認知症行方不明者が7年連続増加
認知症あるいは認知症の疑いがあり、出かけたまま戻らず行方不明となった人は、2019年には
年間17,479人に上ることがわかりました。2018年と比べると552人増えており、警察庁が統計を始めた2012年以来、
7年連続の増加です(*)。
■認知症(疑い含む)行方不明者の推移
※グラフは警察庁発表のデータを元に筆者が作成
認知症(疑いを含む、以下同)を原因とする行方不明者は、全年齢の行方不明者全体の20.1%を占めており、原因がわかっている行方不明者の中で最も多くなっています。
この構成比も、2015年には全体の14.9%だったものが、18.2%、18.7%、19.2%、そして20.1%と年々増えているのです。
多くは、当日中に見つかり、1週間以内に99.4%の人が発見されています。しかし、発見までに2年以上かかった人も4人あり、また、2018年以前の行方不明者も含めて、2019年に死亡が確認された人も460人いるとのこと。
介護関係者は、よく「認知症のある人がいなくなったら時間が勝負」と言いますが、数値の上でもこれが示されているのです。
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そこで大切なのは、認知症のある人がふらりと出かけていったときに、
すぐに見つけられる仕組みづくりです。
地方都市のある地域では、元ケアマネジャーが地区の住民対象の「認知症サポーター養成講座」を開催。毎回違う内容にし、繰り返しの受講を促しています。住民に、認知症への理解を深めてもらうためです。
次第に賛同者が増え、養成講座を開催する側に回る仲間も増えていきました。
この元ケアマネジャーは、同時に、地域住民が毎日、集うことができる交流の場を開設。地域住民の居場所づくりと、つながりの強化にも取り組んできました。認知症を持つ人にも近所の住民が声をかけ、交流の場に伴って参加するようにしているそうです。
こうした取組を続けることで、認知症のある人がいつもと違う場所に行ったり、違う行動を取ったりすると、気づいた住民が元ケアマネジャーやその仲間に知らせてくるようになったと言います。
徘徊模擬訓練など行わずとも、この地区では、住民が当たり前のように、
認知症のある人に気づいたら声をかけ、連絡し、行方不明にならない状況がつくられているのです。
ちなみに、新型コロナウイルス感染拡大により、現在、交流の場は休止中とのこと。
しかし、認知症を持つ人をはじめ、多くの高齢住民が閉じこもり、つながりが薄れていくことを懸念した元ケアマネジャーは、手作りの「新聞」を制作。
一軒一軒訪ねて歩き、ポスティングしたり、たまたま出会ったときに住民と話をしたりしているそうです。
築かれたつながりが失われないよう努力する姿勢を、ぜひ見習いたいですね。
大都市でいち早く行方不明者を見つけるには?
一方、東京などの大都市では、なかなかこうした取組で、認知症のある人の行方不明を防止するのは難しいかもしれません。
多くの自治体では、地域包括支援センターや社会福祉協議会、交通機関、コンビニ、銀行などが協力機関として、行方不明になった認知症のある人を発見するための
「SOSネットワーク」などを設けています(協力機関は地域によって異なります)。
行方不明になった認知症のある人についての情報が、ネットワーク参加者に発信され、参加者はその情報を元に行方不明者の発見に協力します。実際、このネットワークで発見されるケースもあるようです。
これとは異なる、民間の発見ネットワークを運営する、ある団体の代表は、「SOSネットワークの参加者は、多くの場合、該当する人を見かけたら声をかける、というレベルの関わり。地域で能動的に探してくれる人は多くない」と言います。
前述のように、「時間が勝負」である認知症行方不明者の捜索は、いなくなったことに気づいたときから、できるだけ短時間で積極的に探すことが、地域内で早く発見することにつながります。
そのため、この民間の発見ネットワークでは、できるだけ能動的に動ける人に参加してもらい、捜索の対象者に似ている人を見かけたとき、見かけた場所や時間、対象者である可能性が何%かをネットワーク参加者で情報共有します。
これにより、足取りを追って探したり、目撃情報のあった地域の人が気にかけたりすることができ、発見につながりやすいのだそうです。
こうした民間のネットワークとSOSネットワークをダブルで登録し、より多くの目で探してもらうことがいいのかもしれません。
認知症のある人は、これからますます増えていきます。
行方不明になっても、できるだけ短時間で見つけて安全に家に帰ってもらえる仕組みを、さらに考えていきたいものです。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*認知症で行方不明1万7479人 19年、届け出最多 年内の未確認245人(毎日新聞2020年7月2日)