緊急事態宣言は解除されたものの、いまだに新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、医療・介護の分野でも対応に追われています。
新型コロナウイルスの感染拡大は、
介護支援専門員(ケアマネジャー)の更新研修にも影響を与えています。
目次
介護支援専門員(ケアマネジャー)更新制度とは?
更新研修は延期・もしくは年度内の開催中止に
ケアマネの資格は失効する?
都道府県ごとの対応は?
ケアマネ研修にウェビナーを
介護支援専門員(ケアマネジャー)更新制度とは?
介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格(以下、「ケアマネ資格」)は更新制になっており、
資格の有効期限は5年と設定されています。
ケアマネ資格の有効期間を更新するためには、各都道府県で開催される『更新研修』を受講しなければいけません。
更新研修は、認知症に対する事例検討や医療を含めた他職種との連携についての講義など、56時間の「研修I」と32時間の「専門研修II」を合わせて合計88時間で構成されています。
(実務経験年数などにより必要な研修は異なるので、資格登録した自治体で確認するようにしましょう。)
更新研修を受講することでケアマネ資格が更新されます。
更新ができなければ、ケアマネ資格は失効となり、ケアマネジャーとしての業務ができなくなります。
そのケアマネ更新研修が、新型コロナウイルスの感染症の影響により、開催されていない状況にあります。
更新研修は延期・もしくは年度内の開催中止に
現在、新型コロナウイルスの影響に伴い、各都道府県で行うケアマネ更新研修は
延期もしくは年度内の開催中止
とアナウンスされています。
多くのケアマネジャーが集まるケアマネ研修。
多くの受講者は感染リスクの高い公共交通機関を利用して来場することになります。研修内容も少人数でのグループディスカッションなどが多く、感染リスクは非常に大きいことがわかります。
さらに利用者の居宅を訪問するケアマネジャーが感染源になると、基礎疾患のあるリスクの高い利用者やその家族、さらにその利用者が利用するサービス事業所へと感染が拡大していくリスクがあります。
ケアマネ更新研修の場が、大規模なクラスターとなる危険性があるのです。
更新研修だけでなく、主任ケアマネ研修や主任ケアマネ更新研修、さらにケアマネ試験を合格した方を対象にした実務研修など、ケアマネジャーに関するすべての法定研修が開催されておりません。
ケアマネ試験を合格し、実務研修終了後にケアマネとして異動・転職する予定だった方も、研修の延期によりケアマネとして勤務する目途が立たない状況です。
更新研修受講予定の方には、ケアマネ資格の有効期限が迫っている人もいます。
更新研修が受講できなければケアマネの資格は失効してしまうのでは?と心配されている方もいるかもしれません。
ケアマネの資格は失効する?
新型コロナの影響で更新研修が延期になることで、ケアマネ資格は失効してしまうのでしょうか?
結論から言えば
ケアマネ資格の失効はしません。
2020年2月25日に、厚生労働省より、研修の取り扱いについて以下のような通達がありました。
今般のコロナウイルス感染症への対応のため、介護支援専門員等の法定研修に定めのある介護施設での実習等に支障が生ずる場合も考えられます。
このような場合には、法定研修の主催者である都道府県の判断により、以下の対応を取ることが出来ることとします。
○法定研修を延期・中止する
○その結果、本来の資格更新時期を過ぎてしまう主任介護支援専門員や、介護支援 専門員については、都道府県が認める期間内は資格を喪失しない取扱いとする
(厚生労働省老健局振興課「新型コロナウイルス感染症に係る介護支援専門員等法定研修の臨時的な取扱いについて」(2020年2月25日)より)
都道府県の判断で研修を延期もしくは中止にした場合、
更新時期を過ぎても資格喪失しない取り扱いとなることが通知されています。
これにより、各都道府県で行われる予定だった更新研修はすべて延期か年度内の開催中止という判断に至っています。
ケアマネ更新研修を延期している地域については、再開予定の時期については各都道府県で異なりますが、開催時期未定もしくは8月以降の開催予定としている地域が多くなっています。
新型コロナウイルスの感染拡大前に受講がスタートし、すでに開催期間中の研修については、一旦中断となり、再開時期は改めて参加者にアナウンスされる予定になっています。
いずれにしても、更新研修が受講できず、ケアマネ資格の有効期間を過ぎたとしても失効になることはないので、まずはご安心ください。
都道府県ごとの対応は?
