要支援者対象の「訪問介護」と「通所介護」はどうなっているか
2015年の介護保険制度改正で、要支援1、2対象の介護予防訪問介護と、介護予防通所介護(デイサービス)が介護保険サービスから外れることが決まりましたよね。この2つのサービスは、市町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に段階的に移行になります。
「段階的に」というのは、各市町村が地域の状況に応じて、2015年度から2017年度までの間のいつ移行させるかを決めるからです。
移行は進んでいるでしょうか? 2016年1月時点では、2015年度中(2016年3月末まで)に移行の市町村が約18%、2016年度中が約20%、2017年度中が約60%、未定も約2%ありました(*1)。
移行はまだまだこれからといった状況です。移行した市町村に関しても、しばらくは現行サービスと変わらない形で実施しているところが多く、まだあまり差は見えません。しかし今後は、各市町村のやる気と実力で、この2つのサービスの提供実態には、かなり差がついていくのではないかと言われています。
▼総合事業における通所型サービスの例
(出典:厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的考え方)
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すでに移行した市町村は、どんな形で取り組んでいるのでしょうか。
上の表は、厚生労働省が市町村に示した「総合事業の通所型サービス」の例です。
移行した多くの市町村は、とりあえず「現行の通所介護相当」という、今まで通りのデイサービスだけを実施しているところが多いようです。(表の左端)
そのほかには「通所型サービスC(短期集中予防サービス)」(表の右端)を実施しているところもあります。移行は専門職が提供するサービスからスタートさせているようです。
また、2015年度に「通所型サービスA(緩和した基準によるサービス)」や前述の「通所型サービスC」などをスタートさせた市町村の多くは、以前から市町村事業として行っていたサービスをそのまま移行させた形です。
ネガティブキャンペーンはもう辞めよう
難しいのは、「通所型サービスB(住民主体による支援)」にどう取り組んでいくかです。2016年7月初めには、住民ボランティアが自主運営する地域の高齢者のふれあい拠点に、自治体担当者が「住民主体の通所介護をやらないか」と持ちかけたところ、反発の声が上がったという報道がありました(*2)。
財源不足によるサービス縮小策で、市町村が介護を住民ボランティアに押しつけた、というニュアンスの報道です。事実はどうなのかわかりませんが、総合事業についてこうしたニュアンスで報道されてしまうのは実に残念なことです。
国の財源が潤沢にあれば、すべて介護保険サービスとして実施される方がよいのかもしれません。しかし、消費税の増税も先送りされ、利用者が増え続ける介護保険サービスの財源は今後ますます厳しくなっていきます。いやでも、国に頼らず各地域で介護を担っていかざるをえない状況なのは明らかです。介護職も住民も、そこは頭を切り換えていかなくてはなりません。
介護保険は制度が複雑化し、一般住民が理解するのはますます難しくなってきています。よく、制度改正のたびに利用者への説明を担うことになる介護事業者、中でもケアマネジャーが負担感を訴える声を耳にしました。実際、制度が変わることへの不満を直接、受け止めるケアマネジャーなどの介護職は本当に苦労が多いことと思います。
ただ、今後もこの制度を持続していくためには、介護保険に関わった専門職が主体的に動いていくことが不可欠です。なかなか理解の進まない住民に理解を促していくことも、今後は大切な役割になっていくと思います。
介護保険制度は使いにくく、不備も多い制度かもしれません。しかし、それでもこの制度をうまく活用して、介護を必要とする人たちを少しでも支えていくことはできます。否定的なことばかりを言う「ネガティブキャンペーン」をしていても、それで何もよくなることはありません。
使えるものを活用しながら、いかにしてよりよい介護環境、仕事環境を整えていくか。そう考える方が、少しは未来が明るくなるのではないでしょうか。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・介護福祉ライター)>
*1 介護予防・日常生活支援総合事業、包括的支援事業実施状況(2016年1月4日現在) (厚生労働省)
*2 公費不足分、住民に押しつけ (毎日新聞 2016年7月8日)