介護保険が第8期を迎えた。新たな介護報酬体系に変わり、3月16日には留意事項が発出され、その後もQ&Aや通知で、より具体的な解釈や運用方法が続々と示されている。居宅介護支援では、新たに利用者への説明が義務化された同一事業所の提供割合などについて、「居宅介護支援の提供開始時に」「3月~8月か9月~2月のうち直近の割合を」「口頭と文書で説明し、署名を得る」といった詳細が明らかになっている。
利用割合などの説明義務化
利用者や家族に対し、(1)前6月間に作成したケアプランの訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合(2)それら4サービスについて、前6月間に作成したケアプランで同一事業者が提供した割合(それぞれ上位3位まで)――の2点の説明が義務付けられる。従わない場合は、運営基準違反となり、指導や運営基準減算の対象となる。居宅介護支援の提供開始時に「3月1日~8月末日」か「9月1日~2月末日」の実績のうち、直近の割合を説明する。特定事業所集中減算の判定期間と揃えた。(2)の同一事業所の提供割合を算出する際、同一事業所がひとりの利用者に複数回サービス提供しても、提供回数は1回としてカウントする。
説明のタイミングは居宅介護支援の提供開始時。改定前に契約を結んでいる利用者へ改めて説明することまでは求めておらず、「次回のケアプランの見直し時に説明することが望ましい」と説明した。
この4月に新規契約するケースで、同一事業所の提供割合は、集計など対応が難しければ「5月以降のモニタリングなどの際に説明することで差し支えない」としている。文書の交付と口頭での説明を行うとしており、具体的な方法として、図のように重要事項説明書などに記載し、割合を記載した別紙と併せて示すことなどが考えられると説明している。留意事項では、説明後、「理解したことについて必ず利用者から署名を得なければならない」と明記されている。
特定事業所加算
特定事業所加算では全区分共通の新要件として、「必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」が設けられた。多様な主体によるサービスとは、保険給付以外の保健医療サービス、福祉サービス、地域住民の活動などを指す。検討した結果として、保険外サービスなどを位置付けたケアプランがない場合も算定できるが、その理由を説明できるようにしておかなければならない。
今改定では、下位区分の同加算(A)(100単位/月)が設けられた。小規模事業所でも、「他事業所との連携で要件をクリアしてもらえる」と厚労省認知症施策・地域介護推進課・笹子宗一郎課長は説明する。▽24時間相談・対応▽計画的な研修▽ケアマネ試験合格者への実習協力――などの要件を他の事業所との連携で満たすことが認められる。ただし、24時間連絡可能な体制は、携帯電話等の転送による対応等も可能だが、連携先事業所の利用者に関する情報を共有するため、利用者・家族に対しての説明や同意が必要となる。
(A)は、主任ケアマネとケアマネ1人の合計2人を常勤専従の配置とともに、ケアマネを常勤換算方法で1の合計3人を配置する必要がある。常勤専従の主任ケアマネは、同一敷地内の他事業所の職務の兼務も可。
居宅介護支援費(Ⅱ)
一定のICT活用や事務職員を配置する場合、逓減制の適用が40件から45件へ緩和した居宅介護支援費(Ⅱ)を算定する。44件まで通常の単価で請求できる。
ICTとは、業務の負担軽減や効率化に繋がるものとして、▽事業所内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリケーションを備えたスマートフォン▽訪問記録を随時記載できる機能(音声入力も可)のソフトウエアを組み込んだタブレットなど――が例示されている。このほかAIも対象に含む。
ICTを活用する場合は、届出書の提出が求められる。その際、「利用者の情報共有を即時かつ同時に可能とする機能や関係者との日程調整機能を有しているもの」「ケアプラン等の情報をいつでも記録、閲覧できる機能を有しているもの」といった例を踏まえ、自治体により「個々の状況等に応じて個別具体的に判断される」としている。
事務職員は、ケアマネジャー1人(常勤換算)あたり、ひと月24時間以上の勤務が必要。勤務形態は非常勤でも可。事業所内に限らず、同一法人内の配置(法人内の総務部門に配置、併設の訪問介護事業所に配置など)でも認められる。
通院時情報連携加算
新設の通院時情報連携加算(50単位/月)は、利用者が医師の診察を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けた上で、ケアプランに記録した場合に算定できる。利用者一人につき算定できるのは1回限り。留意事項やQ&Aでは、同席に利用者の同意を得るほか、連携に当たり、同席する旨や診療に支障がないかを事前に医療機関に確認することなどを留意点として示している。
死亡時の居宅介護支援費の算定
今改定で、ケアマネジメント業務を行ったにも関わらず、利用者の死亡によりサービス利用に至らなかった場合の居宅介護支援費の算定が認められた。利用者要件は、「病院・診療所、施設から退院・退所する者等で、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した利用者」。これに加え、事業所が「モニタリング等の必要なケアマネジメントを行い、給付管理票の作成など、請求にあたって必要な書類の整備を行っていること」「居宅介護支援費を算定した旨を適切に説明できるよう、個々のケアプラン等において記録で残し、それらの書類等を管理しておくこと」が要件として求められる。
請求方法は、ケアプランで当初予定されていたサービス事業所名、サービス種類名を記載し、給付計画単位数を0単位とした給付管理票と居宅介護支援介護給付費明細書を併せて提出する。
<シルバー産業新聞 2021年4月10日号>