■書名:これからの医療と介護のカタチ〜超高齢社会を明るい未来にする10の提言〜
■編著者:佐々木 淳
■出版社:日本医療企画
■発行年月:2016年12月
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超高齢化が進む未来はどうあるべき?医療・介護の専門家が本音で対談
医療界内外で今注目を集める在宅診療医が、24人の専門家と熱い議論を展開。在宅医療をキーワードに、超高齢化が進む日本の未来を探る一冊だ。
専門家の顔触れは、医療制度の研究者に始まり、医師・歯科医師・看護師・薬剤師に加えて、認知症をわずらう当事者、社会学者、コミュニティデザインやシニアビジネスの専門家など、非常に幅広い。
さまざまな分野からオピニオンリーダーを集め、私たちがめざすべき在宅医療やケアについて語り合う。
それぞれの議論は10の提言にまとめられ、「何ができるか」ではなく「何をすべきか」が掲載されている。
いずれの提言も、具体的な行動に結びつくものなので、その言葉は力強くポジティブだ。
各分野の専門家から引き出された言葉には、はっとさせられるものも多い。どのような立場の人が読んでも、新たな気づきがあることだろう。
その一つに、「医療は幸せの手段であるべき」と考える、南日本ヘルスリサーチラボ代表でもある医師の森田洋之氏の言葉がある。
<病気を治すことは一つの目的かもしれないけど、みんなが願っているのは、最期まで幸せに生きていくこと。そこにどう向かっていくかを、僕ら医療者も考えなければならないと思う。
その目的に合致するのであれば入院も必要、治療も必要だけれど、その入院や治療が幸せな人生に貢献しないのであれば、そこは患者と一緒に考えなければいけない。>
本来医療とは何のためのものなのか、一度立ち止まって考えるきっかけになるかもしれない。
“治療できるから治療する”のではなく、“その人の幸せに治療が貢献できるから治療する”――あるべき姿を再確認することができるのではないだろうか。
車いすやシーティング製品の輸入販売を手がける株式会社アクセスインターナショナル代表取締役会長 山崎泰広氏の視点も、他では得られない貴重なものだ。
自身が車イスを使う同氏は、病気や障害と共に生きる時期でも、テクノロジーをうまく活用すれば「自立」でき、「健康寿命」に含めていけるはず、と話す。
「自立」と「健康寿命」について、新しい考え方を提供してくれている。
<病気や障害があっても、自立できる社会をつくること。自立とは、一人でできることではなく、自分のしたいことが、自分のしたいときに、自分でできること。健康寿命とは、五体満足で年を取ることではなく、望む生活、そして社会参加を実現できていること。>
ボリュームのある本書だが、構成がはっきりしていて、どのページからでも読み始めやすい。
専門家との対談から導き出した提言は、簡潔な説明文と共に、大きな文字で1ページにまとめられている。それぞれの対談は、最初のページに全体の概略、結びには編著者の言葉で「まとめ」とコメントがつく。
対談から提言へと、スムーズに理解が進む構成となっている。
どの対談も魅力的で考えさせられる。興味のある分野から気軽にページを開いてみることをおすすめする。
編著者プロフィール
佐々木 淳(ささき・じゅん)さん
医療法人社団悠翔会理事長。筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団哲仁会井口病院副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年医療法人社団悠翔会理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開。