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グループのメンバーに宛てて、一人ひとりが書いたメッセージを読み上げ「DRAW UP!研修」は終了した
介護職への研修の中でも、これまで手薄になりがちだったユニットリーダークラスへの研修。
社会福祉法人小田原福祉会、社会福祉法人合掌苑、社会福祉法人福祉楽団という3つの社会福祉法人が、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMS)とともに、「DRAW UP!研修」という3法人が合同で行う研修を開発しました。
その内容や意義を3回に分けて紹介する記事の最終回は、この研修を開発したRMSの藤江嘉彦さんのお話と、研修を受けた3法人のユニットリーダーたちの感想をお伝えします。
*「DRAW UP!研修」…1回目、2回目、3回目(最終回)はこちら
介護職は新人でも経験が深い
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「DRAW UP!研修」を開発したリクルートマネジメントソリューションズの藤江嘉彦さん
様々な企業の研修の開発やトレーナーを務めている藤江さん。「DRAW UP!研修」の開発に当たっては、3法人の職員に時間をかけてヒアリングを行いました。
そのヒアリングをもとに研修の具体的内容を考え、研修当日のトレーナーも務めた藤江さんに、研修で感じた思いなどを伺ってみました。
――この研修のトレーナーを務める上では、どんなことに気を配りましたか?
藤江 私は介護の専門家ではありません。ですから、こちらから何か教えられることはないという前提に立って、トレーナーを務めました。
ただ一方で、研修の中では、参加者から出される意見を聞いて整理し、「これはみんなに共通することですよね」と伝え返していくことは必要です。
そのための準備には時間をかけました。どんなことに困っているのか。各法人が何を目指しているのか。そうしたことを事前にじっくりとヒアリングし、理解した上で研修に臨んでいます。
その準備がないと、意見が出たときに的確なコメントができません。理想論や空疎な理屈を言った瞬間に、この人わかっていないな、と思われてしまいますから。
――では、介護職がトレーナーを務める、というやり方もあるでしょうか?
介護の現場をよくわかっている介護職の方が運営するのがいいというのもありますし、ゆくゆくはそうなっていけばいいとは思います。
ただ、各論を知っていると、アドバイスが具体的になりすぎてしまう場合があります。アドバイスが上から下りてくるのを待つのではなく、参加者自身が自分で気づくことが大切です。
介護の現場をよく知っている介護職の方では、状況が見えすぎてつい踏み込んでしまいすぎるかもしれないですね。
――介護職に一般ビジネスマンとは違う点を何か感じますか?
私は介護職の新人向け研修も担当していますが、新人の方と接すると、求められる経験が深く、成長のスピードが早いことを感じます。
たとえば、「看取り」という、多くの人が50代、60代になって初めて向き合う重い経験に、入職して日が浅い新人も向き合わなくてはならない場合があります。
また、夜勤というとても責任をともなう仕事を、早くから任される職場もあります。サポートがあってのことではありますが、これは一般企業の新人と比べても、求められる成長のスピードが早いと感じます。
――トレーナーを務めていて一般企業との違いを感じる部分はありましたか?