具体的にどのような対応を行っているのか、3つの自治体の対応を紹介します。
●東京都の場合
東京都は2020(令和2)年4月22日から7月13日まで開催する予定だった更新研修を
全日程で延期しました。
入金済みの受講料は研修開催機関が預かり、テキスト発送なども延期する予定となっています。
延期後の実施時期を含め、今後の対応については未定となっています。
参照:
東京都福祉保健財団ホームページ
●神奈川県の場合
神奈川県は、2020(令和2)年2月28日以降に実施予定だった介護支援専門員の研修(更新研修・専門研修・主任ケアマネ研修・主任ケアマネ更新研修など)の開催を、
2020(令和2)年8月31日まで延期することを決定しています。
研修の再開については決定次第、改めてアナウンスすることになっています。
参照:
神奈川県ホームページ
●福岡県の場合
福岡県は開催延期ではなく、2020年度開催予定だった
更新研修(前期)や実務未経験者向け更新研修を中止すると発表しています。
受講予定だった方には、2021年4月頃に県から更新研修の案内を送付する予定としています。
参照:
福岡県介護支援専門員協会ホームページ
以上のように、自治体によって対応の方法に若干の違いはあるものの、更新研修を含めたケアマネの法定研修はいずれの都道府県でも
延期もしくは年度内の開催中止という対応を取っています。
延期の場合に関しても、研修再開の予定や会場などについては未定となっています。
緊急事態宣言は解除されたものの、まだまだ予断が許さない状況です。新規感染者の報告も続いています。新型コロナウイルスの感染第二波への警戒も含め、感染が収束したとは言えません。
いつになったらケアマネ更新研修が再開できるのかは、見通しが立たないというのが現状です。
ケアマネ研修にウェビナーを
日本介護支援専門員協会は、ケアマネ研修について「ウェビナー」を活用するよう呼び掛けています。
ウェビナーとは、ウェブとセミナーを掛け合わせた造語で、
インターネットを通して開催されるセミナーを意味しています。
すでに沖縄県でモデル事業が行われています。沖縄本島・宮古島・石垣島をつないで、ウェビナーを行った事例が報告されています。
ウェビナーの活用の効果は感染症対策だけにとどまりません。
離島など、ケアマネ更新研修への参加に交通費や宿泊費の負担が必要だったケアマネにとっても朗報です。
更新研修も遠隔地にいながら参加できれば、
ケアマネ資格更新の経済的・時間的な負担も大幅に少なくなります。
もちろん、大規模な会場の確保が必要なくなること、講師やファシリテーターの交通費の削減も含め、参加者にとっては大きな負担だった受講費用が安くなることも期待できるでしょう。
リアルタイム、双方向でのウェビナーも可能です。
参加者同士による少人数でのグループワークもインターネットを通じて行うことができます。
また、現在は都道府県単位で研修を開催していますが、ケアマネの人数が少ない都道府県では研修コースの選択肢が少なく、勤務予定の調整が難しいという課題もありました。
ウェビナーであれば
どこにいても受講が可能となるので、都道府県単位の開催である必要性もなく、参加したい日程のウェビナー更新研修を選択できるようになれば、さらに利便性は高まりそうです。
アフターコロナ、withコロナの新時代を見据え、行政は新たな更新研修の姿を模索している状況にあります。感染予防の観点はもちろん重要ですが、新しい時代への転換点というポジティブな視点も必要になるでしょう。
新しい時代のケアマネの在り方とともに、ケアマネ研修の在り方も変化が求められます。
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