総務省の調査によると、働きながら介護をしている人は365万人(2022年時点)と推計し、5年前より18万人増加。年齢別では50代が多い。家族の介護のために退職せざるを得ない「介護離職」は企業にとって大きな労働力の損失。ケアマネジャー向けに研修事業などを行う「ケアマネジャーを紡ぐ会」(進絵美会長)は20年より、企業向けに介護に関する相談対応を行う資格「産業ケアマネ」をスタートした。6月現在、資格保有者は767人。同会千葉支部長の佐藤寛子さんに業務内容や求められる役割を聞いた。
産業ケアマネは普段のケアマネジメント業務と異なり、企業の従業員で現に仕事と介護の両立が負担になっている人、将来の親の介護へ不安を抱える人が対象。佐藤さんは千葉県船橋市内で居宅介護支援を運営する傍ら、現在2社と顧問契約を結び、毎月オフィスを訪問している。
対応の序盤は従業員アンケートで、家族の介護事情や、自身が介護者になることへの意向などを把握。企業の総務・人事担当等へ報告し、職場環境などを一緒に検討する。従業員個々に対しては対面またはLINE等で相談窓口を設置。当初は遠巻きに見ていた社員も、数カ月経つと「介護に詳しい人」として認知が広がり、最近では気軽にコミュニケーションがとれるようになったそうだ。
契約を結んで1年以上が経つA社では、月に1回ほど、LINEでの個別相談が来る。内容は「ケアマネが見つからない」「介護保険のことを一から教えてほしい」「母が祖母の介護で悩んでいる」など様々。じっくりと耳を傾け、特定の事業所・施設を紹介するのではなく、サービスの形態や種類を説明する。「それぞれの特長や費用を知るだけでも、現状にあった方向性が見えてきます」(佐藤さん)。
佐藤寛子さん
仕事と介護の両立には周囲の協力が欠かせない。まずは従業員一人ひとりが介護について知ることが重要だと考えた佐藤さんは、社内セミナーを実施している。テーマは介護保険の申請方法や必要な費用など、関心が集まりやすいものを抜粋。理解を得ることで、当事者が「介護をしている」と言い出しやすい環境に変化してくるそうだ。
「通常のケアマネ業務でも、『もっと早く相談に来てくれれば』と思うケースは多い。心の準備をしているだけで、その後の経過は全く異なります。社員の考え方を変えるのも産業ケアマネの役割です」と話す。
近年、ようやく企業が介護の問題に向き合い始める風潮を感じつつあると佐藤さん。介護休暇等の制度を管理する社労士は、介護で抱える悩みを傾聴して寄り添ってはくれない。今後は産業ケアマネの存在が、福利厚生になっていくと推測する。
ケアマネにとっても、これまで培ってきた対応力の真価を発揮する機会になると佐藤さんは強調。「磨き続けてきた対人スキルが対価として評価される瞬間は喜びもひとしお。社会、地域を面で支える意欲がある人に、ぜひ産業ケアマネとして活躍してほしいです」。
今年の産業ケアマネ3級試験は9月22日に実施。8月20日まで同会ウェブサイトで申込を受け付けている。
<シルバー産業新聞 2024年7月10日号>
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