介護職の研修では、参加者の中にある、「目の前の人を何とかしてあげたい」という思いに毎回、行き当たるように思います。
それぞれの介護の仕事がそこから始まっている。その部分に参加者が思い至ったときに、「何をすべきか、何をしたいか」というアイデアが参加者自身から出てくるんです。
介護の仕事は、もちろん仕事なのですが、突き詰めていくと、一人ひとりの思いから発している。上からの業務命令で「はい、わかりました」というだけでは続けられない仕事なのではないかと感じています。
そして、この研修を受けた人たちは、一人残らず、全員が、そういう仕事を自らの意思で「引き受けた」人たちです。そこは、深く信頼に値することだと思っています。
――ありがとうございました。
他の法人の良さも感じたが、やはり自法人でがんばりたい
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左から、合掌苑の矢島俊明さん、小田原福祉会の栗原千恵さん、福祉楽団の荒川昂大さん
STEP 2の研修終了後、3法人の職員の方に以下の3つの質問をしてみました。みなさん得るものが多い研修だったようです。
(1)この研修で一番得たものは
(2)3法人合同の研修だからこその良さとは
(3)「相互現場訪問」で印象に残っていることは
合掌苑 矢島俊明さん
――この研修で一番得たものは
日々の業務で悩んでいることを共有したとき、みんな同じようなことで悩んでいるのだなと感じました。
また、それを解決することは、リーダー一人ではできないという言葉があり、それが印象に残っています。
――3法人合同の研修だからこその良さとは
3法人の組織、風土の違いをとても感じました。それだけに、自法人内では思いつかない、全く違う視点からの意見や考え方を聞くことができました。
いい発見ができたり、いいアイデアをもらえたりしたと思います。
――「相互現場訪問」で印象に残っていることは
相互訪問で何を感じ、何に気づいたかを共有したとき、これまで見えていなかった自法人のいいところを感じることができました。
自分たちの法人は遅れているな、他の法人は先を見ているなと感じたこともあったので、そういうところは、今後、取り入れたいと思っています。
小田原福祉会 栗原千恵さん
――この研修で一番得たものは
ケアをやっていく上で不満を感じることがあっても、それは誰のせいでもなく、自分の課題なのだと気づきました。
感じた不満を解決するのは自分自身なのに、今までは何もしていなかったなと。それに気づけたのは大きかったですね。
――3法人合同の研修だからこその良さとは
知らない人だからこそ話せることもありましたね。それに、相手は私や法人のことを知らないわけですから、自法人内であれば言わなくても伝わることも、一から状況をすべて説明しないと伝わりません。
これをなんと説明すればいいのだろうと考え、言葉にすることで、自分が意識していなかったことに気づけたりもしました。
――「相互現場訪問」で印象に残っていることは
隣の芝生は青く見えるもので、きれいで豪華な新しい施設と比べて、うちの古い施設を恥ずかしいと思うこともありました。
しかし、自分では当たり前だと思っていたことをいいと言ってもらえたりして、やはり、今いる法人を愛しているなと思いました。みんなそうだと思います。
他の法人ではなく、この法人でがんばりたいと改めて思いました。
福祉楽団 荒川昂大さん
――この研修で一番得たものは
これまでは、自分で勝手に「これ以上はやらない」と業務を区切っていた部分がありました。
仕事の幅は、上司から依頼されることで広がっていくものと思っていましたが、もっと自分から仕事をとっていっていいのだ、自分で幅を広げていっていいのだという視点に立てたのが一番大きかったですね。
――3法人合同の研修だからこその良さとは
同じ法人同士だと、遠慮して本音を言えない部分があります。しかしこの研修では、相手のことがわからない状態で始まるので、素直に相手の意見を聞き入れたり、率直な意見を相手に伝えたりすることができました。
また、肯定的で前向きになれる言葉をたくさんかけてもらえて、自分に自信がつきました。
――「相互現場訪問」で印象に残っていることは
他の法人の挨拶、接遇を体験することで、こうした根本的な部分の大切さを強く感じました。
うちの法人は、新しいことには積極的に取り組んでいますが、新しいことを取り入れるばかりではなく、根本的な部分を強化していかなくてはと感じました。
以上、3法人が合同で行った「DRAW UP!研修」についてお伝えしました。合同で、しかも互いの事業所見学も含めて行うこの研修は、単独で行う研修の何倍もの刺激と学びが得られたことと思います。介護人材の不足がより一層厳しくなっていく今後は、一法人だけでなく、複数の法人が採用や教育研修で協力し合うことが必要になってくるのかも知れません。
*「DRAW UP!研修」参加3法人
社会福祉法人小田原福祉会
社会福祉法人合掌苑
社会福祉法人福祉楽団
*取材協力
社会福祉法人小田原福祉会 法人事務局 人財育成センター センター長 井口健一郎さん
社会福祉法人合掌苑 マネージャー 森田健一さん
社会福祉法人福祉楽団 サポートセンター 人事部長 上野興治さん
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ ビジネス・テクノロジーデザイン部事業開発グループ 藤江嘉彦さん
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*「DRAW UP!研修」…
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