難聴は、利用者の意思決定の場で大きな妨げとなる。利用者の理解を阻むと同時に、対話する専門職にとっても負担の増加につながる。軟骨伝導集音器は清潔の保持に優れ、聞こえの補償として公共の場での普及が進む。大阪市内の地域包括支援センターでの活用事例を紹介する。
今年3月、大阪市内の地域包括支援センターで軟骨伝導集音器オトカルティメイト(ティ・アール・エイ、大阪市)が試験的に運用された。
軟骨伝導は、耳の軟骨を振動子の入ったイヤホンが震わせることで、耳穴の中で音の波が発生し音が聞こえる仕組み。このイヤホンは球体で音を出す穴がない。アルコールで一拭きするだけで清潔が保たれ、複数の人が使用する窓口など公共の場での普及が進む。
同センターの担当地域の高齢者の中には、聞こえに問題を抱えながらも放置しているケースが多数みられる。
難聴の高齢者は、専門職の話が聞こえなくても理解したふりをすることがある。また、重要な相談の際は、家族の同席を求める人も多い。しかし、契約に関する説明を、家族が本人に正確に伝えることは難しく、「自分は聞いていない」とクレームに繋がることもある。
「正確に話を理解してもらうことは通常でも難しいが、難聴の人に対してはさらに大きな負担になる」と担当者は語る。
この状況を受け、同センターでは、窓口や利用者宅を訪問する際に集音器を活用している。
現在もマスクを着用する場面が多い中、普段、難聴を自覚していない人からも、「とても聞きやすい。小さな声でも音が拾える」と評判は良かった。
アルコールでイヤホンを目の前で拭くことで、利用者の安心にもつながった。
「手軽に試すことができ、補聴器に抵抗がある人もスムーズに使えた。大きな声を出す機会が減り、業務が楽になった」と担当者は振り返る。
今後は、独居世帯の増加に伴い、周囲の難聴を指摘する人も減る。聞こえないことでコミュニケーションに抵抗が生まれ孤立を助長する。難聴は認知症を含めた高齢者のリスクとなり、聞こえの補償は重要な課題だ。
「利用者や事業所ともに、最初から高額な機器の導入は難しい。本製品の価格は3万円程度で比較的安価であり、窓口での使用や持ち運びも容易。業務の円滑化に加えて、利用者が難聴に気づくきっかけにもなる」と担当者は評価した。
イヤホンを着けた利用者と、卓上のマイクに話しかける担当者
<シルバー産業新聞 2024年4月10日号>
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