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2016年03月23日

『女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ』 …著者 北原佐和子さんのインタビューつき | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

1■書名:女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ
■著者:北原佐和子
■発行:飛鳥新社
■出版年:2014年12月

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声のかけ方で、高齢者の心がやわらぐ

『女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ』より
『女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ』より

大きな声では言えないけれど、利用者さんの中には、「どう声をかけていいのか、とても難しい」という方がいらっしゃると思う。こちらのちょっとした言い方次第で、利用者さんが急に怒ってしまったり、逆に、落ち込んで精神状態が不安定になったり。あるいはどう声をかけても、入浴してくれない方も。そんな状況に頭を抱える前に、本書をぜひ読んでいただきたい。

北原さんは、女優業と同時に、デイサービスや認知症型グループホームで10年近くも勤務してきた。福祉に興味があったというものの、最初のうちは、高齢者とのコミュニケーションに戸惑ったという。しかし、あるときから、北原さんは気づいたのだ。「介護側の都合で物を言ってはいけない。利用者さんの気持ちに寄り添ってこそ、相手は心を開いてくれる」と。以来、相手の立場に立った声かけを実践している。

食べるのが遅くてイライラして、「さあ、早く食べて」というのは×印。食べる気をなくしてしまっていたら、「おいしそうですね!」と何度でも前向きに声をかけるのだと言う。トイレ以外のところで排便してしまったときは、「ああ、ダメじゃないの!」と言いがちだが、「出てすっきりしたね、よかったですね」と。

相手のことを否定しない、介護側の都合を優先しない。なかなかできることではない、と思ってしまうかもしれない。しかし、実際の介護現場で、北原さんは上記のような声かけを実践してきた。夜勤の時のような何人ものケアをひとりでするような忙しいときでも、まず、寄り添う、を意識して声かけをしていたと言う。

食事やトイレ以外にも、入浴や朝晩の声かけ、相手の話を注意深く聞く“傾聴”についても書かれている。『女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ』より
食事やトイレ以外にも、入浴や朝晩の声かけ、相手の話を注意深く聞く“傾聴”についても書かれている。『女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ』より

北原さんは言う。「自分にあてはめて考えてみてください。ゆっくり食べたいときに『早く食べなさい』と言われたくないし、トイレで失敗してしまったときには、一番ダメだと思うのは自分自身ですよね」。その気持ちを分かった上で、自尊心を傷つけない言い方を考えるのだ。

なぜ、北原さんは女優をしながら、介護の現場で働き続けるのか。それは、人間らしさを尊く思う気持ちがあるからだ。女優という仕事は、美しさを前に出しながら、魅力的に演じる仕事だ。弱みを見せたらファンがガッカリすると思うと、なかなか本音を出すことはできない。そんな立場にいるからこそ、高齢者の人間臭さをいとおしく思い、そしてそれをまるごと受け入れるのではないか、と思えてくる。

「声かけ」とは、単純に「言葉の遣い方をあやつる」のではない。「その気持ち、わかります」という心とともに、利用者に寄り添うこと。そうすれば、利用者さんの顔がパッと明るくなり、心がやわらぎ、幸せそうになる。それを見て、介護スタッフだって、モチベーションが上がり、幸せになれる。

ともすると、流れ作業になりがちな介護の仕事に、あたたかさや幸せ感を注ぐのは、この「声かけ」かもしれない。「介護されてハッピー」「介護してハッピー」な関係を築けたら、介護の仕事がもっともっと、かけがえのないものになるに違いない。




○●○ 著者ミニインタビュー ○●○

この例を参考にオリジナルの
「声かけ」の言葉も作り出してください


4この本に書いてある「声かけ」は、実際に私が介護施設で実践してきたことです。さまざまな個性を持った利用者さんに戸惑い、悩んで、ひとつひとつ、編み出してきました。先輩たちにアドバイスをいただき、ホームのミーティングで「どう声をかけたらいいか」も話し合ってきましたね。そんな「声かけ」の実例を、場面ごとにまとめて解説をさせていただいています。

でも、「言い方のマニュアル」をお伝えしたいのではありません。言葉を覚えてそのまま真似しても意味がないのです。目的は、利用者さんとの信頼関係を築くこと。それには、「あの人がこう言うのだから、しかたがないな、やってあげるか」そんなふうに利用者さんが思ってくださることが、ゴールです。一人ひとりに合わせた言い方、声のトーン、やさしさなどが、信頼関係につながりますから、言い方なども、それぞれに工夫していただければと思います。

この本を読んで同じようにしても、すべてがうまくいくわけではありません。ただ、高齢者の方の予想もしないような行動や言葉に悩んだとき、この声かけの例を知っていれば、みなさんの力になると思うのです。引き出しをたくさん持っていれば、少し安心できますよね? そういうふうに使っていただけたら、とっても嬉しく思います。

介護の現場では、精神的にも肉体的にも疲れます。けれど、疲れて利用者さんに接していると、悪循環になります。適切な声かけは、お相手のため、そして自分のモチベーションを上げるためでもあると思うのです。この仕事を好きになり続けるためにも、ぜひご自分なりの声かけをしてみてください。


著者プロフィール

北原佐和子(きたはら・さわこ)さん
女優・介護福祉士。高校在学中に「ミス・ヤングジャンプ」に選ばれ、芸能界へ。80年代のトップアイドルとして活躍した後、映画、ドラマ、舞台に活動の場を広げる。2007年にホームヘルパー2級の資格を取得し、介護の仕事を始める。現在も芸能活動を続けながら、介護福祉士として現場で働き続ける。介護関連の講演活動にも精力的。また、ボランティア活動「プレシャスライフ心の朗読会」代表として、学校等でいのちと心の朗読会を行っている。

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