてのステップに「声かけ例」を紹介し、そのまま使用できるようにしています。>
例えば「寝返りの基本」での声かけ例は、「寝返りのお手伝いをしますので、両ひざを立てていただけますか」「腕をいっぱいに伸ばしましょう」「おへそのあたりを見ましょうね」「両腕をこちらに倒しましょう」といった具合だ。
本書にしたがって、そのまま使えるのがうれしい。
二番目の特長は「わかりやすさ」だ。
介護の基本をまとめた手引書として、わかりやすさは抜群。介助動作を表すイラストは、親しみやすく、大きくて見やすい。複雑な動作でも、少ないステップ数に整理して構成してあるので把握もしやすい。
解説もわかりやすく、力学的なメカニズムのように難しくなりがちなことも無理なく理解できそうだ。
各章末のコラム「やっていませんか? 介護のNG」も、大変参考になる。介護初心者が陥りがちなミスやトラブルを取り上げて、その解決法をアドバイスしてくれている。
「無言は絶対に禁物」「話す声の大小や高さ、速さに注意」「過度なスキンシップは禁物」など、初心者でなくても、気づきがあるに違いない。
介護の範囲は広く生活全般にわたるので、介護の仕事を始めたばかりの人には、わからないことばかりで不安が先に立つことだろう。そんなときにまず読んでおきたいのが、巻頭の「介護を始める前に知っておきたいポイント6」だ。
介護の基本になる考え方を押さえておけば、個々のテクニックを学ぶ前でも、自然に適切な動作がとれることもあるはずだ。
最後の第14章「介護者のケア」では、介護する側の健康にも目配りがされている。ストレスチェックや介護疲れの段階チェックに加えて、具体的な対処方法が紹介されていて心強い。
介護生活は先が見えずに長く続くことが多く、介護者は心身ともに疲れてしまいがち。良い介護のためにも、介護者の健康は忘れてはならないポイントだ。
主に介護初心者を意識してまとめられている手引書だが、ベテランの介護職が、知りたい内容だけをピックアップして確認することにも向いている。新しい気づきを得ることができそうだ。
著者プロフィール
米山 淑子(よねやま・としこ)さん
特定非営利活動法人生き生き介護の会理事長、日本老年行動科学会常任理事。昭和48年より神奈川県内の特別養護老人ホーム生活指導員として高齢者福祉に携わる。平成4年~平成12年まで都内の施設で施設長を務める。その間、全社協、東京都、都社協等で各種委員を務める。著書に『思いやりのひとこと』(一橋出版)、『認知症介護 困る場面の声かけテクニック』(日総研出版)などがある。