2015年07月02日

訪問先でたくさんの「処方薬の残り」を発見…ヘルパーはどうすればいい？ | 「介護求人ナビ　介護転職お役立ち情報」

ある訪問薬剤師の話。

高齢の患者の自宅に訪問指導に行ったとき、足の踏み場がないほど散らかった部屋のあちこちに薬の袋、錠剤のシートが点在。まるで宝探しのように薬を拾い集めたところ、約1年分の薬、数百錠が見つかったといいます。

この患者は、具合が悪くなると、かかりつけ医を受診するものの、症状が落ち着くと自己判断で服用を中止。しかし、また具合が悪くなると受診して症状を訴えることから、徐々に薬が増加…。飲みきれなくなった薬が、あちこちに散乱していたのだそうです。

最近、こうした「薬を飲めていない高齢者」が増えています。

・薬の種類が多すぎて管理できない。
・同じ薬がいろいろな受診先で処方され、飲まないまま放置されている。
・昼近くに起きるのに、朝昼晩3回服用、という処方になっていて朝の薬が飲めない。

理由はいろいろですが、服用できないまま放置されていく薬、「残薬」は、年間475億円分にもなると言います（＊）。

この問題、一体どう解決したらいいのでしょうか。

訪問薬剤師が患者の家で服薬状況を確認

こうした高齢者の自宅を訪れ、服薬状況や副作用、薬の飲み合わせについて確認したり、服薬方法について指導したりするのが、訪問薬剤師です。調剤薬局から自宅に薬を届けに行くだけでなく、在宅の患者と話をし、身体の状態を見て、薬の影響を検討します。このような訪問薬剤師が、全国各地で徐々に増えてきています。

薬を処方するのは医師の役目。しかし、医師は薬の効き方や詳しい作用について専門的に学んでいるわけではありません。例えば、薬が体内でどのように分解されて効いていくか。薬同士の飲み合わせで、身体にどのような影響が出るか。同じ薬を長期間飲み続けると、身体にどのような影響が出るか。こうしたことを、医師は経験的に学んで身に付けています。しかし、薬の効き方や詳しい作用を大学で専門的に学んできているのは、薬剤師なのです。

薬の専門家である薬剤師が患者の自宅を訪問し、服薬状況や薬の効き方を確認することは、非常に有意義です。医師の前では、「薬はちゃんと飲んでいます」という患者が、本当にきちんと服薬できているとは限りません。しかし、薬剤師が高齢者の自宅を訪問して、自宅の様子、本人の体調、残薬の数を確認すれば、冒頭の例のように、実は薬が飲めていないと気づくこともできます。

訪問介護ヘルパーによる服薬確認も有効

もう一つ有効なのは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを利用した服薬確認です。
朝昼晩の3回の服薬時間に合わせて訪問。15分程度の滞在で服薬を促し、きちんと服薬できたかどうかを確認します。このサービスの提供によって、薬の飲み残しはなくなります。

また、自宅に訪れる人がない生活を送っている高齢者は、どうしても生活が乱れがち。しかし、寝てばかりの生活をしていた人も、朝昼晩の1日3回、定期的にヘルパーが訪問することで生活のリズムができていきます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者によれば、生活リズムができ、きちんと服薬できるようになると、見違えるように元気になる高齢者が多いと言います。夜早く寝て、朝早く起きることで、意識がはっきりしてくるからです。そして、買い物や趣味の活動に出かけるようになったり、会話や笑顔が増えたりするのです。

薬は正しく服用できなければ、治療の効果が上がりません。持病を持つ在宅の高齢者を支援する訪問ヘルパーやケアマネジャー、訪問看護師などは、どうすれば服薬がうまくいくかを考えていくのが、実はとても大切です。

そのことをよく理解して、訪問薬剤師による居宅療養管理指導や、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などのサービスと上手く連携していきたいですね。

＜文：宮下公美子＞

＊　高齢者、減らせ「残薬」　「年４７５億円分」の推計も　（朝日新聞　2015年4月8日）

この記事をシェアする

記事一覧

介護求人ナビは全国の介護・福祉・医療の求人を掲載している業界最大級の転職サイトです。
介護職・ヘルパーはもちろん、ケアマネジャーやサービス提供責任者など介護に関わる様々な職種を対象に、全国の介護施設・介護事業所の正社員、パート・アルバイトの求人を掲載中。
希望の勤務地、雇用形態、サービス・施設形態、休日、待遇、アクセス、資格、経験などこだわりの条件からあなたにぴったりのお仕事が探せます。転職支援サービスに登録すると、専門のキャリアアドバイザーから求人の紹介、履歴書の添削、面接のサポートを受けることもできます。
介護・福祉・医療業界の転職、就職、パート・アルバイト先探しに、ぜひ介護求人ナビをご活用ください。

■希望の職種から求人を探す