東京・豊島区では、2018年度からヘルパーの指名制も?
東京都の小池百合子知事が実施に意欲を見せている混合介護(詳しくは
こちら)。早ければ、2018年度にも東京都豊島区で導入されることになるかもしれません(*)。
この混合介護では、訪問介護のヘルパーの「指名制」の導入も検討されています。
東京都の「指名制」は、施術や専門的な助言を受けるために、看護師やあん摩マッサージ師の有資格者を指名するなど、一定の専門性を持つヘルパーを指名することを想定しているようです。
どんな専門性に対して、指名料を支払う仕組みにするのかは、これから検討されるとのこと。
看護師等だけでなく、もう少し対象を幅広くした「指名制」になることも考えられます。
みなさんはいかがですか。専門性を評価され、指名を受けたらその分、給与が高くなる仕組みが導入されるとしたら、歓迎するでしょうか。
現在、介護の専門性への評価を給与の面から見てみると、残念ながら高い評価がされているとは言えません。
介護職には、無資格者、初任者研修(旧・ホームヘルパー2級研修)修了者、介護福祉士と、取得した資格から見ると主に3タイプの介護職がいますよね。
少し古いデータですが、介護福祉士有資格者の資格手当を見てみると、財団法人社会福祉振興・試験センターが2008年に実施した調査では、「手当なし」が4割強でした。
次に多かったのは、5000円~1万円未満で13%。そして、1万円以上1万5000円未満が10.8%。手当の平均額は約1万円でした。
頑張って勉強して資格を取っても、「手当なし」では何だかがっかりですよね。
もっとも、この調査が行われた翌年、2009年度には、事業所で雇用している介護福祉士の人数によって、介護報酬に加算が付く改定が行われています。
この改定により、介護福祉士への求人がふえました。有資格者を採用するために、資格手当をつける事業所も少しはふえたかもしれません。
評価すべきヘルパーの専門性とは何か
対人援助職は資格を取ってからがスタート、ということがよく言われます。
資格を取ったからと言って、それですぐに質の高い支援ができるわけではないからです。
一人ひとり、生活歴も、性格も、持っている障害も異なる利用者にとって最善の支援を考え、提供していくには、資格取得で得た知識をもとに、経験を積んでいくことが必要です。
知識と経験が掛け合わされることによって、少しずつ質の高い支援が提供できるようになっていくのです。
そうして培った対人援助の技術を評価する仕組みが、ほしいですよね。
東京都の指名制も、そこが評価されるようになれば、介護職の質の向上につながりそうです。
たとえば、入浴拒否が強い利用者を、無理強いせずに入浴する気にできる。いつも、暗い顔で文句ばかり言っている利用者を笑顔にする。訪問看護と上手に連携して、嚥下障害がある利用者の食事介助ができる。糖尿病食の調理のレパートリーが豊富。
そんな支援ができるヘルパーの専門性を、保険者が正しく評価する。その専門性の意義を利用者に伝える。そして、利用者が専門性の高い介護を求めて指名する仕組みを作っていくのです。
マッサージの施術ができるヘルパーもいいかもしれませんが、そうした専門性の高い介護ができるヘルパーを指名できる仕組みをつくる方が、利用者にとって有益なように思います。
東京都は、指名料がヘルパーの給与に反映されたかどうかも確認する方向です。
そうした専門性が評価され、それが給与にも反映されれば、利用者のQOLを引き上げる介護を提供できるヘルパーがふえていくのではないかと思います。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*混合介護 都と豊島区が指名料検討 1時間500円程度(毎日新聞 2017年2月10日)