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2016年12月22日

介護職員の平均給与は、他職種に比べて本当に低い?調査では意外な結果が… | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

全産業平均と比べて約10万円安いといわれている介護職員の平均給与。厚生労働省は2017年4月から、経験等に応じた昇給の仕組みを取り入れている事業者に、給与が月1万円程度上がるように介護報酬を加算することを決めました(*1)。


介護職員の昇給に、国の財源があてがわれるのは是か非か

image001こうしたニュースが流れると、「なぜ介護職だけが国から昇給の財源があてがわれるのか」という声が上がります。それは、他業界からだけでなく介護業界人からも聞かれる意見です。同じ介護業界にいながら、国からの昇給の財源を求める事業者と、国の対応に違和感を覚える事業者がいるのはなぜでしょうか。

財源を求める事業者は、介護保険事業が完全な自由市場でないことを指摘しています。介護保険事業は、質の高いサービスを提供してもそうでないサービスでも、公定価格である介護報酬は同じ。他の業界のように工夫の余地がなく、努力や工夫によって利益を上乗せすることが難しい。だから、自助努力で給与を引き上げるのも困難なので、引き上げろというなら財源がほしいということです。

一方、財源をあてがわれることに違和感を覚えるという、ある事業者の意見はこうです。自助努力で給与水準を引き上げられないのは、介護業界が業界として未成熟だから。他に国から同様の支援を受けている業界はなく、これは恥ずべきこと。自助努力で昇給できるようにすべきだといいます。実際、介護保険外の事業と組み合わせることで利益を上げ、職員に還元している事業者も徐々にふえてきています。工夫や努力の余地があるのに、国に援助を求める姿勢をよしとしない事業者もいるということです。


実は介護職の賃金水準は低くない

そもそも、介護職の賃金水準は、本当に他の職種、産業と比べて低いのか。離職率の高さや低賃金などは、介護職に特有の問題なのか。もしかしたら、勤続年数が短いサービス業や非正規雇用に共通の問題なのではないか――。そんな疑問から、全国45万世帯約100万人を対象とした大規模調査、総務省『就業構造基本調査(2002年・2007年)』の結果を分析し、この疑問に対する一定の答えを導き出した研究があります(*2)。

少し古い研究ですが、この研究の結果わかったのは、介護職の賃金水準は、年齢や勤続年数、学歴などをコントロールすると、他の職種や他の産業と比較して低いとは言えないということ。介護施設の正規職員は、男女とも全産業の中間からやや上なのだそうです。また、女性の訪問介護正規職員の賃金水準も全産業の中間くらいであり、非正規職員は全産業の中で上位に位置しているのだといいます。

冒頭に書いたように、介護職の給与は全産業平均より約10万円低いといわれているのに、どういうことなのでしょうか。これは、通常、比較されている「全産業平均」と介護職の給与が、性別、年齢、学歴、勤続年数、正規職員か非正規職員か、事業所規模はどうかなど、様々な要素を無視して比較されているということのようです。


歴史の浅い介護業界はまだ発展途上

image003平成27年度「介護労働実態調査」(*3)によれば、介護職は、全体の平均年齢が40代半ば。全産業平均と大きくは変わりませんが、高年齢層の勤続年数が必ずしも長いわけではないという特徴があります。子どもの手が離れてから、非正規で働く年配の女性が多い業界だからです。教育水準はどうでしょうか。介護職は大卒者より、高卒や専門学校卒の方が圧倒的に多数派です。

勤続年数は5年未満が全体の1/3弱、5~10年未満が1/3、10年以上が1/3強。平均勤続年数は6年程度ともいわれています。全産業平均が男女合わせて約12年、女性だけを見ても約10年であるのと比べると、短いと言えます。また、事業所規模も従業員20人未満が半数を超えており、規模の小さい法人が多いのも介護業界の特徴です。つまり、どの要素を見ても、一般的にみれば、賃金水準が低く抑えられてしまう条件を満たしているということ。女性で、勤続年数が短く、最終学歴が高校で、規模の小さい事業所で働いている他業界の人たちと比べると、決して賃金水準は低くないのです。

介護業界は、介護保険が始まってようやく業界としての本格的な歩みが始まったといえます。看護師が、専門学校教育が中心であった時代から4年制の大学教育にシフトしつつあるように、歴史を積み重ねていくと、介護職も徐々に教育水準が上がっていくかもしれません。勤続年数も、これからさらに伸びていくことでしょう。それに伴い、社会的地位も、発言力も、賃金も上がっていくことも考えられます。つまり、介護業界はまだまだ発展途上なのです。

そう考えると、完全な自由市場ではないこと、慢性的な人手不足であることを理由に、国に守ってもらうことを期待するのはどうなのでしょうか。それより、この業界で働く方たちが知恵を出し合い、力を合わせて、介護業界を人が集まる魅力的な業界、高い雇用条件を勝ち取れる業界に育てていくほうが、よほどこの業界の未来を明るくできるように思います。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*1 介護報酬、昇給制度導入の事業者に加算 厚労省 (日本経済新聞 2016年11月16日)
*2 介護労働者の賃金決定要因と離職意向 ―他産業・他職種からみた介護労働者の特徴― (季刊・社会保障研究 Vol. 45 No. 3 2009年冬)
*3 平成27年度 介護労働実態調査 [介護労働者の就業実態と就業意識調査]

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